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悩める日中の30歳代社員とリストラされる45歳以上の大陸に住む中国人

探検隊メンバー2人がそれぞれ日本の大企業に勤める日本人、中国人から将来についての不安をぶつけられるということがありました。社会経験も10数年、ある程度会社の仕事にも慣れて経験値も積んできたこの世代にとって、現状が安定することが逆説的に将来の不安を引き起こすという普遍的なテーマについて見えてくる日本人と中国人との違い焦点を当て、その背景にある社会環境について理解を深めるヒントとしていただければと思います。

悩める在日日本人エリート中堅社員の話

探検隊の中国人メンバーが有名国立大学を卒業し大手証券会社に入社した30歳代の日本人社員と話をする機会がありました。彼いわく、今やっている仕事はつまらない。その上、やりたいことを上司に相談すると、それは違う部署でやることだと否定される。転職する気はあるのだが、結婚して子どももいる中で妻や両親からは反対される、とのことです。本人としては八方塞がりだと感じているようです。探検隊メンバーはそれでも自分の人生なのだからやりたいことをやりなさいとアドバイスしたところ、彼は「帰って相談します」と返したそうです。

悩める在日中国人エリート中堅社員の話

探検隊の別の中国人メンバーが話を聞いたのも30歳代の中国人男性。転職を重ね今では外資系コンサルティングファームに所属し、5年後くらいには年収も1,200〜1,400万円程度は間違いないというキャリアが見えています。しかし、探検隊メンバーが日本企業をクライアントとする中国でのマーケティング系プロジェクトの調査についてその品質を確認する激しいやり取りをするのを横目で見て、「いいなあ」と感じたそうです。直後に、探検隊メンバーに相談したいと持ちかけたところ、探検隊メンバーは渋谷にいたため渋谷に来ることを提案しましたが、渋谷は遠いと思ったのか相談に来ることはなかったそうです。

悩める在日中国人起業家の話

探検隊の日本人メンバーはある日Facebook Messengerで在日中国人でインバウンド系のサービスを提供する小規模企業の社長から「会いたいです」とのメッセージを受け取りました。日本人メンバーは長野県を拠点としているため、彼に「長野に来てください」と返信したところ彼は承諾し、すぐに日程調整に入りました。彼の長野県訪問は実現し、八ヶ岳を見ながら彼が考えている資金調達を前提としたスケール型の新しい事業の計画について簡単なアドバイスを授けました。彼が長野県に来て最初にその来訪の目的を問われた際に言ったのは「遊びにきたんです」という一言でした。

ダウンサイドリスクを見てブロックされる日本人

1人目の日本人エリート社員は上司や妻、両親からの反対を理由にやりたいことを取り下げています。探検隊メンバー曰く、本当に本人にやる気があるならば反対意見には耳を貸しつつも、一生懸命説得したり、妥協案を探したりするのではないか。結局、自分の外側にある反対意見を理由に、リスクを取りに行く勇気がないだけではないか、とのことです。実際には現実に対する不満のはけ口として「やりたいこと」を妄想するものの、その中身が具体的ではないが故にダウンサイドリスクばかりに目がいき、それを取り下げる理由を外に求めているだけなのかもしれません。

行動しないモラトリアム中国人の出現

長野県にフラッと「遊びに」やってきて、結果として自分のやりたいことの中身についてアドバイスをもらうことができた中国人社長は、中国経験のある日本人であれば典型的な中国人のスタイルであると思う方が多いでしょう。最初に紹介した在日中国人エリート社員は同じ東京にいるにも関わらず相談に行く場所が渋谷と聞いて行動することをやめてしまいました。こういったモラトリアムな態度を中国人に見ることは珍しいケースと思いがちですが、実は日本にいる中国人、もしくは中国にいる中国人の潮流であるのかもしれません。

45歳以上の「リストラ」を始めた中国の民間大企業

しかし中国大陸は甘くありません。昨今、中国の民間企業は大手から45歳以上の社員についての大規模なリストラを始めています。早期退職制度などを用意して穏やかに進めるケースもありますが、年下の部長などを割り当てて「面子(メンツ)」を潰しに行くという露骨なやり方をとるケースも少なくないようです。リストラの理由は単純で、若手社員と比較した上での生産性の低さです。こうした流れを目の当たりにした30歳代は現状がルーティーンになり安定した状態を嫌い、異動や転職をすることで果敢にチャレンジする機会を求めていくそうです。

良い意味でも悪い意味でもモラトリアムジャパン

今までの話を総合して考えると、日本の大企業に勤める30歳代のエリート社員たちは日本人、中国人であるに関わらず中国と比較すれば将来的な安定が担保されているということが言えそうです。45歳以上でリストラされた大陸に住む中国人たちはアメリカのようにジョブホッピングはできず、アルバイトになったり、ガードマンになったり、場合によってはやることもなく毎日麻雀にふけったりすることになるそうです。

30歳代で惑うのは万国共通なのかもしれません。しかし、その後、決断し行動できるかどうかについては日本と中国とで異なる社会環境の影響が強く出ていることが分かります。どちらが良い、悪いということではありません。好みの問題ですね。


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