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コーチ時代に気をつけていた3つの心得

自分は1995年3月に札幌で行われたワールドカップ最終戦で現役を引退しました。
引退後はすぐに所属会社スキー部とナショナルチームのコーチを2014年のソチオリンピックまで19年間やらせて頂きました。

コーチをやらせて貰っている間はワールドカップで世界中を転戦し、オリンピックに5回、世界選手権に9回参加させて頂きたくさんの経験を積む事が出来ました。
今回はコーチ時代に気を付けていたことなどお伝えしたいと思います

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1.【良いところを褒めてから、出来なかったことを指導する】
これは選手時代フィンランドに武者修行へ行かせてもらった時に経験した事なんですが、フィンランドチームと一緒にジャンプ練習をさせてもらっていた時に自分は思い切り失敗ジャンプをしました。
そしてリフトで登って行く時にコーチから何か注意されると思い下を向いていたら「まさし!今のここが良かったぞ!」と言われ、自分は「えっ!?」と思いコーチの方を振り向きました。
そしてコーチは「ここがダメだったから失敗しただけだよ!」と言ってくれました。

フィンランドのコーチは自分の失敗ジャンプから良い所を見付けてくれて、それを先に言ってくれたおかげで自分は失敗ジャンプに落ち込むことなく「次はダメだった所を直そう!」とすごくやる気が出てきたんです。
そのころの日本の指導は、いくら良いジャンプをしてもそのジャンプの修正点を見つけ出して指導するのが普通でした…自分では良いジャンプしたと思っても悪い所を指摘されるのでだんだんやる気が失われていった気がします。

この経験があったので選手を指導するときには、先に褒めて聞く耳を持ってもらってから修正したいことを伝える「褒めて育てる!」に気を付けていました。

2.【新しい事にチャレンジさせる】
選手が成長するには失敗はつきものだと思うし、失敗を恐れて新しいことに挑戦しなければ成長しないし良い結果は出ないと思っていました。
選手の調子が良くてもそれで満足するのでは無く、もっと上を目指してチャレンジしていくように指導していました。

自分も選手時代(アルベールビルオリンピックの前年)に「Ⅴ字ジャンプ」が出始めたとき、前のシーズンの成績が良かったのでオリンピック前に調子が悪くなるのが嫌でV字ジャンプにチャレンジしませんでした。
その結果シーズンが始まってみたらV字ジャンプの選手が良い成績を出し、シーズン中に焦ってV字をやり始めましたが習得できず、オリンピックでは個人戦30位、団体戦では金メダルチームの補欠になり、そのシーズンは全く良い成績が出ませんでした。
その時に選手は引退するまで結果に満足してはいけないと思いました。

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ソチオリンピックで渡部暁斗選手が自分達(1994年)以来20年ぶりのオリンピックメダル獲得をした時に、自分は渡部選手と一緒にメダルセレモニーに行きました。
その時のタクシーの中で自分は「本当に良かったな!メダル取ってくれてホッとしたよ」と言ったのですが、渡部選手は試合を振り返っていて「あそこをこうしていたら勝てたかも!?次はあそこを気を付けて飛んでみよう」とかメダルで喜んでいるというより次に向けてどうしようか考えていました。

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この時「この選手はまだまだ強くなる!」と思いましたし、実際に2017年シーズンにはワールドカップ総合優勝を達成しました。
渡部選手がいつも競技に対して真剣に取り組む姿勢を自分はすごく尊敬していましたし、これから一年でも長く世界一目指してがんばってほしいと思っています。

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3.【自分で目標を立てさせ実行させる】
自分は指導する時に出来るだけ「本人に考えてさせて行動させる」様に気を付けていました。
それと大きな目標より先に小さな目標を立てさせて、それをクリアさせて少しずつづ自信を付けて行く様にしていました。

*人から言われて行動して失敗したら、人の責任にして終わってしまう
*自分で意思で行動して失敗したら、学習して次に失敗しない様に努力する


自分で目標を立ててそれに向かって実行させれば決して結果が良くなくても学ぶ事がたくさんあると思います。
人に言われた事だけやっている選手は、良い結果が出てもある程度で成績が出なくなる気がします。
人が何やっているとか、周りがどうだからと言うのではなくしっかり自分と向き合える選手が強くなるような気がしています。

自分は高校を卒業して社会人になった時に練習しているともう一人の自分が出てくるようになりました。
高校までは先生に言われた事を頑張れば「褒められる」、さぼったり出来なかったら「怒られる・叱られる」でした。
なので先生が見ているときには褒めてもらいたくて一生懸命頑張っている自分をアピールをしていました。

でも会社のスキー部には複合選手が自分一人だったので練習も一人でやっていて一生懸命頑張って練習しても誰もほめてくれない、逆に練習やりたくなくて公園でさぼって昼寝してても誰も怒ったりしてくれなくなりました。

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この頃から練習の手抜きをしていると「お前の目標はなんだ?誰のために練習しているんだ?」ともう一人の自分が出てきて自分を叱ってくれるようになりました。
そして逆に一人でつらい練習を頑張った時には「良く最後まで諦めずに頑張ったな!」ともう一人に自分に褒められるようになりました。

もう一人の自分に「怒られたり」「褒められたり」しながら自分はかなり成長していった気がします!

※指導者になり選手に目標達成する喜びを知ってもらう為にやっていた事
選手に小さな目標達成の喜びを知ってもらいたくて良く練習でやっていたのが、インターバルとかの辛い練習で自分は選手に「今日は1km×何本行ける?」と聞きます…普通は今日のメニューは1km×7本とか指導者が言ってやらせると思いますが自分は選手に決めさせていました。
それで選手が「じゃ今日は5本でお願いします!」と言うと自分は「よし今日は6本がんばろう!」って言います。
すると選手は「えっ」て顔をして嫌そうな顔をしますが、いざ始めて6本やり切った後にはすごく良い顔をしています。
自分が聞いて選手が言う本数とは、その日の体調で本人が絶対出来る本数を言っているのであえてそれ以上の目標に設定を変えてあげています。

ただこの作戦も長年同じ選手とやっていると選手の方が自分の考えを先読みして低い設定を言ってくることがあるので、そこは指導者の力の見せどころかと思いますよ!

自分が目標設定をさせる時に気を付けているのは、簡単に達成できる目標では達成感も喜びも無いと思っているので、自分ではちょっと無理かもと思う目標に向かって努力する事が大切なんじゃないかと思っています!

もし選手の目標設定が低い時には「お前ならもっと上を目指せるよ!」と褒めて目標設定を変えさせる様に心がけていました!

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