見出し画像

【気候風土と食の関係性とは】

ワインの世界では「テロワール」という言葉がよく使われていますが、これは原料となる ブドウが栽培される畑の気象条件、土壌、地形など、取り巻くすべての自然環境を意味するもので、「気候風土」という言い方もできます。

そこには「人間の習慣」という文化的側面も含まれ、そこに住む人間の食生活や味覚嗜好も、その土地の風土、気候に大きく左右されるということは想像に難しくありません。

-----------------------------------------------

「寒い冬に激辛鍋で体を温める」こんなキャッチコピーを人気飲食チェーン店等で見かけることはないでしょうか?

しかし、ヨーロッパなどの寒冷地の国では、実はあまり辛いものは食さないようで、確かに日本でもそれは例外ではありません。

例えば、私の故郷である東北地方青森県では、味噌や醤油の塩分濃度が高く、漬物や、塩漬けなど、味付けの濃い郷土料理が多いですし、それらに合わせる日本酒も、お米の旨味がしっかりと感じられる燗酒向けの銘柄も多い印象です。

画像出典:https://www.marugotoaomori.jp/kurashiburi/006_akatuki.html

砂糖たっぷりでもアイスクリームはペロリと食べられてしまうように、温度が低くなるほど味覚は研ぎ澄まされないために、味付けとしては濃いものを好む傾向があります。

しかし、理由はそれだけではなく、寒く厳しい冬を過ごす東北の人にとって、塩分を摂取することは体温を維持するために欠かせないものであり、収穫した食材を塩蔵して冬の間に保存することは、いわば生きていくための1つの知恵でした。

このように人間の体には、常に体温を一定にするメカニズムが備わっています。

辛い料理には発汗作用がありますので、実は暑い時にこそ食して汗をかくことで皮膚表面の熱が放散され、過度の体温上昇を防いでくれます。

つまり東南アジアや中南米といった、むしろ暑さの厳しい国の方が、唐辛子やスパイスを多用した辛い料理が多いことも納得できるのです。

現在は、なかなか旅行や外出もままならない日々が続いています。

お取り寄せグルメなど全国各地の名物料理が自宅で気軽に楽しめる便利さも素晴らしいですが、

自宅で味わってみて「あれ?」と違った印象で感じることはありませんか?

現地に赴いたらその土地のものを食したくなる欲求はとても理にかなっていて、気温や湿度が人間の味覚嗜好に影響を及ぼすということを証明しているとも言えますし、その土地の食材を旬の時期に一番美味しい状態、料理で食する事が出来る特別なものでもあります。

テロワールを感じながら、郷土料理とその土地のワインや地酒を合わせたマリアージュを堪能できる喜びが、

また身近に戻ってきてくれることを願うばかりです

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?