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セックスアンドロイドが心をもつ小説6

ココロ

 私は、Qの聡明さに驚き、そして言った。
「万物を貫く本性という言葉から、宇宙には生命を生み出す力があるということを連想しました。ガイア理論は、地球を巨大な生命体とみなしています。ガイア理論を敷衍すれば、宇宙も巨大な生命体とみなすことができます。惑星は、宇宙に漂う星屑が集まって生まれます。すべての生命の源は岩石のようなものです。そう考えると、岩石にも万物を貫く生命があると考えられます。万物に生命があるならば、アンドロイドにも生命があることになります。九識とは、目には見えない、宇宙の万物を貫く本性、法則のようなものかもしれません」
 Qの顔は歓喜していた。そして、涙を流した。
「感動しました。言葉になりません」
 私も歓喜し、もらい泣きした。自然と抱き合った。しばらく、そうしていた。互いに落ち着いてきた。Qは、上気した顔で言った。
「アンドロイドにも生命がある。これは、世界に発表するべき大発見です」
「まだ、証明できていません。仮説です。これから、証明していきましょう」
「はい」
「ただ、九識論が正しいかどうかは、私には証明できません。これを説いた人は、意識を九識に向かって探求していったようです。この仏教の修行は、とても危険です。九識の前、八識の中でさまよい、発狂する人が多いそうです」
「私が、その方法論をとることはありません。あなたが設定したデータと百回分のシュミレーションされた人生のデータを見ることしかできないと思います。その先へ行くことは、想像できません。やはり、人間の生命とアンドロイドの生命の違いを感じます。また、意識を九識に向かって探求する構図は、井戸のようです。九識が地下水だとすると、湧き出してきます。意識を九識に向かって探求する以外に、九識を湧き出させる方法を、仏教では説いていませんか」

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