見出し画像

間歇(かんけつ)_一定の時間を隔てて起きること / 川上弘美 【蛇を踏む】

読書にまつわる文章を書き貯めたいなと思い、早1カ月程度。仕事終わりのタイミングで書き始めてみます。1冊目は長年愛読している川上弘美さんの「蛇を踏む」に。

あらすじ(Amazonより引用):ミドリ公園に行く途中の藪で、蛇を踏んでしまった。蛇は柔らかく、踏んでも踏んでもきりがない感じだった。「踏まれたので仕方ありません」人間のかたちが現れ、人間の声がして、蛇は女になった。部屋に戻ると、50歳くらいの見知らぬ女が座っている。「おかえり」と当たり前の声でいい、料理を作って待っていた。「あなた何ですか」という問いには、「あなたのお母さんよ」と言う……。

【広辞苑を引いた言葉】

●出奔(しゅっぽん):逃げて跡をくらますこと。

●粟立つ(あわだつ):寒さや恐ろしさのために、体の毛穴がふくれて、皮膚に栗粒ができたようになる。鳥肌になる。

●間歇(かんけつ):一定の時間を隔てて起きること。止んで、また、起こること。

【読書感想文】

その人たちと肌を合わせる最初のとき、私はいつでも目をつぶれない。その人たちの手が私を絡め私の手がその人を巻き、二人して人間のかたちでないような心持ちになろうというときも、私も人間のかたちをやめられない。いつまでの人間の輪郭を保ったまま、及ぼうとしても及べない。目を閉じればその人に溶け込んでその人たちと私の輪郭はまじりあえるはずなのに、どうしても目をつぶれないのである。(P44)

ご本人があとがきで仰っている通り、本作も「うそばなし」であるから、楽しく嘘の世界にぷかぷか浸ったのですが、印象的な言葉はこちら。もしセックスでその人に溶け込むことができるのだったら、喜んで僕は目を閉じているような気もするわけです。セックスの時の気持ちよさってパーソナルだし、最中に出る言葉が本当かどうかもわからない訳ですが、溶け込むことができたなら、あなたと私の気持ちよさも溶け込んで、交じり合って、同じ感覚を一緒に感じられるのかもと。

主人公が最初から目をつぶることができたなら、踏んだ蛇に連れられて、暖かい蛇の世界で楽しく暮らしていけたのだろうか。そして僕もいつか相手と自分の輪郭がなくなるようなセックスができるのだろうか。

セックスの時に目をつぶる人/つぶらない人の統計があるかを調べてから寝ます。