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官房機密費にも切り込むべき~1998年沖縄県知事選は

自民党の政治資金をめぐる事件、そしてそれに対する岸田政権の取り組みは、政治不信をますます高めています。わたしも民間で働いてきましたが、経費が落ちるには一円から領収書が必要です。それを考えればあまりに常識とかけ離れています。

そもそも政治にカネがかかるという言い分が間違っています。いわゆる裏金が何に使われたのか、実態解明が行なわれなかったこと、そして「政党交付金」の制度がつくられたのに二重取りになってしまっている状態が間違っています。

政治資金ももちろん問題ですが、政府の官房機密費の使い方も問われなければなりません。その思いを強くしたのは、週刊誌の取材に答えた鈴木宗男・元官房副長官の発言です。

鈴木氏はこの中で1998年に実施された沖縄県知事選挙について、自民党がかついだ稲嶺恵一氏の陣営に機密費が支出されたとして、「あの時、沖縄の重要性を考え、官邸、党が一体となって選挙戦に臨みました。自民党県連はじめ、沖縄の国会議員に渡っている」「稲嶺氏が知事の座を奪還することは政府・与党を挙げての最優先事項でした」と述べているのです。

衝撃を受けたのは、当時わたしが、沖縄で知事選挙を取材していたからです。確かにこの選挙は、普天間基地の移設問題が問われていただけに与野党にとって、重要な選挙でした。それだけに機密費からカネが流れていた疑いがあることを知り、「選挙が公平に行われたと言えるのか」、「政権が力づくで介入してきたのではないか」と感じたのです。

いまから考えると普天間基地の返還合意に尽力した当時の橋本総理、つづく小渕総理には沖縄への思いが感じられました。当初の移設案が撤去可能な海上ヘリポートだったのは、苦渋の表れと言えます。しかし当時の大田昌秀知事は、県内への移設を良しとせず、政府との関係は冷えていきます。

大田知事は、基地の過重な負担を全国に問いかけました。2015年までに段階的に基地を返還するアクションプログラムまで策定していました。筋を通す戦う知事の姿は輝いて見えました。しかし、県庁内での評判は必ずしもいいとは言えませんでした。大田知事が求める高い要求に対して、反発する職員も少なくありませんでした。

また1998年は、景気が良くありませんでした。沖縄も例外ではなく、稲嶺陣営は争点を基地問題からそむけ、得意の経済政策に持ち込みました。普天間基地については、軍民共用の空港にする案を提示しました。誰が貼ったのかは分かりませんが、街中に「県政不況」と書かれた張り紙が目につきました。

激戦の末、稲嶺氏が当選します。当時の知事公室長が「われわれがやってきたことは間違っていたのだろうか」と嘆いた姿が忘れられません。

選挙の結果に関わらず、「正々堂々と選挙戦が戦われた」、「知事の交代が有権者の答えだった」と思ってきただけに「機密費の支出疑惑」には、驚きを越して怒りさえ感じました。そしていわゆる裏金が政治に与える悪影響について考えざるを得ませんでした。

林官房長官は、会見で機密費について「国の機密保持上、使途を明らかにすることが適切ではない性格の経費として使用されてきており、個別具体的な使途に関するお尋ねには答えを一切差し控える」と述べた上で「違法行為に使用されることはあってはならない」と答えています。そして何に使われたか検証できる制度の導入について明言を避けています。やはりアメリカのように後で使い道を公開するなど検証できる制度が必要だと思います。選挙に使われることがあってはなりません。

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