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診察待ち

 いつもの事だが、大病院の待ち時間の長いこと。
半日掛かって、やっと診察。
痛くてたまらない時や、緊急に診てもらいたい時は、どうにかならないものか。受付けで伝えているものの、頑なに順番は変わらない。
じっと待つしかない。
 子供が、よちよち歩きの小さかった頃。
 夕食後、腕が痒くなる。しばらくすると足まで痒くなる。
気にせずに、そのままテレビを見ていた。
どうやら、テレビを見ながらも、無意識に身体を掻いていたのだろう。奥様が怪訝そうに、
「どうかしたの」
聞かれてよく見ると手、足、腕、いたる所が蚊に刺されたように、皮膚が盛り上がってケロイドのようになっている。着ている服を脱いでみると、
「ギャ〜」
奥様が叫く。
「ど、どうしたの、そのからだ!早く病院に行って。子供にでも感染ったらどうするの!」
 身体の変調より、奥様の声に圧倒され急いで病院に行く。
既に、時間は夜の11時。
夜間救急病院しかないが、真夜中だというのに人はやたら多い。
 2時間位待ったろうか、待合室でウトウトしていると、ようやく名前を呼ばれ診察室に入った。
 医者が、
「どうしたの?」
と聞く。身体を見せようと腕のシャツをまくる。
 が、無い!
次に、足を見せようと今度はズボンをまくる。
 が、ここにもあの皮膚が盛り上がったケロイドは、無い。
急いで服も脱いでみるが、若干赤みを帯びているものの綺麗なもんだ!
「で?」
と医者。
あわてて手の平で、身体を叩いてみるが、出てくるわけがない。
 実は、カクカクシカジカと説明すると、
「じんましんだね。折角来たんだから注射を打って帰りなさい」
「あのう、子供には感染らないですかね?」
と、本日一番の免罪符を貰うために問うた。
すると、
「う〜ん、長いこと医者をしているが、じんましんが人に感染るということは、聞いたことがないね」
とっさに鬼の顔が浮かんだ!


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