NTT銘柄分析 ~時代に合わせた事業展開を行う通信企業の企業分析~
概略
NTT(日本電信電話)は東京都千代田区に本社を置く日本の電気通信事業者です。
世界最大規模の通信事業グループでNTT(日本電信電話)は持ち株会社です。
傘下にはNTT東西、NTTドコモ、NTTコミュニケーションズ、NTTデータなど単独でも超がつくほどの大企業を抱えています。
通信事業だけでなく、NTT都市開発などの不動産やNTTファイナンスといった金融企業も抱えるまさに日本を代表する企業グループです。
事業内容分析
NTTは主に3つの事業を行っています。
内容としては
総合ICT事業
地域通信事業
グローバルソリューション事業
の3つです。
総合ICT事業
総合ICT事業は主にNTTドコモ、NTTコミュニケーションズの領域になります。
総合ICT事業の中でも事業は分かれており、「法人事業」「スマートライフ事業」「コンシューマ通信事業」を行っています。
法人事業は主にSASEソリューション、IoTソリューション、ICT環境サポートを提供しています。
SASEソリューションは「Secure Access Service Edge」の略でネットワーク・セキュリティ・マネジメントを一体型にするソリューションです。
モバイル(5G)・固定通信とクラウド型セキュリティが融合したネットワークサービスを提供し、スピーディーに安全なICT環境を構築するとともにトータルコストの低減を実現するものです。
IoTソリューションの例を挙げると、鉄道業界ではLED灯と監視カメラを一体型にすることでLEDというものに新たな価値を生みました。
ICT環境ソリューションは「まるごとビジネスサポート」というICTに関する中小企業などの困りごとをサポートするサービスになります。
スマートライフ事業は主に金融とデータを掛け合わせたサービスです。
「dカード」や「d払い」「dスマートバンク」といったサービスを連携することで一人一人に最適な金融商品をタイムリーに提供することが可能になっています。
また、マーケティングソリューション事業も行っています。
コンシューマ通信事業は主に私たちが使用しているスマートフォンに関連する事業です。
ahamoやirumoをはじめとするプランの提供と「iD」などの金融や「ドコモ光」といったエネルギーやコンテンツを絡めて提供することでいわゆる「NTT経済圏」に取り込むことを行っています。
また、通信品質を高めるネットワーク事業も行っています。
グローバルソリューション事業
グローバルソリューション事業は主にNTTデータの領域になります。
NTTデータは、現在は国内事業を行う「NTTデータ」と海外事業を行う「NTT DATA,inc」に分かれています。
この事業は「データセンター事業」を成長の原動力としています。
2027年度末までにデータセンター事業に1.5兆円以上の投資を行い、2022年度から2027年度にかけてデータセンター事業のEBITDAを2倍以上に成長させることを目指しています。
EBITDAは「Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization」の略です。
日本語で表すと、「利息、税金、減価償却費及び償却費控除前の収益」になります。
簡単に言うと「営業利益+減価償却費」という意味になります。
データセンターはNTTがこれまで培ってきた技術を活かせる領域です。
また、NTTには資金力がありますのでその資金力を生かしてデータセンターをグローバルに変革していくことができるでしょう。
特にアメリカ、ヨーロッパ、インド、アジアにおいてM&Aも行いながら世界トップクラスのデータセンター事業者に拡大していく戦略を立てています。
データセンター市場は2028年までに1,368億ドルに達すると見込まれており、急激に拡大していく見込みです。
これはAIといった最新技術の進化を背景にしており、データセンターの需要は今後も拡大していくのでこの市場をNTTが獲得できればさらに成長していくことができるのではないでしょうか。
さらに顧客のバランスもとれており、顧客基盤も多岐にわたるため分散ができていると考えていいでしょう。
地域通信事業
地域通信事業は主にNTT東西の領域です。
主に固定電話をはじめとする音声サービスの事業とブロードバンドサービス事業を行っています。
固定電話がない家も増えていますので今後もこの分野が伸びることは考えづらい状況ですが現在はブロードバンドサービスが主な収益源となっています。
また、他の事業として地域の社会課題を解決する事業を行っています。
例を挙げると「市役所や道の駅に導入したスマートストア」や「文化芸術のデジタル化」があります。
スマートストアは決済の自動化や簡便化、店舗の省人化などにつながり、店舗運営が効率的になることが期待されています。
各種指標分析
営業収益・営業利益
まずは営業収益、営業利益、営業利益率です。
毎年わずかながらも営業収益・営業利益を伸ばしており、コロナ禍においても安定したビジネスを行っていることがわかります。
また、営業利益率は10%以上で良い数字です。
通信業は利用者が契約者になる「ストック型ビジネス」の典型といえるビジネスなので毎年安定した利益を生むことができるのがわかります。
「ストック型ビジネス」とは一度契約したらその契約が終わるまでは継続して収益を上げることができるビジネスです。
先にお金が入ってきてそれに対してサービスを提供するため、安定していることが特徴です。
モノを作って売るのではなく、先にお金を集めるビジネスモデルなので利益率もよく、キャッシュがたまっていくので新しいビジネスにもつなげやすいという面もあります。
その代表ともいえるNTTは今後も安定した利益を計上することができるでしょう。
EPS(1株利益)
次はEPS(1株当たり利益)を見ていきたいと思います。
EPSは「当期純利益÷発行済株式総数」で求めることができ、言葉通り1株でどれだけ稼いでいるかを表したものになります。
このEPSを見ることでその株がどれだけ稼いでいるかがわかります。
その企業にどれほど稼ぐ力があるのか見る指標ともいえるでしょう。
NTTのEPSは毎年上昇しており、非常に綺麗に成長しているとわかります。
配当は当期純利益の中から出ますから、この数字が毎年上昇しているのは非常に安心できる材料と言えるでしょう。
自己資本比率
次は自己資本比率です。
自己資本比率は、企業の財務健全性を確認するための指標でこの数字が高いほど安全とされています。
一般的に60%を超えると非常に安全と言っていいでしょう。
ただし、業種によって自己資本比率は異なります。
商社や金融は非常に低い数字になるので同業種で比較することが大切です。
NTTの自己資本比率は近年は低い数字になっています。
これはNTTドコモを子会社化したときに有利子負債が増加したことが理由です。
ただし、40%付近であれば危険という数字ではないため、問題のない水準といってもいいと思います。
配当・配当性向
最後に配当と配当性向の推移です。
NTTは2020年に株式を分割しています。
配当は毎年増加しており、12期連続で増配しています。
また、NTTのウェブサイトには
としており、今後も増配を続けていくことが予想できます。
配当性向も30~40%のレンジで推移しており、非常に良い数字と言えます。
また、NTTは自社株買いも積極的に行っており、株主還元に積極的な企業と言えるでしょう。
まとめ
以上のようにNTTの業績は非常に安定しており、景気の波にも左右されず安定した利益を出すことができる企業と言えるでしょう。
最近の好業績の要因はスマホを中心とした情報通信量の増加です。
これによりコロナ禍においても黒字をたたき出し、増配も行うなど事業の安定性をはっきりと示しました。
また、将来性もあると考えています。
すでにデータセンターは世界に展開しており、現在は世界3位の位置につけています。
さらに「IWON」という通信技術でも先行しています。
これは通信量を100倍超にする光を使用した通信技術で、今後あらゆるものがネットに接続されるようになるために貢献してくれるでしょう。
そして、実際にその時が来た際にはNTTの収益はさらに拡大すると考えています。
自動運転分野においても強みである通信技術を生かしてサービスの提供を行うために現在研究中です。
NTTは固定電話の会社と考えている人もいますが、現在はそんなことはありません。
固定電話から携帯電話、そしてデータセンターや情報技術など稼ぐ事業を時代に合わせて変化させる柔軟性を持っている企業と言えます。
これは時代の変化に合わせて対応できる技術もあるといえる証拠ですので今後もNTTは安定した経営を行うと考えていいと思います。
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