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JFPジェンダー格差・労働実態調査

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2021年から開始したJFPによる、日本映画界のジェンダー格差・労働実態調査の資料をまとめています。
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#映画制作現場

日本映画業界の制作現場におけるジェンダー調査2022

2022年7月5日に外国人特派員協会で記者会見が実施され、日本映画界のジェンダー調査2022が公開されました。 JFPでは、2021年秋から2022年夏にかけて、以下の調査を実施しました。 ▼日本映画業界の制作現場におけるジェンダー調査2022 ▼映画業界のジェンダーギャップ調査2022〜映画界の職能団体編〜▼有識者からの解説:田中東子・鷲谷花▼映画現場の女性スタッフへの匿名インタビュー

(1)田中東子(東京大学大学院情報学環):JFP調査2022、有識者による解説

1992年。 大学生だった私は、映画製作の現場に飛び込んでいた同級生の男の子に、「映画業界って、なんで男ばっかりなのさ」と従来からの疑問をぶつけてみた。すると彼は、「映画っていうのは大人数を率いて作るわけ。女に集団の指揮を取れるわけないじゃん」と答えたのだった。  未来を担う若者までもがそんな認識なのかと呆れつつ、「この業界は先細りしていくな……」と直感してから、今年でちょうど30年が経つ。映画業界が先細りしているかどうかはともかく、30年前から現在に至るまで、女性の参入が

(2)鷲谷花(映画研究者):JFP調査2022、有識者による解説

少数の大手映画会社が、映画製作に必要な設備及び機材を備えた撮影所(スタジオ)を直営し、一定のフォーマットを共有する娯楽的ジャンル映画(プログラム・ピクチャー)を、厳密な予算及びスケジュールの管理下で量産し、全国の系列映画館で興行して収益を得る、いわゆる「撮影所システム」の時代、映画製作現場で働くスタッフ及びキャストの多数を占めていたのは、撮影所と雇用契約を結んだ賃金労働者だった。撮影所には総じて組織率の高い労働組合が存在し、会社と協議して就業規則を取り決め、現場での遵守状況を