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JFPジェンダー格差・労働実態調査

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2021年から開始したJFPによる、日本映画界のジェンダー格差・労働実態調査の資料をまとめています。
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記事一覧

日本演劇領域におけるジェンダー調査2023冬

2023年12月12日に、日本演劇領域のジェンダー調査2023が公開されました。

日本映画業界の制作現場におけるジェンダー調査2023年冬〜実写邦画・アニメ映画編〜

2023年12月12日に、日本映画界のジェンダー調査2023が公開されました。

「ジェンダー公正へ向けて~JFP 調査から見えてくるもの」JFP調査寄稿文:須川亜紀子

「日本映画業界の制作現場におけるジェンダー調査2023年冬〜実写邦画・アニメ映画編〜」の発表に合わせ、須川亜紀子先生から寄稿文を頂きました。 日本の映画産業は、男社会と言われ続けてきた。ジェンダー平等が叫ばれて久しい現在でも、その状況の劇的変化はない。そうした中、JFPが行っている制作現場におけるジェンダー差を数値として可視化する試みは、非常に意義深い。  「日本映画業界の制作現場におけるジェンダー調査2023」の結果をみると、女性スタッフの比率は「照明」部門では1%アッ

「ジェンダー調査結果を起点に考える―私たちの目指したい社会」JFP調査寄稿文:塚口麻里子

「日本演劇領域におけるジェンダー調査2023冬」の発表に合わせ、塚口麻里子さんから寄稿文を頂きました。 「日本のパフォーミングアーツ領域におけるジェンダー調査」の結果を踏まえ、私たちの職能をどのように再定義し、また創作環境の構造についてどのように検証し、改善することができるのか。  「制作」のジェンダーバランスに着目すると、劇場規模・経営形態を問わず全ての項目で、女性が6 割以上。一方で、「製作・企画・プロデュース」は女性が5 割未満となり、「企画」「プロデュース」といっ

「日本演劇領域におけるジェンダー調査に寄せて―文化政策の観点から―」JFP調査寄稿文:西山葉子

「日本演劇領域におけるジェンダー調査2023冬」の発表に合わせ、西山葉子さんから寄稿文を頂きました。  Japanese Film Projectによる「日本演劇領域におけるジェンダー調査 2023冬」は、これまで同団体が映画領域での調査で培ったノウハウを投入し、映画年鑑の活用に倣って、演劇年鑑掲載情報を統計化し、分析したものだ。本調査の成果の一つとして、調査対象となった各職種における女性担当者の割合から見えてくる分析結果に着目し、特に「制作を含む役職」と「プロデューサーを

「性別二元論の調査の先に見据えるもの」JFP調査寄稿文:植松侑子

「日本演劇領域におけるジェンダー調査2023冬」の発表に合わせ、植松侑子さんから寄稿文を頂きました。  「日本パフォーミングアーツ領域におけるジェンダー調査」の数字を見て、私自身が現場に入っている肌感覚としても「演出」「制作」「製作・企画プロデュース」に関してはこの数字と実際の現場はそれほどズレていないのではないかと感じた。一方「照明」「舞台監督」に関しては、実際は、この数字よりも女性比率は多いのではないか? ということが最初に感じたことであった。  今回の調査に含まれて

映画業界の労働実態調査2022-2023

 本調査は、映画制作現場における労働環境改善を目的に、一般社団法人 Japanese Film Projectが実施しました。  経産省主導で進められている「映像制作適正化の取り組み」を参照しつつ、設問は「契約・就業時間・安全管理&ハラスメント・賃金・性被害」など多岐にわたります。 今回の調査対象は、過去に一度でも映画制作現場で働いたことのある方々(俳優も含む)です。 ■ 調査機関:2022年3月26日~6月30日 ■ 有効回答者数:685名 ■ 調査方法:Webアンケー

日本映画業界の制作現場におけるジェンダー調査2022

2022年7月5日に外国人特派員協会で記者会見が実施され、日本映画界のジェンダー調査2022が公開されました。 JFPでは、2021年秋から2022年夏にかけて、以下の調査を実施しました。 ▼日本映画業界の制作現場におけるジェンダー調査2022 ▼映画業界のジェンダーギャップ調査2022〜映画界の職能団体編〜▼有識者からの解説:田中東子・鷲谷花▼映画現場の女性スタッフへの匿名インタビュー

(1)田中東子(東京大学大学院情報学環):JFP調査2022、有識者による解説

1992年。 大学生だった私は、映画製作の現場に飛び込んでいた同級生の男の子に、「映画業界って、なんで男ばっかりなのさ」と従来からの疑問をぶつけてみた。すると彼は、「映画っていうのは大人数を率いて作るわけ。女に集団の指揮を取れるわけないじゃん」と答えたのだった。  未来を担う若者までもがそんな認識なのかと呆れつつ、「この業界は先細りしていくな……」と直感してから、今年でちょうど30年が経つ。映画業界が先細りしているかどうかはともかく、30年前から現在に至るまで、女性の参入が

(2)鷲谷花(映画研究者):JFP調査2022、有識者による解説

少数の大手映画会社が、映画製作に必要な設備及び機材を備えた撮影所(スタジオ)を直営し、一定のフォーマットを共有する娯楽的ジャンル映画(プログラム・ピクチャー)を、厳密な予算及びスケジュールの管理下で量産し、全国の系列映画館で興行して収益を得る、いわゆる「撮影所システム」の時代、映画製作現場で働くスタッフ及びキャストの多数を占めていたのは、撮影所と雇用契約を結んだ賃金労働者だった。撮影所には総じて組織率の高い労働組合が存在し、会社と協議して就業規則を取り決め、現場での遵守状況を