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目の前で神隠し!

 交差点の歩道用信号機が点滅し終わり赤色となった。
同じ方向の車両用信号機は、まだ青色のまま。
歩道で立ち止まる。

 と、歩いてきた同じ方向から来た大型乗合バスが、左折し目の前を通り過ぎようとした。
 そこへ、同じ歩道を後ろから走ってきた女子学生の自転車が、猛然とスピードを上げ横断歩道に突っ込んでくる。
歩道用の信号機が既に赤色で、目の前にバスがいるのに、何故突っ込む!

「あ〜!」
という間もなく、当然の如く、
ガッシャーン!!
哀れ自転車は、ぶつかった衝撃でグシャリと横転している。
バスは急停車!
しかし、乗っていた学生がいない!?
まさに忽然と消えた!

バスの運転手が、慌てて降りてくる。
ぶつかった自転車は、無残に横たわり後輪だけが不規則な音をたてて回り続けている。
しかし、乗っていた女子学生がどこにもいない!
『えええ?どこいった?』
神隠し?
それとも、目の前で人が忽然と消える映画か手品でも、観てるのか。
はじき飛ばされたのかと目を擦って周りを見るが、いない。

 すると、何と!女子学生がバスの前輪のタイヤハウスから、ゴソゴソと這い出てくるではないか!
丁度バスが曲がろうとハンドルを左に切ったので、タイヤとタイヤハウスに隙間ができ、身体ごときれいにスポッと入ったらしい。

出てきた女子学生は、流血した様子もなく、大した怪我も無さそうだった。
「大丈夫?」
と聞く運転手に、女子高生は恥ずかしそうに、
「はい」
と答えた。
『そりゃあ、赤信号で突っ込むお前が悪い!が、まあ幸い大したこと無くて良かった』
と呆然と見てるこっちも、ホッと胸を撫で下ろした。

衝突した時に、バスが即止まったままで、ハンドルを切り返ししていなかったのが幸いしたのだろう。

運転手が、無事な女子学生を見て、一言
「じゃあ、ええかね?」
と、女子学生に聞き、そのままバスに乗ろうとする。
『ん?それで終わり?』

おまえも神隠しになろうとするんかい?!

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