中学数学からはじめる三角比の考え方
高校に入って数学は中学校の時と比べて難しくなるという話はよく聞く。
高1としては「たすき掛け」や「二次関数における場合分け」など様々な要素が考えられるが、しばしば三角比がその原因となることがある。
今回は中学校の知識の復習をしつつ、三角比の導入をしていく。
よって厳密な定義というより、感覚的な理解を優先するような内容になっている。
数学が得意な人にとっては当たり前に思えるかもしれないが、改めて認識することは大切だろう。
そもそも三角比とは?
といった具合に定義されるものだ。
これをとらえ直してみたい。
相似の復習
の3つが三角形が相似であるための条件であった。
相似を簡単に言えば「そのまま大きくしたり小さくしたら二つが重なる」というイメージだろう。
とりわけ三角比の理解に大切なのは1つ目と3つ目の条件だ。
後に紹介する。
三平方の定理の復習
というのが三平方の定理だった。証明は様々の所に載っているのでそれを参照。
三角比を相似で捉え直す
つまり直角三角形において、θが決まれば相似となり、そのときのsin,cos,tanの値は一定となる。
一見当たり前のように思えるが「相似の考え方を使っている」ということは学年が上がるにつれて馴染みが無くなってくるので復習となると思う。
三角比の性質
有名角について
三角定規に現れる30°,45°,60°は良く出てくるので覚えておくとよい。
ここでは、30°,45°,60°について簡単に紹介しておく。
三角比の関係式
この辺りは有名でよく使う公式だ。
特に2つ目の関係式の両辺を$${cos^2(θ)}$$で割ったものと合わせて問題ではよく使うことになる。
ここから授業では90°<θ<180°に拡張して議論したり、正弦定理、余弦定理などの話に進んでいくが今回の目的ではないので省略する。
ただし、数IIの三角関数としてあつかう単位円での拡張については軽く導入をおこなう。
三角関数を単位円で捉え直す
そもそも単位円とはなんだろうか?
単位円とは式で書けば$${x^2+y^2=1}$$で、すなわち中心が原点、半径が1の円である。
この単位円を用いて以下のように三角関数を定義する。
ただし角度はラジアンである。
(ラジアンを計算面だけで理解するならπrad=180°と思えばよい。実際の定義は下の通り)
つまり弧の長さで角度を決めるようになっただけである。
これも度数法(30°など)から弧度法(π/6rad)などの変換についてはたくさん記事があるのでそちらを参照ください。
tanは緑の線分の傾きと解釈するのが最初は良いと考える。
さてこのように拡張することでθは任意の角度を取ることが出来るので、0°や180°,270°,510°といった三角形では定義出来なかった角度も表せることが分かる。
更にこれが自然な拡張であることは例えばθ=45°としてそこに今まで考えていた三角形を当てはめてみると良い。
また、上で紹介した3つの関係式も当然成り立つし(実際に計算すればすぐ分かる)、その他拡張したことで新しい公式も出現する。
加法定理の紹介
ここで興味が出てくるのは「15°や75°など三角定規などからでは求めることが難しかった角度も具体的に考えることはできるのか?」ということだろう。
これを可能にするのが加法定理である。
加法定理も詳しい説明はさまざまなところであるので省略するがイメージだけ紹介しておく。
あとがき的なやつ
実は今回は私が授業で紹介する前提でこれを作ったということもあり、言葉足らずの点も多くある。そこは実際に授業してみて補足として付け足していきたい。
三角関数は難しい概念で、しばしば「三角関数は不要だ!」と述べる人もいる。たしかにある意味ではそれは正しいと思う。しかしながら三角関数を知らないと理系の学部では厳しいところも多い。
いやいや、わたしは文系でそんなことは関係ないという気持ちもわかる。というのもわたしも古典が嫌いで不要だと思っていたから。だが大学に入っていろんな本を読んだりすると、古典をさぼってしまったから読む本の選択肢が減っていることに気付いた。「いやと逃げてしまうことは簡単だが視野が狭まってしまうんだ」と痛感した。だから嫌と思わず頑張って向き合ってほしい。
さらに三角関数は議論の自然な拡張の仕方を教えてくれる。
三角比だけでは表せない問題にどう対処するかについて、できるだけ三角比の持っている良い性質を残して考えられるか。
こういったことは数学を学ぶ上ではもちろん、ほかの分野でも役に立つことだと思う。だから計算方法は忘れてしまっても、公式を忘れてしまってもいい。でも議論の拡張の意味を自分なりに理解しておくということが大切ではないかと思う。
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