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滅びゆく日本を憂う愛国者の日常②【超ショートショートまとめ】

Xに、
「日本再興には国民の可処分所得の増加が重要。
消費が増える
→企業の収益が増える
→従業員の給料が増える
→消費が増える
この好循環が起これば、政府が消費税などで得られる税収が増加。
税率を上げることは国民の消費を妨げるため逆効果だ」
と入力しているとき、勢いでマニキュアが剥がれた。

投稿後「スキ」がつかなくて溜息を吐きながらスマホの電源を落とす。

架空の現代人、温田馨(おんだ かおり)の日常を描いた超ショートショートのまとめです。
温田馨は外国人向けの国内観光ツアーの元ツアーガイドで、海外の人々から日本を褒められる内に、日本を愛するようになった女性です。
しかしコロナ禍によってリストラに遭い、補償の手薄さに愕然として日本が困窮していることを実感します。
詳しい経緯は〈温田馨のプロフィール〉にて。

冠鳥天狗より

〈温田馨のプロフィール〉


海外への出稼ぎ中。
パーティーに誘われ、張り切って着物をレンタルした。
しかし出かける直前になって私は気づいた。
私は普段着物を着ないのに、
外国人の中で日本人というポジションに甘んじるためだけに日本の文化を利用しようとしている。
私は位置を調節していたかんざしを引き抜いた。

さっきまで見返り美人風のポーズを取って映していた鏡。

日本人が食べる穀物が危機に瀕している。
2018年に米・麦類・大豆の優良な種の選別と販売を公的機関に義務付ける種子法が廃止され、農家は新たに施行された種苗法によって毎年民間企業から種を買い入れている。
現状、値段は高く安全性は疑問視されている。
考えるだけで米の味がしない。

(最も大切な食の危機に自分は何もできない)と悔しがりながら、梅干を置こうとしている茶碗の白米。

ある未来では、温田馨は晩年に海外の種苗企業の上役になり、日本の農家に安価で高品質な種苗を販売。
最期は他の企業の種苗に健康を害された日本人に勘違いで襲われ、死んで骨だけになりました。

冠鳥天狗より

月の模様は、地球のどこから見ても同じ形をしている。
しかし日本では餅をつく兎、アメリカの一部ではロバ、中国の一部ではヒキガエルの上半身、という具合に、地域によって解釈が異なるらしい。
解釈の違いは解消しようがなく、時には国家間、民族間の深い溝となり、戦争の火種にさえなる。

果たして、私たち人類に分かり合える日は来るのだろうか?と物思いにふけりながら見上げる月。

ホームセンターで買ってきた板に私の血がついた。
お金がないからと調味料を入れる棚を手作りしようと思ったのが間違いだったらしい。
血が滲む指を睨みながら、
(まともな経済政策しない政治家にもこの痛みを…)と唇を噛む。
しかし、すぐに空しい気持ちになって私は絆創膏を探し始めた。

血の跡を花の模様みたいにできないかと前向きに考えたが、それもそれで空しい気持ちになった。

読んでいただきありがとうございました。
日本人が海外の人々に褒められるまでもなく日本に誇りを持てますように。

冠鳥天狗より


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