一次元単純対称乱歩とm=m+1

突然ですがm=m+1を解いてください。

え、そんなの簡単だ。mを移項して0=1となるから解はない!

はい。その通りです。確かに実数解は持ちません。もちろん複素解も。

ではm=∞と思うとどうでしょうか?
まあ確かに∞なら意味は通りそうだけど、、
でもそんなことを考える瞬間があるの?

これもごもっともです。
そこでこんなことを考えてみましょう。
Zを整数全体の集合とする。

ここでいう一次元単純対称乱歩とは
Zにおいて最初0にいる点が1秒ごとに1/2で+1、1/2で-1に進むことを繰り返すことである。

この時に1にたどり着く時間の期待値を求める問題を考える。
いやいや、0から始まるから隣なんだよ?
そんなの数回とかになるでしょ!
と言いたい気持ちはあるが、実はこの期待値をmとおくとm=m+1が出てくる。

つまり隣に行くだけでも平均して∞秒かかるわけだ。

ということでまず前半で言いたかったことは
x=x+1は実数解などを考えているだけでは当然解なし。でも拡張すれば解を持つことはある。
よくネットなどで数学ではこの式は間違いだが、プログラミングなら正しい。みたいな記事を見るのだが、別に数学でも間違いではない。(∞を許せばだが、)

では一次元単純対称乱歩は再帰的であるのかを調べよう。また再帰的なら零再帰的であるかも調べたい。

ここで言葉の説明をすると、Tを0へ戻る時間として
∞回0に戻ってくるなら再帰的、特にTの期待値が∞なら零再帰的

さて、実はこれは正しいことが知られている。
証明は(めんどくさいので)省略する。

ちなみにもし対称でない場合。つまり+1するのが1/2でなく、-1されるのも1/2でないとき。
この時は過渡的(つまり有限回だけ0に戻る)となるのも面白い。

またZ^dを考える。
このときに単純対称乱歩を考えて、いつまで再帰的で、いつから過渡的になるのか?ということも興味深い。

結論だけ書くと2まで再帰的で3から過渡的になる。
つまり酔っ払いが単純対称乱歩をしていると仮定すると、2次元なら今いる場所に帰ってくることができるが、それ以上の次元だと帰ってこれない可能性があるということ。

こちらはストレートに示すこともできるし、stirlingの公式を使っても示せる。
ちなみに証明だけなら測度論は全く使う必要はないです。

ただしTaylor展開などは出てくるので高校生だと難しいかな。

後半で言いたかったことは
乱歩って不思議だな〜ということ。

あとがき的な

数学において∞が絡むと碌でもないのは言うまでもない。そしてある意味今回もそうではないかと思う。
そしてこの記事ではめんどくさい議論を直感的に書いてあるから厳密性は...
ただしっかりと証明してください。と言われたら別にできるけどnote上で書くのはめんどくさいな...と思う。
からぜひ調べたりしてみてください。
ポイントは1次元単純対称乱歩の方は
$${f_n=P(T=n),u_n=P(S_n=0)}$$として、母関数などを考えて、関数等式を立てればオッケー。
ただしここでの$${S_n}$$はn秒のときにどこにいるかを表す。
2までが再帰的、3からが過渡的の方はさっきも出てきたstirlingの公式を使うか、ストレートに示すか。こちらはめんどくさいので省略。

まあそんなこんなところで、
とりあえず乱歩というありふれたものを考えるとm=m+1なんて不思議な式が出てくる。
そしてなんと隣にいくのに平均∞秒かかる。
そんな不思議なことが起こる。
でした!

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