夏着物の裄寸法について
こんにちはものぐさ和裁師です^^
今回は裄寸法について少し考えてみたいと思います。
◯着物に合わせた襦袢の裄寸法の決めかた
基本的な裄寸法割り出しは以下です。
❖ 《着物の裄−2分=襦袢の裄》
着物と襦袢とで肩幅はそろえ、袖幅のみで変化させます。
割り出し方は春夏秋冬どんな素材においても基本的には変わりません。
◯盛夏用の着物で見てみる
この度は自分用に夏結城の盛夏用着物と絽の長襦袢を仕立てました。
こちらの2点を上記通り着物−2分(約8㎜)に仕立てて裄の具合を確認してみました。
透ける盛夏用の着物では客観的に見てどの様に見えるのか?興味がありました^^
まずは袖振りからの見え方。
※トルソーさんに着付けたので動いている人間と若干の違いは生じますが参考にしてみることに。
肩幅は襦袢と同寸なので振り口では程よく収まっている様に見えます。
※お袖丈の合わせ方❖《襦袢の袖丈=着物−2分》の通例通りに仕立てています。
◯袖口からの見え方
袖口側からの様子をご覧ください。
袖幅-2分(約8㎜)の控えは二枚合わせるとこの様に見えます。
このままでも充分な着姿ですが2分の控えを1分5厘( 6㎜)に変えたらどうだろうか?
もう5厘ほど襦袢の袖幅を広くすることで、盛夏用の着物ならではの透け感が今よりも沿った表現が出来るのではないか?
たった5厘の違いでも仕上がりに影響することはあります。
透けない着物と透け感を楽しむ盛夏用の着物。
見た目を重視するなら襦袢との寸法の合わせ方は盛夏用の着物ならではの繊細さにもっとフューチャーしても良いと思う。
例えば、肩当てについてどう考えるか?
付けるか付けないか?で言うと、付けた方が良いでしょう。
大切な着物を丈夫に長く楽しむ為には肩当てを付けた方が長持ちする。
しかし盛夏用の着物となれば考慮する事が増え、透け感が目立つ襦袢と合わせると肩当ての形が丸っ切り表現されてしまう。
先の選択も繊細な着物を丈夫にする為の気配りの色気を感じますし、また反対に肩当てを付けないで透け感を最優先した仕立てにも繊細な気配りは感じる。
良い・悪いで白黒付けるのではなく。
着物を愛する1人として、それぞれの個性を持つ着物と向き合ってどう仕立てていくか。
お客様と和裁士とが一緒に考えながら仕立てに着手できると、着物生活が更に充実していけるんじゃないかなと感じています。
クレームではなくてお客様がお持ちの意見や感想などを今以上に共有できればいいな。
教科書にも当たり前として存在する裄寸法の控えの着装は変でもおかしいわけでもない。
ただもう少しだけ融通できるのではないか?
自分の着物だからこその挑戦ができるのではないか?と思う次第なのです。
こだわって挑戦し続けているからなのか、有り難いことに着物を着ているといつも褒めてもらえます。
流石和裁士さんやね!
自分で出来るっていいね!
褒められ着物を仕立てるのも和裁士の仕事。
時代がどんなに新しく変化していっても、日本には日本の風土で育ってきた価値観や素材・表現方法がある限りアイデンティティの根底は変わらないと思っています。
規矩作法守り尽くして
破るとも離るるとても元を忘るな
千利休の利休道歌の一説、お茶の世界だけでなく全ての物事に通じる言葉。基本の重要な考え方は全てご先祖様が提供してくれている。
過去を過去と切り捨てるのではなく、全力で受け止めて更に磨きをかけていきたいです。
以上ものぐさ和裁師でした🪡
ものぐさ和裁師は着物と和裁の振興に貢献したいと考えています。美しい着物を未来に残していくためにサポートをどうぞよろしくお願いいたします。