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臨床でのEBM実践方法 ~Essential Evidence Plus の活用~

旭中央病院の長谷部圭亮です。
皆様、第12回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会お疲れ様でした 。
学びの多いセッションが多く、私自身非常に勉強させていただきした。

私達JPCA若手医師部門病院総合医チームも「病院総合医第7世代の秘密教えます!〜EBM教育編〜」と題して、EBMの実践・教育方法を教育講演の中で発表させていただきました。7月21日まで視聴可能なので、まだ視聴されていない方は是非ご視聴いただけたら幸いです。
私も教育講演の中で”時間をかけない検索方法”のpartを担当させていただきました(録画中にPCが重くなりすぎて落ちてしまい...先生方ご迷惑おかけしました泣)。臨床疑問解決のために自ら情報をサーチする、所謂”Hunting tool”を紹介し、具体的にUpToDateとDynamdを取り上げました。時間の関係上教育講演では割愛しましたが、その他に私が活用しているHunting toolとしてEssential Evidence Plusがあります。私見では、Hunting toolとしてのEssential Evidence PlusはUpToDate/Dynamdと比較して内容が簡易な印象を受けますが、日々の情報アップデートのためのForaging tool(詳細は教育講演の平松先生のpartをご視聴ください)としても素敵な機能が備わっております。それがDaily POEMsです。POEMsとは"Patient-Oriented Evidence that Matters”のことで、患者志向かつ日々の臨床で非常に重要なエビデンスを100以上のジャーナルから配信し、日々メールで配信してくれます(過去のPOEMsもEssential Evidence Plusのページから閲覧可能です)。
今回は今年の6月に配信された熱々の糖尿病関連POEMsを紹介します(配信内容が実感していただけるよう原型を崩さずに意訳します)。

新たに発症した 2 型糖尿病は、新たに診断された癌と関連がある
 (PMID: 33225344)
【臨床疑問】
新たに 2 型糖尿病と診断された成人は発癌リスクが上昇するか?
【結論】
2型糖尿病はあらゆる癌/肥満関連の癌/糖尿病関連の癌のリスク増加に寄与します。 さらに、本研究では、この関連性が高インスリン血症を介していることが示唆されました。
【サマリー】
女性看護師 (NHS) と男性医療従事者 (HPFS)を対象としたアメリカの2 つの大規模コホート研究(参加者を隔年で追跡調査)のデータを使用し、これらのデータベースから、ベースライン時に癌・糖尿病を罹患していない 113,429 人の女性と 45,604 人の男性を特定し、発癌患者の医療記録を後方視的に検証しました(悪性黒色腫を除いた皮膚癌と非致死性の前立腺がんを除外)。さらに、データベースの患者(NHS の 32,826 人の女性と HPFS の 18,225 人の男性)から血液サンプルを収集し、HbA1c や C-ペプチドなどのさまざまなバイオマーカーの測定を行い、癌を肥満関連と糖尿病関連に分類しました。430 万人年の追跡期間中に、43,849 件の新たな癌症例を特定し、その 50% は肥満に関連し、61% は 2型糖尿病患者で発生しました。人口統計, ライフスタイル, 食事, BMIで調整後、2型糖尿病が全ての癌(ハザード比 [HR] = 1.21; 95% CI 1.16 - 1.26), 肥満関連の癌(HR = 1.28; 1.21 - 1.35), 糖尿病関連の癌 (HR = 1.25; 1.19 - 1.32)のリスク増加と関連していることがわかりました。さらに、発癌リスクは統計的には2型糖尿病と診断された直後から上昇し、8年間はリスクがプラトーであることがわかりました。

高齢者が前糖尿病から糖尿病に進行するリスクは低い (PMID: 33555311)
【臨床疑問】
前糖尿病の高齢者が平均 6.5 年にわたって糖尿病を発症する可能性はどれくらいですか?
【結論】
高齢の患者は、一般的に糖尿病に進行しません。平均 6.5 年間、糖尿病前症のレベルを維持するか、正常なレベルに戻ります。つまり、糖尿病と診断されずに70代半ばになると、糖尿病になりにくいということです。
【サマリー】
前糖尿病にはいくつかの定義があります。この研究では、地域住民 3412 人の参加者を評価しました。対象者には、HbA1cが 5.7% ~ 6.4% (n = 1490) または空腹時血糖値が 100 mg/dL ~ 125 mg/dL (n = 1996)、またはその両方を満たす平均年齢 75.5 歳の成人のコミュニティコホートです。結果は6.5 年以上の追跡調査で 、HbA1cに関しては、27%の患者でHbA1c減少が見られ、HbA1c レベルが上昇した患者の 9% が糖尿病に進行し、13% が正常血糖に戻りました。同様に、空腹時血糖値が上昇した患者のうち、8% が糖尿病を発症し、44% が正常血糖に戻りました。つまり、開始時に正常血糖の患者が糖尿病を発症する確率は 3%相当と言えます。

いかがだったでしょうか?
とても有益な情報を発信してくださる総合診療医の先生方のブログが多いので、それらを追うだけでも私自身はお腹いっぱいになりがちな今日この頃ですが、是非ご興味のある方はEssential Evidence Plusも活用してみてください(Essential Evidene PlusとCOIはありません)。

(文責:旭中央病院 長谷部圭亮)

※当記事の内容は、所属する学会や組織としての意見ではなく投稿者個人の意見です。
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