【架空現代人の日常】誰も信用しない利己主義者の日常①【超ショートショートまとめ】
先ほどまで理不尽な説教をしていたバイトリーダーが倒れた。
他のバイトたちが唖然とする中、比嘉冷射士は率先してバイトリーダーを介抱した。
最もバイトリーダーの被害を受けていた比嘉冷射士が助けたとあって、比嘉冷射士の職場での評判はうなぎ登り。
バイトリーダーからも感謝された。
〈比嘉冷射士のプロフィール〉
比嘉冷射士は
「俺がゲイだと知ってから家族がよそよそしくなったんです」
とゲイバーで話した。
すると片隅にいた1人のゲイが、
「辛い目に遭った分、人は誰かに優しくできるものよ」
と微笑んだ。
その後、比嘉冷射士はそのゲイに心を許し、
勧められるまま酒を飲んで昏睡し、レイプされた。
一人暮らしの高齢者宅に訪問し、孤独死していないか確認する仕事をしている。
痴呆になっている人が多く、中には俺を息子だと勘違いする人も。
そういう人に息子というテイで接すると、時には涙を流して喜ぶ。
この仕事はやりがいがある。
カモにできそうな高齢者のリストが作れるのだから。
眼前に老人が立った。
電車内に空いている席はない。
利己主義者は「譲れ」と絡まれる予感がしたので黙って立ち上がり、空いた席に座る老人を横目にドアの方に向かった。
老人に声をかけなかったのは「年寄り扱いするな」と言われかねないからだった。
一連の行動は、見返りを求めない点において図らずも完璧な親切だった。
ラジオを聴きながら夜道を散歩していると、
がなり声で「友達なんかいらないさ!金があればいい!」と聞こえてきた。
DJはエレファントカシマシの「デーデ」だと曲を紹介する。
(負け惜しみだな)
苦笑したが、ふと、自分はどうだろうかと考えた。
俺は金がほしい。
いや、人から騙し取りたい。
もしかして俺は「騙す」というコミュニケーションで寂しさを紛らわせようとしているのか?
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