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流行遅れ

 どちらかと言うと流行の先端をいっていた。
いや、むしろ好んで流行を追っていた。
服、車、食事、生活等々、まず、乗り遅れることはなかった。

 一年前、コロナが流行し、患者が急激に増え、病院はもとより隔離施設にも入れない状況だった。
 子供の家族もご多分に漏れず4人全員が感染した。幸い、重症化することなく10日間を自宅で過ごした。家が離れている我々は、買物をして届けるくらいだった。
 治療費は無料、家には食料品も無料で届られ、その間の会社も特別休暇となったらしい。
 更に、生命保険の給付対象にもなり、4人分で給付金40万円まで手にしたという。
 あれから一年。
 喉と頭がちょっと痛い。ほっておく。ちょっと身体がだるくなり、熱はないが一応、病院に行く。
「コロナ」
え?コロナ?今どき?流行遅れで自分一人が感染。幸い奥様はかからず一安心。
 会社に連絡し、念のため一週間休む。
「悪かったですね。以前は特別休暇をもらえたのですが、今は有給休暇をとってもらう必要があります」
まあ、仕方ない。
「念のため、会社を一週間休むから」
と奥様に報告すると、
「治療費もすべて有料、生命保険の給付金もでない。おまけに有給休暇を取れって?何で流行遅れのコロナなんかに今なるの!さっさと流行に乗らないからこんなことになるのよ。一体何してたの!」
『え?そこ言う?』
 二日後、流行遅れの患者が、また一人増えた。
 くしくも、郵便受けには、今年の生命保険料の請求書がしっかり届いていた。
 

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