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もっと自由にいこまいか♩

こんにちはものぐさ和裁師です^^

切っていいの?
本当に?

これは着物を仕立てる際に必ず立ちはだかる選択。
着物は一反の反物から、袖・身頃・衿・衽と、裁断して漸く形になりますから、鋏を入れる時慣れないうちはかなり緊張します。
なので自信を持って鋏をいれられる様に数をこなしていったり、様々な種類の着物を見て色彩感覚やバランス感覚を養うことが重要になってきます。

その中でも《袖丈》に鋏を入れる時には今だに疑問に思う事があります。

◯袖底の縫い代切る?切らない?問題

え?プロの和裁技能士なのに悩むの??
と疑問と不安感を与えてしまうかもしれませんね。そのお気持ちを払拭する為にも問題に対面していこうと思います^^

◯袖底の縫い代とは?

読んで字の如く、袖の底に縫い込まれていて見えない部分の縫い代の事です。

着物のお袖

その縫い代を切るか?切らないか?が焦点になっております。

◯通常のお袖丈

一般的なお袖丈は1尺3寸(約49㎝)となっております。その丈には必ず縫い込みが必要となってくるので、その縫い込みの量はと言いますと、基本的にはお袖丈に対して1寸5分の量を入れ込みますので、裁ち切り袖丈は1尺4寸5分が標準です。

日本和裁士会発行の『和服裁縫》より引用

むむむ?指定の袖丈が1尺3寸で。縫い代を1寸5分取ってハサミを入れる。
そこに何の疑問があるの???

はい。その疑問にお答えする前にまずは標準のお袖丈を書いていきますのでこちらをご覧ください。

袖丈
和服姿では、袖丈と羽織丈には、標準寸法はないといわれ、どの位にしたら美しく見えるかで決めるものである。流行により、長短をくりかえして現在にいたっている。
近年は、身長をもとにして、年齢、体型、用途、好みにより決める。
和服裁縫上より引用

上記の通り、基本的には標準寸法は無いとされるお袖丈。流行や前例にならって、周りの雰囲気に合わせて決めているといってところ。

現在今に至るまでに私が携わってきたお仕立て物の約99.9%の確率で1尺3寸に指定されてきました。(振袖は含まない)

○もっと自由に決めて良いのに・・・

もっと自由に決めてよいのに何故そろいもそろってこの丈を選ぶのか?僅かに疑問があるのです。

小紋や色無地の様な続き柄の反物では予め希望をお客様からいただいきましたらその通りに袖底へ縫い代を設けてハサミを入れます。

訪問着などの作家物で、既に各パーツ毎に裁ち切られた上で柄付けをされている品物に関しては指定の袖丈で縫い代は短くハサミを入れて良いと支持がある事が殆どです。

◯1尺3寸用以上の縫い込みがある場合

作家物や、一点物の着物などは1尺3寸ではなくてそれよりもずっと長めの1尺5寸の位置までで柄付けが成されていることが多い。

この写真の袖にある柄は、中心に寄っていてはんなりと控えめに表現されておりますが、ハサミを入れるかどうか躊躇されるのは、柄や色づかいが豊富で1尺3寸にしてしまっては少々半端に仕上がるのではないか?と思われる時。
半端どころか、金箔もふんだんに使用している品物もあるので「本当に切るよ?」と躊躇ってしまうところなのです。
この場合呉服屋さんに尋ねてもそのまま切って良し!となるパターンが殆どなのです。

ですが私個人の心の中では蟠りが溜まりに溜まって煮えたぎっているのですσ(^_^;)

作家さんが描いたイメージ、完成された着物。
そのイメージを袖丈がパツンと切れていることによって壊してしまうんじゃないか??

金箔などは上から縫ってしまうと跡が残ったり、その部分が剥げてしまうから慎重に袖丈選択をして欲しい。

作家さんや購入者はこの事を承知の上なのかしら?これを切ってしまうくらいなら、この長い袖丈に合わせた襦袢も作るよぉぉぉ。。と心の叫びを隠しきれないのです。

◯溜まった蟠りの解消法

呉服屋さんも種類が様々ありますので、厳しいお店にはいくら蟠りがあろうと、支持通りバッサリと切ってしまいます。

ですが、そうでない限り私個人的には長い縫い代を中に入れ込んだまま仕立てあげます。
それで丸くおさまるか?と言われればそうでもないのです。

袖底の縫い代が多いという事は、上手く留まっていないと、お袖にもたつきが生まれる可能性もありますし、縫い代が多すぎて重たくなってしまうこともあります。(ここはしっかりと留めますのでご心配なく)
振袖を着た経験のある方なら理解されるかと思いますが、縫い代が多いと着物が重くて肩が痛くなるという現実も考慮されてのこと。
なので、極力縫い代は短く省いてしまった方が軽くて動き易いので、短く切ることにも長く残しておく事にもメリットはあるのです。

◯私の出した答え

この袖丈切る?切らない?問題については悩んでおられる和裁士さんも多くいますし、また全く悩まずにじゃんじゃん切ると仰る方も居られます。どちらの意見も尊重されるべきだと思います。

その中で私が出した答えはと言いますと。

長い袖丈で着てみようじゃないか!

という至って単純な選択なのであります。
写真の久米島紬の袖丈はいくらにしてある様に見えますか?
また、この袖丈は人から見ておかしいと感じさせてしまう丈でしょうか?

作って着用してみた結果(まだまだこれからも続けますが)少々長くても全然良いじゃない!と感動したのであります。

長く取れるものは出来るだけギリギリの寸法で仕上げる。これを何度か繰り返して着ていますが、自分では全く変だとは思わない。

◯ここでお願いがあります

ものぐさを街で見掛けられましたら、その着姿のご感想をいただけると幸いです。辛辣なご意見や正直な気持ちを共有し合えたらそれ程嬉しいことはありません。

◯結局はいくらにしたんだい?

はい。写真の袖丈は1尺4寸にしてあります^^
身長が155㎝なので、一般的に考えると長めの選択。

だけど着ていると袖丈が長いことによって女性らしさが加わった様な感覚になるのです。
世の中はジェンダーフリーだとは言われますが、女性らしさをより強調していくジェンダーも合って良いと思います。

今の自分を最大限に楽しむ。
お母ちゃんでも、働いて時間がなくても、着物を着たいのに機会を作れなくても、年に一度の晴れ着でも。
最大限自分の魅力を引き出せる着物を楽しみたいですよね♩


そんな仕事に携わってきて本当に幸せだと感じます。
着物と日本文化を残してくださったご先祖様に感謝します。

以上ものぐさ和裁師でした🪡


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