訪問着から羽織へ/仕立て直し例④
こんにちは、ものぐさ和裁師です^^
🍀今回はものぐさ私物で訪問着を羽織に仕立て直した事例紹介しています。
◯直し前の状態【訪問着】
初春に古着屋さんで衝動買いしてしまったのはこちらの訪問着。
縮緬地に金縁の花鞠が施されている
一つ紋の訪問着
シワこそありますが汚れが殆どなく、すこぶる良好な状態で購入することができました。
この訪問着を見た瞬間に羽織にしよう!と決めました(*´∀`*)
訪問着から羽織に仕立て直す事例はあるのですが、noteへ書き起こせていなかったために良い素材を探していたのでこの幸運に感謝です。
◯解いて縫製へ
⚫︎【解き】の作業に思うこと
着物は解いて繋げれば再び反物の状態に戻るという大きな利点を持っていますがこの【解く】という作業は地味に厄介になるのです。
縫い目が細かすぎたり、返し針が多く、解く際に布を傷つけてしまいそうになる物も沢山あります。繊細に配慮を行いながら一目一目解きを進めると、1時間はゆうに超え、時に2時間ほど要すこともあるのです(´;Д;`)
この忙しないご時世での2時間は大きいです。
ですのでお客様からは現在、解き賃として最低4,000円を頂戴しています⭕️
※解き+スジ消し+全体の折取りが大変なのです(*_*)
なので和服の仕立ては【解くこと】に配慮して仕立てなければならないのは言うまでもありません。
⚫︎縫製へ
羽織へ仕立て替えるために柄の配置を決めます。
襠の柄を決めて柄合わせを行います。
元が訪問着だったからこそ、少し高級感のある絵羽・羽織になるでしょう。
今回の様な特殊な仕立て替えは、仕立てる人によって仕上がりの雰囲気が変わってくるため、ご依頼の際は形にしたいイメージをしっかりと伝えられるのも良いかと思います。
⚫︎ツギハギ箇所
①裄が不足していたため、今回も裄足しを行なっています。
全体が無地に近いので、足し布のスジは見えます。しかしそれが嫌な感じを引き起こさせてしまうとは思いません。
裄不足のため袖口から着物が覗いたり、着用に躊躇してしまう未来が待っているかもと考えるなら、予め足し布をしてハギを行ってでも希望寸法を優先したい。
②衿のハギ
衿中心にハギを入れています。
こちらも着用時は目立たないので特に問題はないでしょう⭕️
◯完成図と意図
イメージ通り綺麗な羽織が完成しました(*^^*)
柄配置が訪問着と羽織とでは異なることがよくわかります。
何処にどんな柄を出すか?考える時間も楽しい。
先述通り今回の仕立ての目的の一つは
訪問着→羽織の事例を書き起こしておきたかったのが一つで、その他は大正年間に流行った長羽織を再現してみたかったから。というのも大きな理由でした。
著作権切れの素材はなかなか無いので、貼り付けられないのですが、羽織の下に着る着物が、足元から僅かに覗く程度の羽織丈。
長袖丈と組み合わせたその姿は、大正年間の好景気をいかにも表現していると言えるでしょう。
現代では勿論流行ってはいませんが、憧れの気持ちは常にあります(*´꒳`*)
着物にとってはある意味古き良き時代。
どんな時代でも良い物はいつまでも残っていく。その事を考えながらこれからも和裁士として精進を重ねていこうと思います。
ものぐさ和裁師でした🪡
※以下の有料部分は柄出し時の裁断写真を数枚公開していますが、自分用の保存が目的です。
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