「国潮逆襲」-中国ブランドの逆転から見る中国若者の世界観

近年、中国では「国潮」という言葉をよく耳にします。「国潮」とは伝統文化+潮流を組み合わせてトレンド感を出すことです。主にアパレルファションを指すことが多いですが、実際中国伝統文化の異業種コラボでも多く取り入れられています。

これまでの中国といえば、大量生産型の工場大国のイメージが強かったと思いますが、近年では中国の若者は自国ブランドに対する感情がだんだん高まっています。以前のような品質悪でダサいのイメージが無くなり、近年の若者は「国潮」ファッションを着ることで、自己表現をしています。その現象はMade In China 2.0時代と呼ばれています。

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では、なぜ中国ブランドのイメージが逆転できたのでしょうか?

人間の消費価値観は生きる環境やそこで学んだ文化から生まれていると思います。外国にマーケティングをする際に、最も重要なことは何だと思いますか?

私はその国の歴史と文化だと考えます。

80年代の時からの「改革開放」から生まれた「工業の発展」の”世界の工場”と呼ばれ、その後「科学発展」から生まれたHuawei、Tencentなど優良なIT企業があります。その後、現在では「一帯一路」から生まれたのは「文化の復興」です。そうです、「国潮」の言葉はまさにその文化復興に繋がっているかと思います。

「文化復興」の中で、文化に関わる様々な商品が生まれています。商品のみならず、ドキュメンタリなどのメディア宣伝もたくさんあります。YouTubeでも見れますが、「新国货」というドキュメンタリーがMade in Chinaの百年歴史を語っています。(下記動画は中国語限定)

中国初めての「国貨運動」1904年に辿ります。アメリカで行われた初回の世界博覧会の時でした。中国ブランド初めて世界の人々の前に展示されました。その後、中国ブランドの推進するために、個人企業、あるいは民間企業の発展もここから始まりました。
2回目の「国貨運動」は鄧小平が日本に訪問した際80年代末〜90年代初の頃でした。鄧小平が日本に訪問時に新幹線移動中に、思わず自分に話かけた言葉は「やっと現代化スピードとは何かがわかった」とのことでした。
そこから「改革開放」いわゆるMade in  Chinaのストーリーもここから正式に記載されるようになりました。

Made in China 2.0時代と呼ばれている中で、「国貨」への注目度が高くなり、消費規模も右肩上がり傾向であります。それに、「国貨」の中で一番注目されているのは、洋服への注目度が圧倒的高くなってきています。このようなファッション関係の商品は「国潮」とも呼びます。

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ですが、ここでは、「国潮」の意味はただのMade in Chinaと違います。

「国貨」と「国潮」の違いとは?

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国貨とは、中国の輸出もしくは生産されている伝統中国ブランドの事を言います。

国潮とは、中国オリジナルデザインのアパレル関係のお洋服、スニーカー、ブランド周辺商品のストリートファッションのことを指す事が多いです。

「国貨」から「国潮」へ発展しているのです。

国潮は若者たちへ「文化復興」の概念を入れるための表現だと思います。若者が興味のある商品や関心のあることから様々な商品とコンテンツが生まれてます。一番わかり易いのは「故宮」IPです。故宮から生まれた商品とコンテンツです。

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「宮喜礼」のアクセサリーから故宮口紅、そこから故宮をテーマにしたドキュメンタリなど様々な形で故宮文化を若者の中で生きるようになり、その結果、商品の販売のみならず、北京故宮への訪問人数も増えています。

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それ以外にTMALL×国潮の特集や異業種のコラボ商品などがあります。様々の形で国潮の表現を若者の中で浸透してきています。それとともに中国ブランドのイメージも逆転し、多くの若者のファンを獲得するようになりました。

・中国ブランドCLOT×AJのコラボ商品、兵馬俑イメージとしたスニーカー。

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・四字熟語である「百鳥朝鳳(全ての鳥が鳳凰の方を向く)」をイメージした「花西子 Florasis 」  のアイシャドパレット。海外でも人気だそうです。

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また、異業種のコラボもウェブで話題を呼んでいます。

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今年の4月にTmallがテクノロジを用いて、ファッションデザイナーとのコラボをテーマにしたプロジェクトがありました。生中継をしながら商品販売をしてました。「天猫潮LIVE」のハッシュタグでウェブ話題を呼んでいていました。

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もちろん文化復興だから若者が買っているわけではなく、前回のブログにまとめてた若者の価値観から見ると、唯一無二を求める世界観につながっているかと思います。またもちろん品質もよく、本当の意味でのコストパフォマンスを発揮しているからです。

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中国ブランド続々と登場してきている中、海外ブランド積極的な進出及び発信が大事になってきています。中国ブランドとのコラボなどをすることで、中国市場でのブランディング構築、知名度上げていく手法の一つだと思います。

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これからの世界はどう変わっていくのでしょうか?

コロナやいろいろと不安定の中、国境の定義がこれからどう変わるのでしょうか?人の移動が今までのように簡単にできない時代になってきているのではないでしょうか?インバウンドの可能性が低くなる一方で、中国市場の大きさは変わらずにあります。5月からすでに経済をフル回している中国ではECショップの売上が上げ続けています。また、海外の企業向けにアリババをはじめ、中国プラットフォームは積極的にモノと情報を動かせるように越境ECの形をさらに使いやすくなるように努力がされています。現在、いろんな日本企業がIT化へシフトしている中、海外への発信も今が世界へ出る一番いい機会ではないかと思ってます。モノと情報が動く時代で日本人特有な世界観で世界で戦えるような日本企業が増えていくことを期待していきたいです。

株式会社せーのが出したブランドである#FR2はその可能性を示しています。私は社長の石川涼さんが語っている世界観はとても好きなのですが、「日本人に合わせた商品企画をしないものを世界で戦う」だとおっしゃってていたことがとても記憶に残っています。「ピンチをチャンスへ」よく耳にしますが、実際危機的状況の中で生まれる新しいビジネスモデルは世界を変えていきます。4G 〜5Gへの時代とともに、変化の早い時代ではこうやってどんどん戦う武器を変えていきながら、ブランドの世界観を持ち、新しい商品を世界へ発信していくことが大事です。日本ブランドのさらなる世界の舞台での活躍を期待しています。




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