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仕事に人生の大半を費やすからこそ、エンゲージメントを「目的」にする

こんにちは。日本生産性本部主任経営コンサルタントの黒田です。
今回はエンゲージメントについて書いていきます。

【エンゲージメントの概念としくみ】

エンゲージメントは1990年以降欧米で話題にされるようになった新しい概念です。Engagementは「かかわり」を意味する言葉で、仕事に対する「かかわり」を強めようという状態をワーク(仕事)エンゲージメント、会社やチームに対する「かかわり」を強めようという状態をエンプロイ(従業員)エンゲージメントといいます。

また、エンゲージメントを高める原因のことを「ドライバー(促進因)」といい、例として、トップや直属上司の行動、職場や同僚との関係、報酬や福利厚生といった人事制度、仕事の自律性やフィードバック、学習や成長の機会、組織文化などが挙げられます。

【エンゲージメントの業績と離職率への影響[ ― 10-6-2の法則と10-9の法則】

ある米国のシンクタンクが行った調査では、10-6-2の法則と10-9の法則が報告されました。10-6-2の法則[粕谷2] ※1とは、「エンゲージメントが10%上がると、貢献努力行動が6%増加し、業績を2%向上させる」というものです。

同様に10-9の法則とは「エンゲージメントが10%上がると、社員の離職可能性を9%減少させる」というものでした

※1 出典 Corporate Executive Board
Driving Performance and Retention Through Employee Engagement

離職防止という企業にとって頭の痛い2大課題に効果があるとレポートされたことで、エンゲージメントが注目されるようになりました。

最近、「エンゲージメント調査」が話題ですが、一部では「今の会社に留まりたい」「会社を親しい人に勧めたい」という効果そのものを“エンゲージメント指標”としてしまっているものも多くあります。

【手段/目的としてのエンゲージメント】

これら2つの法則が広く知られることにより、エンゲージメントの魅力は高まりました。しかし、少し冷静に考えてみましょう。

これらの法則は、エンゲージメントが20%上がれば業績が4%上がり、エンゲージメントが30%上がれば業績が6%上がるという増幅する関係でなく、効果としては減衰していく関係です。
簡単にいえば、目的と手段の相関性は低いです。もし、離職防止を目的とするなら、エンゲージメントを高めることよりもマネージャーがメンバー個々に「自分のキャリア上、今の組織にいる方が利益が大きいと論理的に認識させる」ことが直接的な効果をもたらします。

エンゲージメントは、仕事や組織に対して「かかわり」を強め、活力と熱意を持って没頭している状態です。また、やるべきことが明確で、チームの一員として成果と自分の成長を実感できる状態です。

我々が1日8時間費やしている仕事の場が、そのような活力と熱意を持って没頭できる場所であることは、手段ではなく目的そのものではないでしょうか。

我々は組織の中で働きます。そこで人生の大半の時間を過ごすことになります。その場所で、活き活きと熱意をもって没頭していたい、やりがいや働きがいを感じていたい、その状態を実現することが、業績向上や離職防止と同じか、それ以上の価値をもつのではないでしょうか。

皆様の会社でもエンゲージメントを手段として捉えるのではなく、「目的」として捉えてみては如何でしょうか。

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黒田和光(くろだ・かずてる)
 
公益財団法人日本生産性本部 主任経営コンサルタントhttps://www.jpc-net.jp/consulting/consultant/profile_kuroda.html

日本生産性本部で経営計画策定および企業内教育プログラムの開発、
海外での日本企業のグローバル化に関する政府調査事業、各企業への個別支援、現地法人の支援等に従事。現在は経営コンサルタントとして、組織変革・組織開発のコンサルティング、中業企業診断士養成課程指導員、研修講師を主に担っている。
※日本生産性本部では、その他多様な階層別・テーマ別の研修・セミナー、
 オーダーメイド研修(企業内研修)、通信教育なども実施しています。
 https://www.jpc-net.jp/seminar/theme/online.html


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