逆関数について(写像から)

数学IIIの関数のところで突然出てくる逆関数。

y=xのときは定義できるけどy=x^2の時は定義できない。でもx>0などと制限すれば定義できる。
またe^xとlog(x)は互いに逆関数である。

などなどよくわからないまま終わっていった記憶がある。

でも現代の数学を学ぶ上では写像は特に基本的であり、その中でも大変重要な逆関数(逆写像)はしっかりと理解しておく方がいいと思う。

よって今回は高校生でも分かるレベルを目指して書いてみる。

前提として集合の基本的な知識(数学I程度)を持っていることとする。

まずは写像(関数)を定義しよう!

Def(map)

Let X and Y be sets

a map from X to Y
assigns to every element $${x\in X}$$
an unique element $${f(x)\in Y}$$

つまり、XからYへの写像(関数)は
Xのどんな元(要素)も一つのYの元f(x)に対応している。

We denote a map f from X to Y by

集合は普通の→
元は線の付いた矢印で書く

For every set X, there is an identity map(恒等写像)

これは(普通の乗法の意味での)1に対応するものだと解釈できるだろう。
実際に(後で述べる)全単射写像の集合を群とみなしたときの単位元はこれ。

次に合成写像(関数)を定義しよう!

Def
Let f:X→Y and g:Y→Z be maps.
The composition of f and g is the map

これは数IIIをやっていた人なら馴染みがあるものだろう。
そうでない人は日本語の通りでgとfを合成したと思えばよい。
ちなみにg⚪︎f(x)=g(f(x))であることに注意

さて、ここでついに写像で最も重要なものを述べる。

Def
A map f:X→Y is

①injective(単射)
if $${x,z\in X}$$ satisfy f(x)=f(z),
then in fact x=z

②subjective(全射)
if for all $${y\in Y}$$ there exists at least one $${x\in X}$$ so that f(x)=y

③bijective(全単射)
if it is ①and②

定義が抽象的すぎるのでいまいちよく分からない!となるかもしれないが、単射はダブりがない(対偶を取ってみる)、全射はどんなYの元も対応するXの元がある(こちらは複数あってもよい)。
そして全単射はそれぞれの元が1対1に対応しているイメージ。
例えばy=xは全単射
y=x^2はℝ→[0,∞)では全射だが単射ではない。
実際にy=1を考えるとx=±1と二つが対応してしまう。
一方で[0,∞)→[0,∞)とすれば全単射

さて、ここまできて、もしかして全単射が逆関数の存在と関わっているのではないか?と思ったかもしれない。
実はその通りで、全単射であることと逆関数が存在することは同値である。
以下はその命題である。

Prop
A map f:X→Y is bijective
$${\iff}$$there exists a map g:Y→X such that
$${g\circ f=id_X, f\circ g=id_Y}$$

proof
証明はめんどくさいので日本語で
$${\implies}$$こちらは明らか。
$${\impliedby }$$
こちらは単射、全射それぞれ調べていく。
(単射は任意にa,bをXから取って、
f(a)=f(b)の時にa=bを示せばよい。)
まず、任意にa,bをXから取る。
f(a)=f(b)とすると、gを合成して
g(f(a))=g(f(b))を考えて、仮定よりa=b
よって単射は示せた。

次に全射を示そう。
(全射は任意にyをYからとって、あるXの元xがあってy=f(x)と書けたらよい。)
ということで、任意にyをYから取る。
仮定よりf(g(y))=yであったから、g(y)=xとすれば全射。

よって全単射であると分かる。


さて、実はこのgがfの逆関数である。
そのことをRemarkで述べておく。

Remark
In this case, the function g is uniquely determined by bijective function f.
It is called the inverse of f and denote
$${f^{-1}:Y→X}$$

参考文献
https://math.mit.edu/~jhirsh/top_lecture.pdf
2024/7/2取得

あとがき的な

日本語で説明するのは簡単だけど英語で数学をしてみようと思い英語のpdfを参考に書いてみた。
英語ではそう表現するんだ!と色々な発見があって楽しかった。

mapの定義のところでuniqueと書いたがassignがuniqueの意味を含んでいるのかよく分からなかったので書いたが、もしその意味を含んでいるなら不要か。

また「高校生でも分かるように」と書いたがどうだっただろうか。
英語で書いてあるとはいえそれ以外は出来るだけ分かりやすく書いたつもりだ。

写像について知ることは数学の基礎を知ることだと思う。
なぜか高校では習わないが絶対するべきだ思う。

実は微分すらも(線形)写像だし、Galois理論の基本定理も、ホモトピーも、、、

ところで、統計検定準1級のテキストの勉強を始めて第4章で絶望することはよくあると思う。
でもそれは全単射を意識出来てないからだと思う。

またその事については書いてみたい。

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