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夏の思い出

 孫がラジオのインタビューに出てたでと連絡があった。
早速radikoで聴く。
TVだけでなく、ラジオでも聞き逃しても聞けるんや!まあ!便利。
 この夏休みに何をしたかという質問に50名位の児童が一斉に手を上げる。その中から一番に選ばれたのが、小学一年生の孫娘だった。
「多分、一番可愛いかったからじゃない」
と奥様がしゃあしゃあと平気で言う。
『ま、確かにそうやろうけど、、』

「お名前は何ですか?」
「みなみえ りあです!」
いつもの声で元気に答える。
なんか、こっちが緊張するやないかい。何を話すんだろう。
「夏休みの一番の思い出は何ですか?」
「はい。ジイジとバアバの家で花火をしたことです!」

え?それ?!
ダ◯ソーで300円で買った、ほとんどが線香花火であった。
決して豪華な花火がいくつもあったわけじゃない。
こんなんで喜んでいたんだ。

海外旅行でも、キャンプでも、海水浴でもない。


300円の線香花火が夏の思い出やて!



 そこで、
と言っちゃあなんだが、孫達と〇〇レジャーランドに行った。

 昔、子供達を連れてきた懐かしい夏の思い出のある場所である。
しかし何十年ぶりとあってほとんど覚えていない。
ただ遠い道のりを車でやって来て、えらい長いエスカレーターに乗った事しか記憶にない。

 当時は忙しく動き回る子供の後ろを、平気で追いかけていたのだろうと、孫の後を追う親となった息子達の姿を見て懐かしむ。

楽になったもんだ。
ただ、今は付いて行くだけで、こっちは息が切れている。

子供用ジェットコースター、メリーゴーランド、観覧車等、定番乗り物に孫と一緒に乗る。
若かった頃は刺激の強い乗り物に進んで乗った。今は心臓にも優しいゆっくりと楽しめる方がいい。

 4人乗りのゴンドラに乗る。
魔法の国へ空飛ぶゴンドラに乗って旅する設定だろうか。
 乗る前の説明がブラウン管のTVから流れ、年代ものなのか、かなり砂嵐で乱れている。
 ゴンドラには一組づつ乗るのだが、何故か一つとばしにしか係員が乗せない。どうして続けて乗せない。
結構待っている客は多いのに。
よく見ればゴンドラ自体を外してある箇所もある。
確かに年期ものではある。
乗り込むと、一応テーマごとにエリアが分かれているが、継ぎはぎ感は拭えない。
大きな人形の背景は色がハゲ、照明も一部消えてる。効果音も途切れたり、急に大音声になる。
 夢の国が現実の世界に戻りかけているようだ。
 このゴンドラは、4本の支柱で吊り下げられており、そのうち目の前にある支柱の1本には、補修用ビニールテープが巻かれている。
カーブを曲がる度にギシギシと音を立てる。
別の意味でスリルとサスペンスを感じる。
しかし、小さな孫達はそんなことは気にもせず、目を見張り大声を出して実に楽しそうだ。

 入場料はメジャーな遊園地と変わらない。
乗り物は乗り放題だが、点検中で休止しているものも結構ある。
 点検作業をしている係員など全く見えない。
決して壊れて動かないんじゃなく、点検作業をちょっとだけ休憩しているんだろう。たぶん、、、
 子供の数も少なくなっているし、経営も大変なのだろうと、逆に心配になる。

 が、物は高い。
途中、飲物を買って一休みする。
なんとカキ氷一杯が千円には驚いた。
喫茶店で注文する、フルーツに生クリームが乗っかった、きめ細かいフラッペではない。
 紙コップの氷にイチゴのシロップが乗っかっただけである。
その上、現金のみときた。
 ここは専属の支払い係担当となっている自分の財布を見る。
先程食べた昼食も現金のみだったがATMなど見当たらない。
せめて◯◯Payで払わせろや!
 ここの夢の国は、上限の無いカードも、顔パスも使えるような俗世を忘れさせる国では無かった。
 しっかりと現金だけがまかり通るおとぎの世界であった。

 夜中の12時までに帰らないと馬車がカボチャになってはいけないので、いや、レンタカー代が高くなってはいけないので今日中に車で帰る。
 残念ながら、夜空に舞う大花火を見ること無く、おとぎの国を後にした。

 折角の花火が見れず、ごめんねと孫達に言うと、
「ジイジ、この〇〇を買ってくれてありがとう」
と、うさぎのかぶり物を得意げに見せる。
更に、
「花火はおうちに帰ってすればいいから」
と言ってくれる。

ええなあ、何も心配せず300円の花火で純粋に喜んでくれている。
そんな無垢な気持ちをとうの昔に忘れて、高い料金や気に食わぬサービスばかりに、ぐちぐち文句を言ってる哀れなおっさんが、わてや。

横で奥様が
「あんたも、もう直ぐここにきたら孫と同じように何も気にせず笑うようになるわ」
「どういう意味や?」
「ボケて認知症になるのも時間の問題やろ」

そうか、今度来る時は、なんも気にせず孫と一緒に楽しめるか!


ボケていくのも悪いことばかりじゃないのかもしれない。



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