コマツ銘柄分析 ~世界シェア2位の建設機械メーカーの企業研究~
概略
コマツは東京都港区に本社を置く建設機械メーカーです。
建設機械世界2位でこの業界ではアメリカのキャタピラーとの世界2強と言われています。
キャタピラーについても記事を書いていますので読んでいただけると幸いです。
海外売上比率は9割を超え、世界に239拠点を持つ日本が誇るグローバル企業です。
事業内容分析
建設機械・車両
コマツの主力商品は建設機械です。
建設・鉱山機械、フォークリフト、林業機械など様々な現場で使用される機械の製造販売を行っています。
また、機械本体の製造販売のほかにもメンテナンスや修理のサービスや稼働現場の生産性を向上させるソリューションを提供しています。
建設機械にも一般機械と鉱山機械に分かれています。
一般機械は建設機械・車両部門の需要台数の大多数を占め、土木・建設工事をはじめとする様々な現場で使用される機械です。
新しいまちづくりや都市化への対応など、人々が生活を営むうえで社会インフラの整備は欠かせません。
コマツは幅広い商品ラインナップをそろえており、私たちの生活を支えてくれているのです。
鉱山機械はダンプトラックなどの大型機械が需要の中心です。
私たちの生活や産業に必要不可欠な鉱物やエネルギー資源は鉱山から採掘されます。
資源の安定供給のために鉱山現場は24時間365日稼働することが求められますが、過酷な鉱山環境での作業は非常に大変です。
そのため、人口不足の問題もある中で鉱山機械の役割は非常に大きいのです。
コマツは世界初の無人ダンプトラック運行システム(AHS)をはじめとする高付加価値ソリューションを提供しています。
また、コマツはアフターマーケット事業(部品・修理サービス)も展開しています。
機械本体納入後の部品の販売や定期メンテナンスなどを行っています。
建設機械の需要は景気に左右されるところもあり、需要が安定しませんがメンテナンスに関しては需要が安定しています。
そのため、建設機械・車両事業の安定的な収益源になっているのです。
スマートコンストラクション
現在の建設現場では労働力不足や職人の高齢化など様々な課題があります。
また、少子高齢化により若い労働者の確保が難しくなることも事実です。
そのため、コマツは「スマートコンストラクション」というソリューションを提案しています。
スマートコンストラクションは建設生産プロセス全体のあらゆるデータをICTでつなぐことで測量から検査まですべての建設プロセスを見える化するものです。
ICTの力を活用することで工数の削減や安全性の高まりが期待できます。
また、熟練オペレーターの感覚に頼っていたことがデータ化されることによって後継者にその技術を受け継ぐことができます。
コマツはICTの活用で現在の建設現場の課題を解決しているのです。
伝統市場と戦略市場
建設機械・車両事業は全世界で展開しており、その中でも伝統市場と戦略市場に分けて事業を展開しています。
伝統市場は日本・北米・欧州です。
この市場では建設機械の自動化・電動化機械などの高付加価値商品の導入やアフターマーケットビジネスでの収益獲得など総合的な価値の提供を行っています。
戦略市場は中南米やアジア、オセアニア、中東、アフリカです。
この市場では鉱山機械関連ビジネスの高い収益性を維持しつつ、人口増加や都市化に伴い増加している一般建機の需要を取り込むべく各地域の市場特性に応じた戦略をとっています。
地域別に見ると、全体的にバランスの良い構成比になっていることがわかります。
一番売上高が大きいのは北米ですが、2位以降はそこまで差がありません。
地域が偏ることなく売上を上げているのはコマツの強みと言えるでしょう。
各地域におけるコマツの取り組みは以下のとおりです。
・日本
経済の成熟により需要変動が少なく比較的安定した市場のためアフターマーケット需要の着実な取り組みやICTを活用した高付加価値ソリューションの提供を行う。
・北米
価値あるものが高価格で受け入れられ、新車だけでなく、サービス・部品・中古車などがトータルで評価される市場であり、コマツの建設機械・車両事業で最も多くの売上を占める。
ICT建機の拡販などを行う。
・欧州
環境問題や先進テクノロジーに対する意識が高い市場。
コマツでは電動化機械の市場導入やスマートコンストラクションの導入を推進している。
・中南米
全体的に資源開発・農業・インフラ投資などが経済成長をけん引している市場のため鉱山機械の強化を進める。
・中国
コマツをはじめ様々な競合が参入している市場だが、政策が需要を大きく左右する市場。
コマツは中大型機種の拡販やバリューチェーンビジネスの拡大を重視する販売戦略を展開。
・アジア
各国の経済政策によって需要が変動しやすい市場であり幅広いニーズに対応する商品を展開。
・オセアニア
地域需要の大半をオーストラリアが占め鉱山機械の需要が高い。
コマツは都市部でのICT建機の拡販や無人ダンプトラック運行システムの導入を進める。
・中近東
産油国を中心に一般建機の需要が堅調に推移している市場。
コマツはインフラ開発プロジェクトなど、国家主導の大規模な土地造成工事向けの機械を中心に積極的な営業活動を展開。
・アフリカ
人口増加や都市部に伴う道路・電力網などのインフラ整備、豊富な鉱物資源を背景に一般建機、鉱山機械ともに今後高い成長が見込まれる重要市場であり国をまたいだグローバルなサポート体制を整備して対応している。
建設機械・車両事業の最新業績
建設機械・車両事業の最新業績(2023年度上期)は前年と比べて大幅に増加しています。
主な要因は円安による為替差益ですが、北米で鉱山機械の需要が高まったことにより増収となりました。
地域別に見てもCIS、中国を除く地域で増加しており、全世界で建設機械・車両事業は好調だったといえるでしょう。
リテールファイナンス・産業機械事業
コマツは建設機械が売上の大半を占めていますが、その他にもリテールファイナンス事業と産業機械事業を行っています。
リテールファイナンスは顧客がコマツの商品を購入する際に資金負担の軽減を提案するファイナンス事業です。
産業機械は半導体産業や自動車産業、防衛省向けに工作機械などを製造販売しています。
各種指標分析
売上高・営業利益
コマツの売上高、営業利益、営業利益率を見ていきたいと思います。
2021年から売上高、営業利益ともに毎年増収増益となっています。
これは北米を中心に建設需要が旺盛だったことに加え円安などの為替要因が主な理由です。
2023年から2024年にかけて伸び率が落ちているのでこの点は注意が必要です。
また、営業利益率が10%以上であり高い数字です。
コロナ禍では10%以下でしたが、その後は需要が回復し営業利益率もそれに伴って高くなっています。
世界シェア2位に君臨しているので競争力のあるビジネスを行っていることがわかりますね。
EPS(1株利益)
続いてEPS(1株利益)です。
EPSは1株当たりいくら儲けているかを確認するための指標でこの数字が成長しているほど稼ぐ力を伸ばしていると判断できます。
コマツのEPSは毎年成長しているのがわかるかと思います。
景気によって建設機械の需要は変動しますので景気が良いときはEPSは上がりますが景気が悪くなるとEPSは悪くなるのがコマツの特徴です。
ただ、稼げるビジネスを行っているのは間違いないので長期的に見るとEPSは成長していくと予想できます。
自己資本比率
次は自己資本比率です。
自己資本比率は企業の財務健全性を確認するための指標でこの数字が高いほど安全と言えます。
コマツの自己資本比率は50%を超えており、財務健全性に問題はないと思います。
手元のキャッシュも潤沢にありますので事業継続に不安な部分はありません。
配当・配当性向
最後は配当・配当性向です。
コマツは業績連動型の配当政策です。
配当性向40%を目安に配当を実施するので業績が悪いと減配があります。
ただ、景気が回復すると業績もグングン良くなりますのでその分配当も上がります。
近年は毎年増配しており、事業の好調さがうかがえます。
また、コマツは株主優待制度があり、300株以上を3年以上保有するとオリジナルのミニチュアが毎年もらえます。
建設機械自体が好きな方には最高ではないでしょうか。
今後の展望とまとめ
以上のようにコマツは世界でビジネスを展開し、各地域で最適な戦略を行うことで成長し続けている企業と言えるでしょう。
近年は好業績が続くコマツですが、今後の見通しはやや陰りが見えているのも事実です。
主要市場の見通しを見ていきたいと思います。
日本市場
日本市場は上記でも述べたように成熟した市場で安定した需要が見込める地域です。
公共工事や民間工事が堅調に推移し、2023年度通期では前年並みの見通しを立てています。
北米市場
北米市場はレンタル、インフラ、エネルギー関連で好調が続いています。
ただ、金利の上昇で住宅建設向けの需要が低減があるため、2023年度見通しは前年並みか微減を見込んでいます。
欧州市場
欧州市場は急速な金利上昇と高インフレの持続によって一般建機の需要が低減しています。
2023年度見通しは前年度と比べて減少すると見込んでいます。
中国市場
中国市場は不動産市況の低迷により経済活動が低減しています。
そのため、建設機械需要の減少が続いています。
2023年度見通しは大幅減を見込んでいます。
東南アジア
東南アジアは鉱山機械は順調に推移したものの、一般建機では公共事業予算執行の遅れにより需要が大幅に減少しました。
2023年度予想は減少を見込んでいます。
以上のように主要地域で減少が見込まれており、そのため上期は好調な業績を出したものの、市場の期待には応えられていないという反応になりました。
ただ、景気が悪いときもあればいいときもあります。
景気がまた回復すればコマツの需要も高まることが容易に予想できるので心配する必要は全くないと考えています。
このような企業研究を他にも書いていますので読んでいただけると幸いです。
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