『勝手にふるえてろ』綿矢りさ
綿矢りさの『パッキパキ北京』はものすごく面白い小説でした。他の小説も読んでみようと思い、近くの本屋さんで買ってきました。
主人公の女性に片想いの男と彼女に好意を寄せる男がいる、ほぼ3人だけの狭い世界です。でもじつは二人だけかもしれません。彼女と彼女に好意を夜よせる通称『ニ』しかいない世界。彼女の片思いの男『イチ』は実在しないかもしれない、読み進めるとそう考えるほうがしっくりくると感じました。
彼女の妄想の中だけで生きているイチ。イチを『イチゴ』に例えているからであろうか、イチを忘れ去るために『賞味期限』という表現をあえて使っている。しかし、理想の男を簡単にあきらめきれない様子がひしひしと伝わってきます。『イチ』については良いことだけが思い浮かび、『ニ』に関しては悪いところばかりが目立ちます。実際、小説のなかの『ニ』は家父長制にどっぷりつかった、よくいる体育会系の男として描かれています。
しかし、これ小説のトリックなのかもしれません。
妄想にどっぷりつかった主人公のヨタ話を、主人公のクズエピソードを笑いながら読んでいたのに。さいごのさいごでちょっと感動してしまった、『ニ』から『霧島くん』に変わるところで。
現実の恋人なんだからこちらの希望通りには動いたり話したりしてはくれない。彼には自分のすきなしぐさや優しさを持っている可能性がある。これが希望なんだろう。
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