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弘法筆を選ばず

 年から年中、ランドセルを売り出している。そんなに売れるの?
聞くところによると受注生産だという。オーダーメードも分かるが、ウエディングドレスでもあるまいし、サイズもそんなに変わらんだろう。
強いて言えば色ぐらいか。
展示品を見てみると、軽く20色はある。昔は男の子が黒、女の子が赤色と定番だった。今どき、色で決めつけるのはナンセンスではなく、差別だそうな。
 孫が小学校に入学するので、嬉しい祝い事の務めとして、ジジババが頼りにされる。
「ばあばがランドセル買ってくれるから、じいじは机を買ってね」
孫の海が話しかける。
「いいよ。でも海くんがパパママの言うこと聞かないと、欲しい机は買わないよ」
さすがに机を買っていないと、後で「成績が悪いのは、机が無いから勉強できなかった」
と言われては困るので買う。
 いや待てよ。我が息子は、高い机を買っても、ちっとも勉強をしてなかったことを思い出す。
歴史は繰り返すという文字が脳裏をよぎる。
「段ボールのミカン箱か、木のリンゴ箱でええんとちゃう?弘法は筆を選ばずと言うやないか!」
「あんた!そんなに孫に机を買ってやりたくないの!だからジジイは嫌われるのよ!」
『いや、冗談だから!ユーモアがわからん奴だな』
と言おうとすると、聞いていた海が
「僕はミカンよりリンゴが好きだから、ジイジ、リンゴの机でいいよ」
と言い出す。
なんとできた孫ではないか!涙が出てくる。(多分リンゴ箱がどんなものかは知らないはずだが・・・)
 翌週、勉強机を見に行く。
勿論、八百屋ではない、家具屋だ。 親が必死になって、アレでもない、コレでもないと言ってる隣で、孫といえば、机の上に置く恐竜のデスクマットに、目を輝かせて釘付けとなっている。机や椅子などまるで眼中にないようだ。
お〜い、リンゴ箱でええんとちゃうの?

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