無職[vol.10]
警察の家宅捜索から14日後、僕は無職になっていた。会社の歴史上、明らかな事件の加害者として退職までに至った社員は僕くらいなものだろう。少なくとも、僕が入社してから退職するまでの10年弱そんな理由で退職する人は一人もいなかった。
社員として最終日、僕は職場にお菓子持参で最後の挨拶に行った。何故このような行動をとったのか自分でも100%理解していない。「大したことじゃないよ」という強がりなのか、「今までお世話になりました」という純粋な感謝か、「不安で死にそう」という気持ちの裏返