５人（１）

あらすじ

　高級住宅街に、廃屋のようなアパートがある。アパートの一階は、車庫に改造されている。車の出入り口にはサイケデリックなカラーリングのビニールのカーテンがかかっている。このアパートの物語が映画になったら、オープニングはこんな感じだ。ＢＧＭは、アナーキー・イン・ザ・ＵＫ。だだだだ、というイントロとともに、サイケなカーテンの向こうから、チキチキマシン猛レースのミルクちゃんの実車が飛び出してくる。運転しているミルクちゃんのような女は、ぽてっとした唇が蠱惑的だ。車は、フロントにでかい唇のついたピンクと黄色のツートンカラー。車体の真ん中には白とピンクのパラソル。この車は、猛スピードで発進して、急ブレーキで止まる。車から女が降りる。カメラは、靴から顔へと上がっていく。白いラバーソウルの、どアップ。映画館の大画面は、画面一杯の靴。上のほうに遠近法で小さくなった顔。カメラが上がっていく。パンツは細みの赤いタータンチェック。Ｔシャツは、マーク・ボラン。峰不二子のような体の女は、冷めた視線をカメラに向ける。
　その女の住む廃屋には、どうしようもない四十男ばかり住んでいる。無頼派を自称する売れない作家。パンクロッカーのなれの果て。かつて売れっ子ギャグ漫画家だったが、十数年何も描いていないデブ。紙一重の芸人。ら、である。ギャグ漫画家は印税が少しずつ入ってくるが、他の男らは金がない。ところが働きもせず、酒ばかり飲んでいる。ミルクちゃんのような女は、ストリッパーである。女は、アパートのリーダー的な存在である。女は、男らのために知恵を出した。馬鹿なことをやってビデオに撮り、世に出るのだ。五人の関係は、たまたま、同じアパートに住んでいる。ただ、それだけである。ただ、似たもの同士のため、仲がいいのだ。

以下、本文

　高級住宅街に、廃屋のようなアパートがある。アパートの一階は、車庫に改造されている。車の出入り口にはサイケデリックなカラーリングのビニールのカーテンがかかっている。このアパートの物語が映画になったら、オープニングはこんな感じだ。ＢＧＭは、アナーキー・イン・ザ・ＵＫ。だだだだ、というイントロとともに、サイケなカーテンの向こうから、チキチキマシン猛レースのミルクちゃんの実車が飛び出してくる。運転しているミルクちゃんのような女は、ぽてっとした唇が蠱惑的だ。車は、フロントにでかい唇のついたピンクと黄色のツートンカラー。車体の真ん中には白とピンクのパラソル。この車は、猛スピードで発進して、急ブレーキで止まる。車から女が降りる。カメラは、靴から顔へと上がっていく。白いラバーソウルの、どアップ。映画館の大画面は、画面一杯の靴。上のほうに遠近法で小さくなった顔。カメラが上がっていく。パンツは細みの赤いタータンチェック。Ｔシャツは、マーク・ボラン。峰不二子のような体の女は、冷めた視線をカメラに向ける。
　その女の住む廃屋には、どうしようもない四十男ばかり住んでいる。無頼派を自称する売れない作家。パンクロッカーのなれの果て。かつて売れっ子ギャグ漫画家だったが、十数年何も描いていないデブ。紙一重の芸人。ら、である。ギャグ漫画家は印税が少しずつ入ってくるが、他の男らは金がない。ところが働きもせず、酒ばかり飲んでいる。ミルクちゃんのような女は、ストリッパーである。女は、アパートのリーダー的な存在である。女は、男らのために知恵を出した。馬鹿なことをやってビデオに撮り、世に出るのだ。五人の関係は、たまたま、同じアパートに住んでいる。ただ、それだけである。ただ、似たもの同士のため、仲がいいのだ。

#創作大賞2024 #漫画原作部門

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