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”プライマリ・ケア2022年冬号”使える論文My Top5

 日本プライマリ・ケア連合学会の実践誌、”プライマリ・ケア”の『使える論文My Top5』は若手医師部門 病院総合医チームが紹介しているリレー連載です。

2022年冬号は、小野が担当しました。
『高齢者の心不全編』と題して以下の5つの論文を紹介しています。

1.高齢者の全身脱力

Anderson RS Jr, Hallen SAM. Generalized weakness in the geriatric emergency department patient: an approach to initial management. Clin Geriatr Med 2013;29(1):91–100. PMID:23177602

 「しんどい」「だるい」「動けなくなった」などの主訴で救急外来を受診される高齢者の方も多いのではないでしょうか?
 僕自身は、鑑別が多すぎて何から考えたらよいのか、網羅的に調べられているのか、見逃していないか、など不安でした。
 そんなときに走る方向を示してくれる、かゆいところに手が届く系の論文です。


2.呼吸数:無視されているバイタルサイン

Cretikos MA, Bellomo R, Hillman K, Chen J, Finfer S, Flabouris A. Respiratory rate: the neglected vital sign. Med J Aust 2008;188(11):657–9. PMID:18513176

 「呼吸数は大切」という話を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。
 古典的なバイタルサインの1つなのですが、SpO2の影響もあってか、血圧や脈拍などに比べてなんとなく影がうすくなってしまっていませんか?僕自身も初期研修医のとき指導医の先生にショートプレゼンし相談したときに「呼吸数は?そこが大事やん」と言われたことがあります。
 そんな呼吸の大切さについて非常にまとまっている論文です。教育不足の面があるかもしれない、と言われているのが印象的で、僕自身は毎年初期研修医向けの勉強会で呼吸ネタでレクチャーしています。(最近は鬼滅の刃のおかげで「呼吸」を意識しやすくなりました笑)


3.心房細動介在性心筋症

Qin D, Mansour MC, Ruskin JN, Heist EK. Atrial Fibrillation-Mediated Cardiomyopathy. Circ Arrhythm Electrophysiol 2019;12(12):e007809. PMID:31826649

 心不全の罹患率は高齢になればなるほど高くなることが知られています。高齢者の増加に伴い、心不全患者が大幅に増加することを、感染症患者の爆発的な広がりになぞらえて「心不全パンデミック」と呼びます。全国的にも心不全に対する総合医の役割が増してきているのではないでしょうか。
 心不全には様々な病因・病態がありますが、淡路島での大規模な心不全レジストリ研究KUNIUMI Registryでも示されるように、高齢化に伴う心不全は、心房細動や心房機能性の僧帽弁閉鎖不全症・三尖弁閉鎖不全症(AF-MR, TR)を合併する症例が非常に多いのが特徴です。
 そんな情勢下でぜひ知っておきたい心房細動介在性心筋症という概念についての論文です。


4.浮腫に対するループ利尿薬の使い方

Anisman SD, Erickson SB, Morden NE. How to prescribe loop diuretics in oedema. BMJ 2019;364:l359. PMID:30792231

 心不全患者の浮腫の管理についてほぼ必ず登場すると言っても過言ではないループ利尿薬。せっかくなら自信をもって使いこなしたいですよね。
 そんなループ利尿薬について疑問に思うことに対してのエビデンスがまとめられている論文です。例えば、「浮腫があると吸収が阻害されるため、経口利尿薬は使わない」というのは誤りで「浮腫があると吸収が遅くなる可能性があるが、全体的な吸収量と利尿効果は腸の浮腫の有無に関わらず基本的に同じ。」と解説されています。
 特にループ利尿薬の用量反応曲線の特徴についてはおさえておいてほしいと、初期研修医の先生にはよく言っています。


5.重症高齢患者との救急外来におけるケアのゴールの話し合いについて

Ouchi K, George N, Schuur JD, et al. Goals-of-Care Conversations for Older Adults With Serious Illness in the Emergency Department: Challenges and Opportunities. Ann Emerg Med 2019;74(2):276–84. PMID:30770207

 心不全をはじめ肺疾患、癌など生命予後の限られた患者さんが、重篤な状態となり救急外来を受診する機会に出会うことも多いと思います。
 アドバンス・ケア・プランニング(ACP)という言葉もだいぶ浸透してきましたが、このような際に十分な事前指示をもっていないことも多く、そんな際の話し合いに困った経験がある方も多いのではないでしょうか。
 慢性疾患の進行と、必要とされるコミュニケーションについて論文です。


 高齢者診療や特に増加している心不全について、知っておきたい論文をピックアップしました。
 会員の方は是非お手元の雑誌をご覧ください。今後もリレー形式で続いていきますのでお楽しみに!

(文責:小野雅敬 兵庫県立淡路医療センター循環器内科)

※当記事の内容は、所属する学会や組織としての意見ではなく投稿者個人の意見です。投稿者と出版社あるいは著者との間に利益相反はありません。

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