ニワトリの喧嘩

A「おい、どうする?」
B「どうするとは?」
A「どっちが朝一番に鳴くかだよ。」
B「そっちが鳴いてくれよ。僕は嫌だよ。」
A「いや、今日は君が鳴きたまえ。私も嫌だ。」
B「なんでよ。いいよ。今日は鳴かない。」
A「何でだね。今日は君が鳴く番だ。」
B「なんでよ。めんどくさい。なんで人間のためにわざわざ鳴かなきゃいけないんだよ。」
A「それを言うなら私だって朝一番に鳴くなんてめんどくさい。」
B「あなたからはめんどくささは感じませんがね。」
A「ふざけないでくれ。めんどくさいオーラは充分に放ってるはずだ。」
B「全然かんじませーん。僕の方がめんどくさいオーラ放ってますよそれなら。ほら、現にもう3日も朝鳴いてないもん。」
A「そろそろ鳴いたっていいではないか。」
B「だから、嫌なんだって鳴くのは。だっていつも鳴くと隣の家のおばさんにうるせーって顔で見られるんだもん。」
A「あの人だって朝我々が鳴いてあげてるから起きれてるんだよ。」
B「違いますよ。最近人間達目覚まし時計とかいう奴作ったらしくて。鳴く必要ないんですって。」
A「君、それを口実に鳴かないようにしてるだろ。」
B「だってもう、人間のために鳴かなくていいって事じゃないか。」

しばらく、口論は続く

A「おい、そろそろ夜が明ける頃だぞ。どっちが朝一番のコケコッコ鳴くか決めるぞ。」
B「僕は鳴かないって。今日は本当にそんな気分じゃないんだ。」
A「私だってそんな気分じゃないさ。なんで、今日も鳴かなきゃいけないんだって。さっきから私は同じ事言ってるんだぞ。」
B「なんでよ、頼むって。」
A「いいかね、もうかれこれ3日も連続で私は鳴いてるんだぞ。そろそろ君の番だろうが。」
B「順番だなんて聞いてないぞ。だってここ3日間はそっちが鳴きたいって言うから譲ったんでしょうが。」
A「なんて嘘をつくんだね。4日も連続で鳴こうものなら飼い主のオヤジに、お?さてはコイツがリーダーだな?って思われかねないではないか。」
B「いや、僕がリーダーじゃないからあなたがリーダーでしょうよ。」
A「何で私がリーダーなんてやらなきゃいけないんだね。」
B「だってよく考えてみたらあなたの方が年上じゃないか。」
A「それを言うならあなたの方がこの家にやって来たのは早いではないか。」
B「鳥社会では先輩後輩は産まれた順だよ。」
A「そんなものは決まってない!」

このままではらちがあかないので

A「じゃあ、わかった。もうジャンケンで決めよう。」
B「嫌だね。」
A「なんでだね。」
B「だって負けたら鳴かなきゃいけないんでしょ?」
A「それはそうだろ。」
B「だったらやりませんよ。」
A「ジャンケンとはそういうものだろ!」
B「いいですか?今日は僕はノドの調子が悪いんだ。」
A「ノドの調子が悪い奴がそんな大声で口論なんてできる訳ないだろ。」

B「お、おい。さっきから隣のおばさんがこっちを睨んでるぞ。」
A「え?」
B「ほらあそこ。」
A「あ、本当だ。でも、まだ鳴いてないぞ?」

だが、ここまでの会話すべて人間にはこう聞こえていた。

A「コケ」
B「コ?」
A「コケココケ?」
B「コケコケコケコ」..........

                 終

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