滅びゆく日本を憂う愛国者の日常③【超ショートショートまとめ】
(宇宙人が襲来すれば人類は1つになるかもしれない)
ふと、こういう考えが浮かんだ。
人間を結束させる最も手っ取り早い方法は、共通の敵を作ること。
人類には共通の敵がいないから、私たちは地球上の内戦をやめられないのではないか。
デマでも宇宙人はいると発信すれば、あるいは……。
〈温田馨のプロフィール〉
夢を諦めた男友達を慰めている内に、流れでホテルに来てしまった。
「私は平凡な幸せでいいと思うよ」
彼の頭を撫でながら言うと、ガラス片のような眼差しが私を貫いた。
「平凡な幸せって何だよ。俺たちは子供の頃から、
『夢を叶えて特別な人間になりなさい』って育てられてきたのに」
信号待ちしている雑踏の中に、地面に寝そべる初老の女性がいた。
皆は女性から距離を取って、点滅している信号機を祈るように見ている。
女性は寝間着のような恰好をしている。
痴呆なのかもと思ったとき、信号が青になった。
私は人波に押されるまま安全圏に向かって歩き出してしまった。
帰国して空港のトイレに入ったとき、私は日本のトイレの素晴らしさを再認識した。
世界には先進国であっても紙を一緒に流せない国が沢山ある。
そういう国では便座の近くにあるゴミ箱に使い終わった紙を捨てるのだ。
その光景と臭気を思い出したとき、私は便座の温かさに泣きそうになった。
温田馨の日本人としての自意識が敏感だったのは、アメリカへの出稼ぎに行った当初の間だけだった。
現地の日雇い労働者達は温田馨の国籍について一切の興味を持たず、一瞥して『アジア人』という巨大なカテゴリーに放り込んだ。
温田馨は大衆に溶け込む安堵と共に、少しの寂しさを覚えた。
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