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滅びゆく日本を憂う愛国者の日常③【超ショートショートまとめ】

(宇宙人が襲来すれば人類は1つになるかもしれない)

ふと、こういう考えが浮かんだ。

人間を結束させる最も手っ取り早い方法は、共通の敵を作ること。

人類には共通の敵がいないから、私たちは地球上の内戦をやめられないのではないか。

デマでも宇宙人はいると発信すれば、あるいは……。

実際に地球を襲ったとしたら、人類が英知を結集しても太刀打ちできない兵力を持つ宇宙人。

架空の現代人、温田馨(おんだ かおり)の日常を描いた超ショートショートのまとめです。
温田馨は外国人向けの国内観光ツアーの元ツアーガイドで、海外の人々から日本を褒められる内に、日本を愛するようになった女性です。
しかしコロナ禍によってリストラに遭い、補償の手薄さに愕然として日本が困窮していることを実感します。
詳しい経緯は〈温田馨のプロフィール〉にて。

冠鳥天狗より

〈温田馨のプロフィール〉


夢を諦めた男友達を慰めている内に、流れでホテルに来てしまった。

「私は平凡な幸せでいいと思うよ」

彼の頭を撫でながら言うと、ガラス片のような眼差しが私を貫いた。

「平凡な幸せって何だよ。俺たちは子供の頃から、
『夢を叶えて特別な人間になりなさい』って育てられてきたのに」


信号待ちしている雑踏の中に、地面に寝そべる初老の女性がいた。

皆は女性から距離を取って、点滅している信号機を祈るように見ている。

女性は寝間着のような恰好をしている。

痴呆なのかもと思ったとき、信号が青になった。

私は人波に押されるまま安全圏に向かって歩き出してしまった。

まだ『平和』だった頃の横断歩道前の様子。

帰国して空港のトイレに入ったとき、私は日本のトイレの素晴らしさを再認識した。

世界には先進国であっても紙を一緒に流せない国が沢山ある。

そういう国では便座の近くにあるゴミ箱に使い終わった紙を捨てるのだ。

その光景と臭気を思い出したとき、私は便座の温かさに泣きそうになった。

用を足した後もしばらく眺めてしまった清潔な便器。

日本における『愛国』という言葉の初出は日本書紀で、当時の意味は『故郷を懐かしむ』です。
国に愛着や忠誠を尽くす意味の『愛国』は、国際社会を強く意識するようになった明治前期から日本国内で使われるようになりました。
参考:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%84%9B%E5%9B%BD%E5%BF%83

「愛国者」に関するメモ

温田馨の日本人としての自意識が敏感だったのは、アメリカへの出稼ぎに行った当初の間だけだった。

現地の日雇い労働者達は温田馨の国籍について一切の興味を持たず、一瞥して『アジア人』という巨大なカテゴリーに放り込んだ。

温田馨は大衆に溶け込む安堵と共に、少しの寂しさを覚えた。


読んでいただきありがとうございました。
日本人が海外の人々に褒められるまでもなく日本に誇りを持てますように。

冠鳥天狗より

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