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金融領域を中心に非通信に注力するKDDI

KDDIは言わずと知れた日本を代表する通信会社です。
通信インフラを支える企業なので景気に大きく左右されることがなく、毎年安定した利益を生み出しています。

もちろんEPS(1株利益)も長期的にずっと成長しています。

IRバンクより


そんなKDDIですが、新中期経営計画では事業改革を推進するとしています。
ではどのようにKDDIは事業改革を進めるのか見ていきたいと思います。

新中期経営計画

KDDIは当初2022年~2024年度までで「5Gを中核に据えた事業変革の推進」を掲げていました。
現在は1年延長して2025年まででそのフェーズを達成するとしています。

そして2030年までに「社会を支えるプラットフォーマー」を目指すと発表しています。

KDDI HPより

KDDIが「社会を支えるプラットフォーマー」になるために注力する分野は以下の通りです。

KDDI HPより

これを見るとわかる通り、スマホや固定電話などの通信分野に注力するというわけではないことがわかると思います。

むしろ、通信を核にして周辺領域に注力する、そしてKDDI経済圏を確立しようとしているのです。

ではなぜ周辺領域に注力しようとしてるのでしょうか。

それは主力の通信事業の成長に限界が来ているからです。

携帯電話はすでに1人1回線以上持つのが当たり前になっており、少子高齢化の現状では契約数を大きく伸ばす余地もほとんどありません。
また、格安スマホの台頭によりこれまでのように高い収益を上げることが難しくなっています。

このような状況下においてKDDIは通信以外の事業の柱を育てることに力を入れているのです。

今回はその中でも金融領域について見ていきたいと思います。


金融領域

KDDIは「auじぶん銀行」という銀行サービスを提供しています。
また、最近では新NISAに対応した「auマネ活プラン」といった通信と絡めたサービスを始めました。


金融サービスというのは人々の生活の根幹にあるものですよね。
これまでは金融は銀行、携帯は通信会社というように分かれていましたが、今はその境目がなくなってきています。

また、ネット銀行では預金金利だけでなくポイントの付与も活用して預金の獲得を狙うことが可能です。

auじぶん銀行では、月の総資産残高が100万円を超えると会員のランクが上がりますし、給料の受け取り口座など条件を満たせばポンタポイントを受け取ることができます。

このように様々な特典を付ける理由はメインバンクとして使用してほしいからです。

メインバンクとして人のお金の流れをKDDIが把握できるようになれば、何にいつどこでお金を使っているのかデータが取れるようになり、効率的なサービスを展開できるようになります。

これまでの通信の行動データに加えて決済履歴から新たなサービスにつながる仮説を立てられるようになるのは非常に大きな強みになるのではないでしょうか。

購買データを分析すると顧客の購買行動の傾向がわかり、シーズンごとの売れ筋商品や時期ごとに売れやすい商品が予想可能になります。
「商品Aの近くに商品Bを置くと売れる」など、従来の勘や経験ではわからなかった意外な関係性や規則性に気づく事もあるかもしれません。

KDDIはこれをさらに発展させようとしています。
そのために活用するのがローソンです。

KDDIが描く構想では、商品の売れ行きを把握し、天候や季節に応じてダイナミックプライシングを取り入れようとしています。
また、欠品しそうな際はロボットが補充するといったことまで考えているそうです。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC309990Q4A530C2000000/


通信・金融・コンビニといった生活に根付いたシーンをKDDIが握ることで経済圏に取り込むことができますし、それによってKDDIの収益基盤はさらに盤石になるのではないでしょうか。

実際にKDDIの金融サービスは順調で預金残高は昨年度比約1.5倍になっています。

https://www.kddi.com/extlib/files/corporate/ir/library/presentation/2025/pdf/kddi_240802_main_2jmaOd.pdf


非通信の分野が今後の成長には必須のため、預金残高が順調に伸びているのはうれしい材料です。

もちろんKDDIが非通信分野に注力できるのは通信分野という安定的な収益基盤があるからです。

通信業は典型的なストックビジネスなのでここでまず稼ぎ、それを成長領域の非通信分野に注ぎ込むことで事業領域の改革を進めることができます。

通信事業の衰退で手遅れになる前にすでに手を打ち、成果も出始めているKDDIは今後も「優等生」として成長していくのではないでしょうか。



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