パリ2024 パラリンピック競技大会 自転車競技日本代表選手 記者会見
7月23日(火)に、東京都品川区にある自転車総合ビルにて「パリ2024 パラリンピック競技大会 自転車競技日本代表選手 記者会見」が実施されました。
8月28日(水)から9月8日(日)の12日間で開催される「パリ2024 パラリンピック競技大会」。そんなパラアスリートの栄誉ある本大会に自転車競技の日本代表として選ばれたのは、杉浦 佳子選手、川本 翔大選手、藤田 征樹選手、木村 和平選手、そして木村選手の競技パートナーとして三浦 生誠選手の5名。
記者会見は、日本競輪選手養成所に在籍する三浦選手を除く4名の選手と、選手を率いる沼部 早紀子ヘッドコーチ、岡 泰宏理事長が出席しました。
本記事では、大会にむけての意気込みを語る選手たちの様子をお届けします。また、会見内でいただいた質問についての回答も合わせて記します。
大会に向けての抱負
沼部 早紀子ヘッドコーチ
チームとして掲げる目標は「トラック・ロード両種目でのメダル獲得」、それから「すべての選手の8位以内入賞」です。この目標は世界のパラサイクリングの競技レベルを鑑みても挑戦的で、高い目標に感じてはいるのですけれど、選ばれている選手たちの実力を100%発揮できれば決して実現できない目標ではないと思っています。
東京大会以降、選手たちが変わったな、と思ったのが世界のトップレベルで戦うことに対しての自信が生まれたことです。ここまでの世界選手権でもたくさんのメダルを獲得していることもあって、気持ちの部分でもレベルアップしているのではないかというのが見受けられます。
我々スタッフとしては、パリに向けての準備もパリに入ってからも、選手たちが持っているポテンシャルを100%発揮できる環境を作っていくところが、私たちの大きな目標になります。 実力を出し切れば、一番いい色のメダルを持って帰れると信じていますので、チーム一丸となって頑張っていきたいと思います。
杉浦 佳子(WC3)
東京2020パラリンピック競技大会が終わったあと、私のこの歳であればみんな引退するだろうと思っていらしたと思うのですけれど、その中でも、私の頑張りたいという気持ちを汲んでご指導を続けてくださった方々、そしてご支援していただいた方々、さらには、応援してくださった方々が喜んでくださるような結果を出して、買えない手土産を持って帰りたいと思います。
川本 翔大(MC2)
リオと東京で悔しい思いをしているので、このパリでは金メダルを獲って帰りたいと思います。
藤田 征樹(MC3)
本当にたくさんの方々の日ごろの支えがあって、今回が私自身5度目のパラリンピック挑戦のチャンスをいただけることになりました。それだけ長い間、たくさんの方に支えていただいて今ここに立っているというような状況だということを承知しています。
家族や会社の皆さん、パラサイクリングのスタッフの皆さんの思いをしっかり心に留めながら、パリでは、しっかり自分の実力を発揮して、ベストな状態で臨んで表彰台にチャレンジしてきたいと思っております。 ご声援いただければ幸いです。
木村 和平(MB)
私は視覚障がいですので、三浦選手とともにペアを組んで走らせていただきます。私は一人では自転車に乗ることができないので三浦選手と二人でペアを組ませていただけるということを本当にうれしく思います。
日本競輪選手養成所に候補生として在籍する三浦選手と二人でパリを目指すにあたって、養成所、またパラサイクリング連盟の皆様のご支援のおかげで出場することができました。 まずはそこにしっかりと感謝して、二人でその感謝を結果でお返しできるように頑張ってまいります。
質問に対する回答
Q1:東京からパリにむけてどのようなことをやってきたのでしょうか。また、「環境づくり」についてはどのようなことをやっていくつもりなのでしょうか。
沼部 早紀子ヘッドコーチ
トラックはトラック、ロードはロードと考えずに、中・長距離選手のトレーニングなどを参考にしながら、すべての種目をバランスよく強化できるように、伊豆にあるトラックの強化拠点と、岐阜にある高地トレーニングの拠点、冬季は沖縄など強化拠点を最大限活用して、トレーニングを積んできました。
パリに入ってからできることは限られているのですが、一番は選手のコンディションを整えることです。時差もあり、渡航時間も長いですが、それは数々の海外遠征で経験しているかと思います。ただ特別な大会ということで気持ちの部分だったり、体調の部分などはなかなかフラットに保つことは難しいかと。
チームとしては、スタッフ一丸となってできるだけ選手が気を張りすぎず、できるだけ普段通りに過ごして、本番直前に気持ちを上げていけるような雰囲気づくりをしていきたいと思っています。
Q2:今回大会の目標と、その目標を達成するためにはどのようなことがカギになると考えているか、教えてください。
杉浦 佳子
今持っている力を100%発揮出せるような体調管理が一番大事だと思っています。それから、体内のコンディションをさらに上げて、それを維持してパリに行き、そこからコンディションを落とさないようにすることが、最後に自分がやるべきことかなと思います。
今大会の目標ですが、東京では獲れなかったトラックでのメダルを目標に頑張っていきたいと思います。
川本 翔大
トラックの3kmで金メダルを獲ることを目標としています。
藤田 征樹
ロード種目をメインにやってきたのですが、今回の大会ではトラック種目にも出場することになりました。パーシュートに関しては自己ベスト更新、そのうえでの入賞を狙っていくところが現実的な目標です。
ロード種目は私が大切にしている種目ですので、こちらのほうで表彰台を狙っていくところが今回の目標になっていきます。
強豪国は選手の人数を揃えてきて、チーム戦を仕掛けてくると思います。またロードですと、天候やアクシデントといった運の部分があります。そうした中でも、自分自身を高めていった上で、勇気をもって、自分自身を信じて挑戦していきたいと思います。
ここから1カ月、しっかり負荷をかけて、ただ体調を崩すことなく頑張っていきたいと思います。
木村 和平
タンデムの我々としては、トラック競技の1kmタイムトライアルをメインターゲットとして3年間トレーニングを積んできました。しっかりと自己ベストを出して、メダルにからめるような戦いができたらな、と思っています。
Q3:東京大会ではなかった混合チームスプリントにエントリーしていますが、どのようなプランで挑むのでしょうか。
沼部 早紀子ヘッドコーチ
混合チームスプリントに関しては、全選手が専門的に実施しているわけではないですし、エントリーする否かを迷った末でのエントリーでした。このチームとしてパラリンピックでチームスプリントに出るというのは初めての試みですので、挑戦的な部分もあります。
この種目については出場可能なのがCクラスの選手なので、杉浦選手、川本選手、藤田選手の3名でいきます。各選手の得意なところを活かした形で、今は杉浦選手が1走、藤田選手、川本選手が2走、3走という形を考えています。
日本記録の更新、1秒でも早くゴールしてできるだけ高い順位でということが目標です。本来であれば、C4やC5などクラスの軽い選手を起用して実施する種目の中、私たちはC3とC2で戦っていくというところで挑戦的ではありますが、チームワークの見せどころですのでしっかりと準備していきたいと思います。
Q4:Cクラスの皆さんが自転車で工夫している部分はありますか。また、木村選手がパイロットとコンビネーション育んできたポイントはありますか。
杉浦 佳子
私は右手の握力が弱いので、左手のブレーキを前輪で操作できるようにしています。また、東京大会後に自転車のブランドが変わったのでなかなかポジションがなかなかうまく出せなくて、ミリ単位で変えながらここまで作り上げてきました。
川本 翔大
自分は東京からロードもトラックもバイクが変わっています。以前のバイクでは、「乗っている」という感覚だったのですが、今のバイクは「一つになって走れている」感覚があるので、今まで以上にバイクと息の合ったレースができているんじゃないかなと思います。
藤田 征樹
私の場合、両足義足を使って自転車を漕ぎます。そうした体でどのように体が動いているのか、細かい部分はまだ分かっていないことの方が非常に多いです。
そうした部分にひとつひとつフォーカスしていって、どのように義足で体が動いているのかに注目してトレーニングすることで、フォームも変わってきましたし、それに自転車を合わせるということにも取り組んできました。
見えにくい部分ではあると思いますが、そうした細かい部分というのは少しでも結果に結び付くように取り組んできた部分です。
木村 和平
1人で乗る自転車の場合は自分の好きなフォームで乗れたりもするんですけれども、タンデムの場合はパイロットの操作性を失ってはいけないところが難しいところです。
常に2人で走って、パイロットが操作性が悪いと感じたり、僕がどういうところに恐怖を感じたのかというのを二人で話し合いながら、ポジションだったり、走り方だったりとかを作り上げてきています。
この3年間、2人で話し合ってきたというところが、ご質問の答えになるかなと思います。
Q5:この瞬間は見逃さないでほしい!というところをぜひ教えてほしいです。
杉浦 佳子
ロードレースでは、勝つか負けるか分からないけれど積極的にアタックをかけていこうと思っています。アタックが決まったらそのシーンを見てください。
川本 翔大
他の選手よりは軽いギアで走るのが得意なので、そこを見てもらえれば嬉しいなと思います。スタートからトップスピードまですぐに上がるので、それをキープできるように走ります。そこを見てもらえればいいのかなと思います。
藤田 征樹
すごく難しい質問をいただいたなと思います。仮に逃げが決まったとしてもそこで結果が決まるわけではないですし、最後まで油断はできないため、「ここ」というところが思いつかないのです。
タイムトライアルについては、前回の東京パラリンピックからフォームがかなり改善できていると思います。エアロダイナミクスに優れたフォームになっていると思いますので、そういった風を切るフォームを見ていただけたらな、と思います。
パラアスリートですので、どうしても競技の部分がフォーカスされていて、そこは重要なことだと思うのですけれども、パラリンピックにはさまざまな障がいを持った方が、パラサイクリストとして出場します。
そんな選手たちが自転車から降りてどのように振舞っているのか、どのような努力を積み重ねてきたのか、そういった競技以外の部分もパラリンピックで垣間見える部分だと思いますので、そうしたところも皆さんに見ていただいて、何かを感じ取っていただけると、パラリンピックの価値が向上していくかと思います。
木村 和平
タンデム種目は、二人で一斉にスタートする瞬間に注目してほしいです。
あと、約1分ほどでレースが終わった後、二人とも倒れていると思うので、苦しそうにしているところを笑いながら撮っていただけたら嬉しいです。
沼部 早紀子ヘッドコーチ
選手一人ひとりに輝く瞬間というのがあるので、ひとりひとり説明していくと20分ぐらい経っちゃうのですが、コーチとしてグッとくるところは、スタートを切った後の後ろ姿です。
選手たちはトラックもロードも、スタートするまでものすごいプレッシャーと緊張を抱えた状態で、どんなに自信があっても、どんな展開になるのか分からない状態でスタートラインに立ちます。
そんな状態からスタートした後の後ろ姿というのは、ちょっと大きく見えるんですよ。スタートを切った後の選手を見送るときが私としては好きだったりするので、緊張感からの戦いに挑む覚悟を決めた瞬間に注目してもらいたいです。
もちろんメダル争いをして、ゴールして帰ってくる瞬間というのももちろん感動的ではあるのですが、私としては、皆さんの応援もすべて背負って出発していく選手の姿というのを切り取っていただけるといいかなと思います。
「最高の自分」で、最高のパフォーマンスを
会見では、和やかな雰囲気ながらも大会にかける選手たちの熱い想いが語られました。その後に行われた個別の取材でも、それぞれが積み重ねてきた努力や、大事にしてきたことなどを語る選手の姿は自信に満ち満ちていました。
「選手たちは最高の自分で走り抜ける」とは、冒頭であいさつした岡理事長の言葉。大会へ向けて、選手たちはその言葉通り、心身ともに「最高の自分」を作り上げてきました。
約1か月後に迫る大会に向けて、期待が高まります。
大会は8月29日(木)から9月1日(日)までの間にトラック種目が、9月4日(水)から9月7日(土)までの間にロード種目がそれぞれ開催されます。
選手たちは持ち前の明るさと元気で、遠くパリから日本へ勇気と元気を届けます。しかし、栄光のスタートラインに立つ選手たちは途方もないプレッシャーにさらされています。レースはいつも過酷で、勝負の世界はいつも残酷です。屈強な選手たちも、時にはくじけそうになることもあるでしょう。
しかし、選手たちは決してこれまで孤独に戦ってきたわけではありません。それは、普段から支えてくれる、応援してくれる、皆さんがいるからです。
皆さんには、そんな選手たちに日本から勇気と元気を届けてほしいのです。皆さんのエールが海を渡る「追い風」となり、倒れそうな選手たちの背中を優しく支え、そして走り出す選手たちを力強く押すことになるのです。
日本からの熱い応援を送り、大会を盛り上げていきましょう!
各選手の出場種目
杉浦佳子(WC3)
トラック: 3000m 個人パーシュート(C1-3)、500m タイムトライアル*(C1-3)、混合チームスプリント
ロード :個人ロードタイムトライアル*(C1-3)、ロードレース(C1-3)
川本翔大(MC2)
トラック: 3000m 個人パーシュート(C2)、1000m タイムトライアル*(C1-3)、混合チームスプリント
ロード :個人ロードタイムトライアル(C2)、ロードレース(C1-3)
藤田征樹(MC3)
トラック:3000m 個人パーシュート(C3)、混合チームスプリント
ロード :個人ロードタイムトライアル(C3)、ロードレース(C1-3)
木村和平・三浦生誠ペア(MB)
トラック:4000m 個人パーシュート(B)、1000m タイムトライアル(B)
ロード :ロードタイムトライアル(B)、ロードレース(B)
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