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【エッセイ】恋愛したことがないという話

少しだけ、俺の話を聞いていってくれ。

人を好きになったことがない。と言うとだいたい驚かれる。
というより信じてもらえない。
同性愛者じゃないかとか、理想が高すぎるんだとか。
あるいはまだ運命の相手と会っていないだけだとか。
なるほど、まだ会ってないだけかもしれないと思ったことはある。
けれど誰かと、つまり異性でも同性でもだ、恋人のように手を繋ぐなんて嫌だった。キスなんて考えたくもない。
性欲もあまりなくて、エロ本を見るのは好きだが興奮しない。
告白されたことはあったけど、そんな気にはまったくなれなかった。
性別関係なく、本当にそんなことできる相手がいるのか? といった気持ちだ。

世の中にはそういう指向の人間を指す言葉もあるらしい。
あるらしいが、本当にそうなのかがわからない。
まだ相手に会ってないだけじゃないか。
小さい時のなんらかの影響で興味が持てないだけなんじゃないか。
もし、俺が死ぬまで恋愛しなかったとして、確証を持って証明することはできない。
とりあえず、今の俺はこういう人間だとしかいいようがない。

とにかく、世は恋愛至上主義だと感じる。
見合いの時代が良かったというわけではないが、恋愛とは特別なものであるらしい。
俺だって家族や友人に対する情はあるし、大事にしたい人たちもいる。
しかしそれが世間一般にいう恋愛ではない気がする。
少なくとも創作物で見るような「恋に落ちた」瞬間はない。
恋愛とは俺にとってまるでおとぎ話のようだ。

恋愛を扱った創作物は見るのか? と思われるだろうか。
もちろん恋愛要素がなくても好きだが、恋愛要素のあるものも面白いと思う。
異性愛から男性同性愛、女性同性愛、人外、エロありまで幅広く好きだ。
人は自分では経験したことがないことでも、それらしく共感して面白いと感じる。
例えば経験したことがない職業でも大変そうだなあと推測することができる。
人を殺したことはなくても、創作の殺人犯の真に迫った描写はわかった気になる。
そもそも「経験したこと」しか面白く思えないなら創作なんて無意味だろう。

話を戻そう。恋愛はしたことがないが人と付き合ったことはある。
その人に「付き合えばわかるよ」と言われたからだ。
恋愛的に好きになれないと言っても「それでもいいよ」と言われた。
けれども手をつなげないと言ったら突然激昂された。
「それでもいい」んじゃなかったのか。
恋愛的には俺のほうが失礼だったのかもしれないが、
何だか裏切られた気がして、それっきり誰とも付き合ったことはない。

と、俺のことを書いてみたが「恋愛を知らない」という人が皆こうであるわけではない。
「異性愛者です」と言う人が皆恋愛について同じ考えか? といえば違うことがわかるだろう。
だから「まあ、そういう人もいる」くらいに思ってもらえると嬉しい。
名前をつけて分類するとそれでしかないとなりがちだけど、恋愛感覚は人それぞれだから。

これで俺の話はおわり。
恋愛はいいものだろうけれど、恋愛しなくてもそれはそれで悪くない人生だよ。

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