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ボードゲーマーのTRPG制作1話【発想と骨組み】

こんにちは、Yukoです。今回は制作中のTRPGの概要を思いつくに至った経緯と、大きな骨組みを作った話です!


シンプルなTRPGとは?

前回の記事の最後で「シンプルな仕組みのTRPGを作りたい」と書きました。私の考えるシンプルをもう少し詳しく書くと、「1つの要素がたくさんの意味を持つ」そして「参照するデータが少なくプレイの間口が広い」というようになります。

例えば、日本で有名なクトゥルフの呼び声TRPGでは体力や敏捷さ、正気度といったステータス値に加えて、攻撃や機械操作、調査といった技能値が存在します。これはすなわちステータスや技能値の数だけデータ(パラメータ)が存在するということで、もちろんそれがゲームにリアリティを出しているのですが、やはり必要な処理が多くなってしまうことは否めません。

一度シナリオが始まってしまえば自分のロールプレイに合わせて技能を利用することもできるのでそこまでデータを気にしなくてもいいかもしれませんが、なんとなく大量のデータがTRPGを難しく見せているように感じるのも確かです。

ここで私は2つのシンプルさを考えました。

1つは「パラメータを一切使わない」こと。物語を語ることだけに集中し、戦いや判定を行わなければ、そもそも数値データを取り扱う必要がなくなります。

もう1つは「パラメータを限界まで減らすが0にはしない」こと。こうすれば判定ができるため、ゲームプレイに起伏(特に運要素による盛り上がり)を持たせることができ、ゲームとしての柔軟性を出すことができます。その一方で、判定パラメータが少数しかないということは、例えば「攻撃」と「観察」を同じ文脈で行えるということになり、少しリアリティにかける部分もあります。

パラメータを絞る

選んだのは「パラメータを1つまで削る」ことでした。具体的に言えば、体力・技能値・スキルの使用・その他もろもろを全て1つのパラメータで管理するのです。例えば体力が減れば疲れてしまって頭もうまく働かなくなる、といった感じです。私はTRPGの面白さがロールプレイの自由さと判定によるゲーム側のフィードバック(運要素)の重なり合いにあると思っているため、この選択になりました。

技能や特徴が統合されてしまいリアリティに欠ける、という不安に関しては、キャラクターの背景や職業をプレイヤーが描写することで解決するはずということで、ひとまず置いておくことにします。

また、パラメータのシンプルさに呼応する形で、使う道具はダイスのみとしました。ダイスの組み合わせとパラメータをうまくかみ合わせることが、非常に重要になっていきそうです。余談ですが、TRPGではダイスを振る時に「1d10」や「2d6」と書くことがあります。これはそれぞれ「10面ダイスを1つ振る」「6面ダイスを2つ振る」という意味で、ダイスで判定する際によく登場します。

先ほど書いたように、判定パラメータが少なければ少なくなるほど、ゲームとしての柔軟性がなくなるか、ロールプレイのこじつけ感が増してしまう危険性が増えます。そこで、一旦決まっていることを元にテーマを逆算してみようと思います。

元々決まった世界観やフレーバーがあればそこからシステムを発展させられます(寧ろこちらの作り方が主流だと思います)が、今回はそういったものがなかったのでシステムの骨子を作ってからそれに合う世界を逆算的に肉付けしていく形になりました。

テーマを逆算する

今決まっていることは「パラメータ1つで体力、技能、スキルを管理する」ということです。なかなか無謀な挑戦ですね。

体力を使うということは、ダメージを受けるということです。もちろん体力ではなく精神力であったりオリジナルの耐久値の文脈でも良いのですが、今回は考えやすいことを考慮して体力(ヒットポイント)としました。ここでなんとなく「キャラクターは戦う(かもしれない)」というフレーバーが生まれます。

技能を使うということは、何らかの(特に難しい)技術を使う場面があるということです。多くのTRPGではシナリオの全貌を把握するために探索をするシーンがありますが、今回もそれに倣って探索を行うことにします。また、戦いでも攻撃が成功したかどうかの判定を行う必要があり、これも技能に該当します。これを先ほどの体力と合わせると「体力が減ると技能が使いにくくなる」という、ある程度は自然なロジックが完成します。

さらに、これだけだと体力が減ることに対して悪い効果しかないため、リスクを取る代わりに強力な効果を使えるのはどうかと考えました。ただ体力がダメージで増減するだけの状態よりも、プレイヤーがアクティブにパラメータに働きかけることができるようになるはずです。ここで「体力を自主的に減らすことで何らかのスキルが使える」というフレーバーを追加します。また、この時点で人間ができることではないので、テーマは「人以外の何か」をメインにしようと決めます。

ここでふと、ロールプレイに加えて何でも好きなアイテムを持てたら面白いのではないか、と考えました。というのも、シナリオは自由であるべきで、その中でいかに想像力を膨らませるかが大事だと思うからです。とはいっても何でもかんでも持てるようにしてしまうと、ゲームマスターの負担がとんでもないことになります。

そこで、先ほどのフレーバーと合体させ、「体力を減らすことでアイテムを作り出せる」ということにしました。このジレンマは、ボードゲームを作る時にもよく使われる手法だと思います。詳しくは次回書きますが、このアイテム生成も判定をしないと実行できないようにしました。

ここまで来て「血」というキーワードに辿り着きます。「キャラクターは血で動いている。血がなくなれば倒れてしまうが、血を消費することでアイテムや武器を作り出すこともできる。」なんだか最近のアニメで似たようなキャラクターがいた気もしますが、偶然です。(エネルギーやオーラといったテーマも考えましたが、現実離れしすぎて想像しづらそうという点で没にしました。)

さて、血が全てと言ったらなんでしょうか。私がすぐに思いついたのは「悪魔」でした。地獄にいて頽落的な生活を送っている悪魔というテーマは、今回のシステムによく合いそうでした。パラメータが1つを謳っているので、あまり複雑な機構は組み込めないことも、堕落した地獄というテーマなら合っているように感じました。なんだか最近のアニメで悪魔が出てきた気もしますが、偶然です。

かくして、「地獄で暴れる悪魔達。彼らは血を操り血の力で動いているが、それが無くなると死んでしまう」というテーマが完成します。この時点でシナリオは「冒険」や「大暴れ」といったテーマになるような気がしています。

Hel Blud TRPGという名前もここで確定しました。Helは地獄、Bludは友達といった意味合いで、会話がはかどるTRPGらしさが出て気に入っています。後で変更する可能性はありますが、今のところはこれで進めていきます。

ただ、この時点で配慮が足りなかったのが「ゲームの目標」でした。他のゲームでいう「ダンジョンのボスを倒す」や「事件を解決する」といった明確なゴールがまだ決まっていないのです。実はこの目標は少し後になってから決まることになります。

ここまで決まったら、テーマに合わせてパラメータを整理してわかりやすくデザインしていく段階に入ります。前回少し書いたように、私の好きなTRPGはロールプレイ(自由度)と判定とフィードバック(運要素)の2つを持ったものです。この2つは相互的に影響しており、好みのバランスは人によって違います。Hel Blud TRPGに関しては、判定を作り込むことでややボードゲームに近い雰囲気にしていこうと思います。

次回は「2話【判定方法とデータ】」をお届けします。お楽しみに!

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