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〈小説〉青い目と月の湖

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長編小説なのでこのマガジンにまとめています。 とはいえ『腐った祝祭』ほど長くはないです。 魔法使いと呼ばれる男が出てきます。
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#魔術師

小説|青い目と月の湖 2

 朝、家を出て、小走りのまま真っ直ぐ村役場に向かった。  畑や牧場ばかりの村に点在する家…

mitsuki
2か月前
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小説|青い目と月の湖 4

 村役場に到着したのは正午頃だった。  ハンスは役人の一人に声をかけ籐籠を返した。  クロ…

mitsuki
2か月前
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小説|青い目と月の湖 5

 ジョルジオは昼食を済ませた後で、トウモロコシの生育具合を見るために畑に来ていた。  小…

mitsuki
2か月前
7

小説|青い目と月の湖 7

 大人のくせに喜んで揚げ菓子を食べている魔術師を、ハンスは冷めた視線でじっと見ていた。 …

mitsuki
2か月前
4

小説|青い目と月の湖 8

 エレンが、ハンスとそっくりな大きな瞳を見開いていた。  クロードはそれに、曖昧な微笑で…

mitsuki
2か月前
4

小説|青い目と月の湖 9

 食糧を運ぶハンスのために、役場はジョルジオ農園から一頭の馬を借りてくれた。  エレンは…

mitsuki
2か月前
6

小説|青い目と月の湖 12

 クロードは川岸の野原を歩いていた。  両岸に張っていた氷も、雪も、すっかり溶けていたが、川べりを吹く風は少し寒かった。  コートは着ていなかったが、首に巻いていた薄手のマフラーが風にはだけ、それを手で止めて結び直した。  足元ではカワソバの小さなピンク色の花が咲き誇っていた。  花は可憐だが、地を這う茎から次々と根を生やし、強かに勢いよく成長を続けている。  クロードはその河原に背の低いクコの木を見つけると、その方へ歩いていっては、新芽を摘んで袋に集めていた。  ふと、

小説|青い目と月の湖 13

 ハンスのおどおどした様子と、遠慮がちな物言いが、以前の彼の言葉に繋がった。 「まさか、…

mitsuki
2か月前
9

小説|青い目と月の湖 14

 息苦しさに、クロードは足を止めた。  クマザサやニリンソウなどの群生にたまに出くわし、…

mitsuki
2か月前
9

小説|青い目と月の湖 15

 マリエルは湖の西岸に広がるスミレの野原を歩いていた。  小さな黄色いスミレの花が咲き始…

mitsuki
2か月前
8

小説|青い目と月の湖 16

 マリエルは恐れながらも、クロードの傍に近付いた。  そして、ブルーグレーのドレスが汚れ…

mitsuki
2か月前
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小説|青い目と月の湖 17

 ノックの音でドアを開けると、ハンスが溢れ出しそうな笑顔を上に向けていた。  その頭の後…

mitsuki
2か月前
6

小説|青い目と月の湖 18

 ハンスの話しによれば、彼女が母親以外に出会った初めての人間がハンスだったのだ。  クロ…

mitsuki
2か月前
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小説|青い目と月の湖 20

 私にも素朴な疑問があると言って、マリエルが伸ばした手を、ハンスは半ば驚いて見上げた。  マリエルが積極的に自分から発言するのは初めてのことだったからだ。  いつものように机の椅子に座り、テーブルの方へ体を向けていたクロードが、右手をすっと差し出して言った。 「はい、どうぞ」  マリエルはニコリと笑って、ハンスに言う。 「ハンスはよく私と遊んでくれるし、ここに食糧を運ぶ仕事もしてるけど、学校にはいつ行っているの?」 「学校?」  ハンスは顔をしかめ、クロードの顔をチラッ