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ようこそアリカツ(蟻の飼育活動)     ⑨ クロオオアリのお世話

 たった一匹で巣を定め、子育てを始めたクロオオアリの女王。女王アリは働き蟻が生まれるまで、ほぼ飲まず食わずで子育てをします。働きアリが生まれると仕事を分業し、巣のアリ全員で力を合わせて集団(コロニー)を成長させます。巣の中の掃除、身の回りの世話や餌を取ってくるのは働きアリ。女王は次第に卵を産むことだけに集中し始めます。ただ、今まで観察した経験では、アリのコロニーの活動が活発になるのは2年目以降で、1年目は個体にもよりますが、ほぼ巣の中にこもっていることが多いです。ごくたまに、ゴミ捨てと餌をとりに、働きアリが巣の外に出てきます。小瓶で飼育する場合は、大体1箇所に固まって生活し、たまに働きアリが瓶の中を歩き回ります。

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 働き蟻が生まれたら、アリに餌を与えましょう。餌の小皿にのせて、ピンセットで箱の中に置きます。匂いですぐに餌をとりにくる場合もありますし、まだアリが少ない時は我々がいない間にいつの間にか食べに来ている場合も多いので、餌が減っているかや巣に持ち帰られているかに気を配ります。

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 筆者はクロオオアリに、メイプルシロップやガムシロップを倍程度に薄めたもの、死にかけた蚊や蠅、小さな芋虫やクモなどの小昆虫、味のついていない貝やイカ、カニ、ひき肉のかけら、甘い果物のかけらなどを毎回変えて、3〜4日に一度程度与えています。液体の餌は、飲みきれなくなるとアリがゴミを入れるので、何回か餌をやると与える量の目安がわかります。基本的にはとても少ないです。固形の餌はなるべく小さくし、アリが運べるようにするといいようです。餌を巣に持ち帰る、アリらしい光景を見ることができます。これも、段々と食べる量に見当がつくようになります。24時間経っても残っているものは、カビや腐敗の原因になりますので、撤去します。

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 上の写真のアリの飼育ケースの左下の角に、黒い粒々が落ちているのが見えると思います。これは、アリが巣から持ち出したゴミです。クロオオアリは、巣の中の食べ残しやさなぎの抜け殻、排泄物などの不用品を、飼育ケースの巣の入り口からなるべく遠いところ1箇所をゴミ捨て場に定め、廃棄します。まだ利用価値のあるものは、アリたちが巣の中でキープしています。大きなゴミは、餌やりのついでにピンセットで撤去してやるといいと思います。でもゴミ捨て場として多少残っていても問題ないようです。ゴミ捨て場担当のアリがその場を守っていることもあります。

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 クロオオアリの世話は基本的にはこの繰り返しで、後は保湿に気を配り、適宜給水します。石膏やスポンジの水の含み具合を、色やガラスの曇りの程度で見計います。飼育ケースは安定したところに置いて、日々アリの成長具合を見守りましょう。何を食べるか、幼虫やサナギはどの程度大きくなるかなど、研究のネタもいくらでもあります。眺めていると親近感が湧いてきて、アリの動きの一つ一つ、成長の進展に一喜一憂できることでしょう。

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 10月くらいになると次第にクロオオアリの幼虫の成長は止まり、数の増加が鈍ってきます。そして11月後半から12月の上旬くらいになったら、冬ごもりに入ります。家の中で一番寒くて気温が安定した場所や日陰のベランダ、家の裏など、大体気温10度以下をキープできる場所に薄暗くして置きます。アリたちは巣の中でぎっしりとかたまって、春までほぼ飲まず食わずに過ごします。幼虫も卵も成長が止まったまま、冬を越します。保湿に十分気をつければ、冬ごもり中のクロオオアリは、基本的に餌はやらなくても大丈夫なようです。以前筆者はクロオオアリ20家族を冬ごもりさせたことがあり、スポンジへの加水以外餌は一切与えませんでしたが、死んだ個体はいませんでした。

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3月中旬以降、気温が上がって来ると次第にかたまりがほぐれてアリが動き始めるので、餌やりを再開します。越冬した幼虫も成長を再開し、日々膨らんできます。そして、クロオオアリの新しい1年が始まり、巣の更なる拡大を目指します。

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