寺は空間業
大亦観風(おおまたかんぷう)とゆかりの深い、天台宗目黒大圓寺(だいえんじ)に、和歌山~奈良の報告等で訪問して参りました。幸いご住職とも話ができましたので、観風の実子の逝去、今後のこと等を報告する中で、いつもながらの素敵なお話を伺うことができました。
東京目黒駅から雅叙園に権之助坂を下る途中、徒歩圏内の大圓寺ですから、このご時世、都市開発が進む中でも、人々の信仰心の拠り所として、ますます無くてはならない存在になっていくのだろうな、、と、ご住職の思いの深さに感じ入ることもしばしばでした。
ご住職はお寺とは空間業だと仰います。人々が集い、学び、心震わせる場、※行を行う行場(ぎょうば)であり、この空間を後世につなげてゆく務めを意識されているのだそうです。見えない世界を知る方の言葉だと、ありがたく拝聴している自分にも気づく時間でした。
大圓寺から更に歩くと、浄土宗蟠龍寺があります。ここには、びわを持つ弁天様を象徴とした「ばんりゅうじスタジオ」という音楽スタジオがあり、私たちもCDを2枚制作させて頂きました。現住職は増上寺修業時代より、アートに造形が深かったそうです。
現住職が増上寺境内を歩いている時、伝統の増上寺本堂と復興の象徴、東京タワーの姿が、現代美術の※インスタレーション(installation)のように感じ、「アート」をキーワードに、増上寺に足を運んで頂こうとイベントを企画、実施してきたそうです。
「増上寺薪能」にも関わり、過去を調べ、本堂の地下ホールで国内外のアーティストがライブなども行なっていて、アートと関係性の深い場所だったことに気づいたそうです。代表的なイベント「天祭 一〇八」というアートフェアは、作家が作品を展示即売する仕組みで6回ものリピートがあったそうです。
一見、何の関係もないようなお寺とアートが、空間でシンクロするなんて、実に素敵だと思いました。JOYSHiPも、心と体の健康からスタートしていますが、オンライン・オフラインを行き来しながら、より豊かな空間となるよう努めて行こうと思う一日でした。ありがとうございました。
教会も寺院も「空間」をキーワードに、アートとシンクロが顕在化して行く時代になっているかも知れないと、前回のルーテル教会ライヴと重なる奇跡を感じます。
※インスタレーション(installation):70年代以降広がった表現手法。彫刻展示の工夫、ランドアート・環境芸術制作、パフォーマンスアートの演出に対する試行錯誤から生まれた現代美術の表現手法の一つで、空間全体を作品として体験させる芸術。
展示空間を含めた全体を作品として五感で作家の世界観を感覚で楽しめる作品が多い。アート知識の深さに関係なく誰でも楽しめる。
※仏教における「行(ぎょう)」には、次のような意味があります。
サンスクリット語の「saṃskāra」の訳で、過去に身・口・意の三業によってなした善悪すべての行い。十二因縁の第2にあたると解されることもあります。
サンスクリット語の「saṃskṛta」の訳で、因縁によって作られた、一切の無常な存在。
サンスクリット語の「carita, caryā」の訳で、僧や修験者の修行。身体的、あるいは言葉による、あるいは心理的な行為をいうこともあります。
浄土真宗では、阿弥陀仏の救済を信じて、念仏することをいう。
「行」は、四方に道が延びる十字路の形にかたどられ、人通りの多い道を表す漢字です。ひいて「ゆく」、転じて「おこなう」意に用いられます。