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ワクチン摂取に見る日本と中国の違い

探検隊メンバーの1人が新型コロナウイルスのワクチンを中国で2回、日本でも2回打ちました。中国と日本の両方で打った方は少ない中で、彼はその違いから日本のワクチン接種のプロセスは非常に非効率であり、税金の無駄使いとも言えるのではないかと問題提起をしています。日本のメディアにおける中国関連のニュースについては偏ったものが多く、ワクチンに関する過去の報道でも事実と異なる部分が放送されるということがありました。本記事では彼が経験した事実とそこから感じたものからその本質を掘り下げ、日本の課題を浮き彫りにします。

超効率的な中国のワクチン接種プロセス

まずは簡単な方から。中国ではスマートフォンにインストールされたアプリですべてが完結します。本人認証、体温も含めた本人の状況把握、摂取前の問診などについて、すべての情報がすでにアプリの中に入った状態で接種会場に行くため、後はアプリが示すQRコードを読み取らせれば、その後すぐにワクチン接種をすることができます。問題がない人のQRコードは緑色になっています。また、本人の状況把握については、摂取前の移動履歴や、他人との接触状況なども含めて位置情報と紐付けて把握がされていることも日本には無い特徴です。前処理がスマホの上で終わっているので、接種会場には摂取を行う医師以外では看護師1人しか配置されていません(当然ながら有事の場合に備えて別室に待機している医者はいます)。非常に効率的かつ正確なプロセスと言えます。

非効率なだけでなく正確性も劣る日本のワクチン接種プロセス

摂取した会場は彼が日本での拠点としている鎌倉です。恐らくどこの会場でもあまり大差はないのではと思いますし、日本では皆さんよくご存知でしょう。彼の言葉をそのまま引用します。

「まず指定された時間にならないと入れない上、そこにすでに入場整理のための人が配置されていた。紙のチケットを持って入場し資料が揃っているかの確認しつつ本人確認(もちろん有人)。更にその後、摂取する医師とは別の医師と相対して事前に紙で記述した問診票をベースに問診。その後ようやく摂取。さらに副反応チェックで待機する場所にも人が配置されていた。」

これだけではありません。彼自身のことではありませんが、当日会場に家族で訪れていた方々で、家族の中で当日分の予約が入っていないチケットを持ってきていたのですが、その方を入れるかどうかについての判断で複数のスタッフが集まり、時間をかけて判断し、結果としては例外処理的に当日の摂取を認めたそうです。効率的とは言えませんし、人間の処理にほとんど委ねているので正確性についても疑問が残ります。

日本は税金の無駄遣いをしているのではないか

中国と比較すれば一目瞭然ですが、日本は圧倒的に人数と時間をかけています。それだけの労務費を税金でまかなっており、かつ人為的なエラーの出現率のことを考えると、とても合理的なお金の使い方であるとは言えないと彼は言います。一般スタッフだけでなく、摂取だけでなく問診に医師も投入されていることを考えるとその金額は馬鹿にならないのではないでしょうか。

日本人が抱きがちな懸念点

こう言われる方もいるでしょう。中国では全てがスマホとインターネット技術を使って完結することは効率と正確性を考えれば確かに素晴らしい。しかし、スマホを使いこなすことができない特に高齢者のような群体や、個人のプライバシーについてはあまり考慮されていないのではないか、という意見です。

高齢者に寄り添っているのはどちらの国か

まず高齢者について。中国では本人の顔写真とID(身分証明証の顔写真)とがスマホアプリの中で紐付いていて、結果として顔認証で本人確認ができるのですが、家族や親戚のIDについても同一のスマホの中に情報として格納することができます。具体的に言えば、高齢者の家族を持つ息子や孫が自身のスマホで高齢者家族のIDを使って本人の状況や問診などの様々な情報を登録することができるのです。この機能を使えば事前にすべての情報を登録した状態で高齢者が会場に向かい、QRコードと顔認証で複雑なことをせずにプロセスが完結します。実際には家族の結びつきが日本よりも強い中国では若い家族が高齢者に付き添うことが大半ではありますが。

プライバシーと便利さを天秤にかけた上での割り切り

次にプライバシーの問題です。これは価値観の問題です。個人情報をある程度開示することによって便利さを手に入れ、社会全体としての効率を上げることに価値を置くという合理的な判断をするのが中国人であり、そうでないのが日本人であると言うことが事実から分かります。中国における情報セキュリティに関する法整備も世界レベルになっています。彼は、日本人はプライバシーと事あるごとに言うけれど、メッセンジャーアプリを日常的に使っていることについてはどう考えているのか、と言います。

遣隋使・遣唐使の姿勢で学ぶことも必要ではないか

日本では社会的な弱者を守ろうとすることと、最先端の技術を使うことがともすると相反したものであるという二元論的な考え方が支配しているように思います。結果として、効率性を犠牲にして人を投入することにより税金の無駄使いが起こっていることは大きな矛盾です。報道も欧米諸国については報道するものの、アジアに目を向けることはほとんどありません。そろそろ、かつての時代のように隣国としての大国から謙虚に学ぶことが必要なのではないでしょうか。

一方でビジネス的な示唆としてQRコードはもともと日本企業が開発しましたがサービスとして価値化する場を得ることができず、結果としてその後中国市場でこの事例のような形で花開いたというわけです。QRコードをサービスに利活用する動きは日本に逆輸入され はじめています。日本が開発したものの眠らせている様々な技術を中国のマーケットで実証し、日本に逆輸入するのは今後の新しくも面白いビジネスモデルになるのではないでしょうか。

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