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地球上の一秒

地球上の一秒を切り取って繋ぎ合わせたら

一体どんな物語ができあがるのだろうか

目の前に弾丸が迫り来る子ども
赤ん坊を抱きかかえた母親の上に降り注ぐ鉄の雨
恋人とキスをする前に閉じた瞼
恋人とキスを終えた後に見つめる恋人の顔
生まれてきた赤ん坊
不慮の死でなくなった大切な人の顔
何気ない街の何気ない歩道橋からの景色
病院のベッドのうえで見つめる点滴のチューブ
パソコンのモニターに映る業務用のシステムと数字
テレビに映る政治家やタレントの顔
父親の顔、母親の顔
襲ってくる男たち
兄弟の笑顔
ケンカ中のねーちゃんのムカつく顔
布団の上に放り投げたスマホ
机の上の錠剤の山
特に友達でもない奴と路上で騒ぐ若者
寂しさを埋め合うように抱き合う夜
少し小さめのまな板からはみ出したキャベツ
初めてみたエッフェル塔
ホテルのディナー
街中華とおやじ
ダイビングして初めてみる熱帯の海とサンゴ礁
こめかみに突き付けた銃
地上40mの屋上から見下ろす駐車場
駅のホームから見下ろすぼやけた線路
線香と仏壇
優しかったばあちゃんの顔
石油ストーブ
買い替えようと思ってた扇風機
いつもの窓から見える風景
枯らしたダメにした観葉植物
積み上げた本の山
年金や税金の知らせの紙
処方箋
エレベーター
いつもの通勤路
コンビニのレジのお気に入りの子
ドキッとした同僚の指先
デカい山
広い海
キャベツ畑
会議室
国際線ターミナル
国内線ターミナル
お土産屋さん
部活帰りの夕日、帰りがけに寄ったマック
安楽死前、最後にみる家族の顔
山のように積み上がった札束
破った馬券
埃をかぶったままの機材
もう気なくなったけど捨てられない服
工場
レーン
ムカつく上司とか殺してやりたい同僚の顔
デカいビル群
ホームレスの段ボール
歓楽街のネオンとキャッチ
ガールズバーの客引き
ミラーボール
男子トイレで潰れてる女の子とゲロ

美醜
生と死
汚れてよかったのは
汚れたやつの気持ちがわかるのと
SEXできるようになったこと

人間は決して綺麗じゃない
でも美しい

希望を持つたびに
叩き潰される

景色はいつも変わらない
螺旋階段のように
高さだけは少しずつ

どれも間違いで
どれも正解で
いずれ死ぬ

生まれてきたばかりの赤ん坊が見る眩しい光と
旅たちに向かう人のぼんやりした暗闇

色とりどりの美しいこの星の中で見る
毎日味気ない同じような風景と一日

全てだれかの1秒
地球上の80億人の一秒

この記事は、僕が常々座右の銘のように唱えている
「人と人とは誤解の関係」をうまく示していると
自画自賛している

僕は人から美しく塗られることもあれば
そう美しくなく塗られることもあるだろう
自由にすればいい
僕だって他人に同じことをしているのだから

だからみんなが見える世界はみんなが好きなように
色を塗った世界で、それであるからこそ美しい万華鏡のような
そういう世界だ。

見たいように見ればいい
生きたいように生きればいい
いずれ死ぬのだから

今の妻じゃなければ
寝られるだけ世界中の女性と寝てみたかったなと思う

結婚していなければ、好きな時に好きなだけ
色々なところに出向いたり、気分で海外に遊びに行っていたと思う

絆は美しすぎる鎖で
僕は繋がれていることに安心するし
それがとても愛おしい

随分と迷惑をかけてきた

僕は浮気をしたことがない
結婚後は勿論のこと
独身時代もそう

でも器用にやってる人はやってるし
そういう人ほど、ちゃんと落ち着いていると思う
あ、偏見ですよ僕の

どうでもいいの

本音と建て前
嘘も方便

人や国や地域や家族によって違う価値観

地球の一秒

人を殺す瞬間
手術をしている医師の目
メスを入れる瞬間
同時に起こっている

誰かがもう終わりだと頭を抱えているときに
誰かは誰かの言葉で明日への希望を見出している

忘れられない恋人は
今の伴侶と幸せな家庭を築いているかもしれない

僕が大事にしている本を
誰かが火をつけて燃やしている

今日の昼ご飯をどう節約しようかと考えているとき
来賓のためにどれだけ豪華な食事にすればいいか悩んでいる人がいる

生まれてしまった
そこから始まった
一秒
沢山の
一秒

電車のホームをわき目もふらず
駆け上がる学生

デリヘル、ピンサロ、イメクラ、SM
会社、オフィス、会議室、上司部下同僚

深夜のコンビニの上下スエットのヤンキーっぽい女の子
表参道で見るウェットなボブの色数を絞ってコーデした
華奢な女の子

思ってたより冷たい対応をしてきた芸能人
思ってたより熱く真摯に質問に答えてくれた売れっ子俳優

clubのメインフロアから外に出て
扉を隔てたところで聞こえてくる重低音

吸い殻だらけの灰皿
人だらけのバーカン
夜のライムの香り
ちゃっかり持ち帰ってる友達
明け方の白けた空を一人で眺める始発前

正しいとかキレイとかきたねーとか
そんなこんなが一切合切綯い交ぜになって
人々の営み地球の一秒

本の同じところを何度も読み返す
古本の誰かのメモ
挟まったレシート
安い居酒屋
デカいハイボール
生中
ウーロン茶
山のような唐揚げ

もう、オフィスなんか行きたくねぇなぁ
もし新しい職場が見つかったら
かわいい子いるといいな
男と女どっちの比率が高いほうがいいだろう

話通じんのかな

グルジェフという昔の賢人が言っていたそうだが
人間は機械なんだと

そうだよ、おれはまた機械に戻るんだ
それも地球の一秒
俺の一生

それで良いんだ
今日も明日も明後日も
この地球は、この星は何もきにすることなく
回り続けるんだろう
その一秒一秒を折り重ねてゆきながら
やがて彼女自身が終わりを迎えるその時まで

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