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言葉

ここ数日、人と会う予定は全てキャンセルして
1人でインプットを続けていた。

人と会って気を遣いまくる私は
自分自身と向き合うために引きこもる。
アウトプットする自信がなくて
noteを書くこともできなかった。

昔見た映画を見返したり
好きな本を読み返したり…
すでにインプットしたものを再度インプットした。

環境を変えてインプットし直すと見え方が変わる。

岡本夏生著『子どもとことば』を読み返し、
児童養護施設に住み込みで実習に行った時のことを
思い返して、当時の実習録を読み返した。

当時はただただ目の前の子ども達とどうやったら信頼関係が築けるのか、どうやったら深く傷ついて閉ざされてしまった彼らの心を癒すことができるのか…
わからないから我武者羅に彼らの好きなことを見つけ出しては積極的に話しかけていた。

実習最終日に、ずっと甘えてくれなかった男児に
「だっこして」と言われた時は本当に嬉しかった。
保育園で言われたら、なんてことない言葉「だっこして」だが、言葉の重みが全く違う。
この一言を引き出すのに2週間。
朝から晩まで我武者羅に関わって、廊下に落ちていた糞尿に気付かずに素足で踏んだこともあった。
自室に戻って悔しくて泣いたり、悩みすぎてご飯が喉を通らないこともあった。
そんな2週間の自分自身の心の葛藤の記録。
子どもの些細な言動にどんなふうにその場の保育士が対応したか、それを見て当時の私がどう思ったか…
同じ私なのに、20年近く前の私が感じたことを現在の私が忘れてしまっている。

【初心忘れるべからず】
肝に銘じているこの言葉。
でもやはり、初心は忘れがちである。

当時の私は、この素晴らしい仕事を一生続けようと意気込んでいた。
子どもの言葉に心を突き刺されて
言葉の力を深く理解したつもりでいた。

言葉は人の心を癒す。
でも、時にはナイフのように人の心を傷つける。
口から出して形にしてしまう前に考えなさい。
自分の言葉に責任を持ちなさい。
そんな言葉を子ども達にかけ続けてきたから
自分の発言にも細心の注意を払ってきた。
ものすごく神経をすり減らしてきたんだと思う。

引きこもって誰に対しても責任を持たなくて良い環境で私は、愛猫と対話する。
言葉はいらない。
「そろそろお腹が空く頃でしょう?」
「今日は寒いね」
「あーーごめん!水がなかったね…」
全部心の中で思って、愛猫の背中をさする。

「やっと気づいたか!」と嫌な顔をされたり
「そうそう、今日は寒いよね」と気持ち良い顔をされたり…
時には「ミャーー!!」と不機嫌そうに怒られたり…

そもそも、猫は嫌いな人がいると姿さえ見せない。
隠れてしまって出てこない。

私が少し凹んでいると、やたらとスリスリして絡んでくるし、私がイライラしていると、近寄るのやめよ…とばかりに逃げて行く。

我が家の猫は、人に対して爪を立てることはない。
捨て猫として保護されて、保護してすぐに連れて行った病院で前歯を抜かれて犬歯を折られていることがわかったし、猫エイズということもわかった。
猫エイズはストレスに弱いから、避妊手術を予定より早めたら、すでに出産経験がある経産婦であったことが分かった。
病気はその時に移されたのだろう…子猫とは引き裂かれて…(子猫が無事であることを願っている)
そんな壮絶な猫生だったようだが、人は嫌いではないようである。
でも、苦手な人はいるようで、初めて会う人はかなり警戒している。
飢餓状態で保護されたから、食への執着はかなり強いが、食べ慣れたもの以外は食べないし、初めて会った人からは食べ慣れたものであっても食べるまでにかなり時間がかかる。

自分の命を守るために身につけた護身術のようなものなのだと私は理解している。

私の護身術は、ヘラヘラ笑って当たり障りのない言葉を発すること。
よく「癒し系」とか「馬鹿っぽい」とか、「落ち着きがない」とか言われる。

いきなり核心をついたような言葉を発すると
「ギャップがひどい」とか「騙された…」とか
「馬鹿だと思ったのに…」「意外と色々考えてるんだね…」とか言われて、その言葉に私は深く傷つくことになる。

身につけた護身術で、逆に傷つくならば護身はできていない…
でも、社会で生き抜くためには、ヘラヘラ笑ってやりたくないことも「はい!喜んで!」とやらねばならない時がある。
どこぞの居酒屋さんのような返事だか、仕事中の私はまさにこんな返事で、「NO」とは言わずに何でもやっていた。

神経をすり減らし、体力の限界まで働いて約20年。
コロナ後遺症から休職して4ヶ月。

アウトプットし続けた期間から
インプットに集中して、初心を思い出した。
でも、今はまだ子どもの前で笑って話せる気分ではない。
自分の言葉で誰かを傷つけてしまう不安しかない。
だから、あの時心に決めた保育の仕事を一生続けようという決意は、ひとまず保留にしたい。

また、やりたいと思える日がいつか来たら良いなとは思う。でも、今ではない。

言の葉。
【言霊】とも言われる。
気持ちに形を作るものだと私は理解している。
思っているだけでは伝わらないから言葉にして伝える。
その形は様々。
口に出して伝えるだけではない。
文字にして書き記す。
手話のように手の動きで伝えることもできる。

【目は口ほどに物を言う】と言われるように表情でも伝わる。猫はこれがうまい。

世界にはたくさんの言語が存在する。
日本語は難しいと言われるけれど、本当にそう思う。
英語はとてもシンプルだし、ローマ字と数字は世界中どこででも大抵伝わる。

世界の共通語は英語と言われるが
英語にだって地方によって方言のようなものがある。
英国の英語と米国の英語は少し言い回しや発音が違ったりする。
標準語が英国の英語、米国の英語は関西弁。
私はそんなふうに解釈している。
解釈の仕方も人それぞれなので
米国の英語が標準語と解釈している人が多いことも理解している。
受け取り方の解釈の仕方で良いと思う。
“同じ英語でも少し違う”ただこれだけが真実である。

「真実はいつもひとつ!」
名探偵コナンくんの名台詞。
そう真実はいつもひとつ!

今の私の真実は、“今はまだ元気に働けない…”
これを怠け者だと思う人もいる。
体が元気なら働けるでしょ?と思う人もいる。
確かに働けると思う。
でも、保育士はできない。
それが本音で、それが真実。

今は友だちの子どもにも会いたくない。
作り笑顔がバレるから…
言葉を口にしなくてもあからさまに嫌な顔して、本当に嫌なことされたらミャー!と叫んで猫パンチする猫といるのが1番心地よい。

インプットし直して感じたことをアウトプットして
自分の本音にやっと気がつけた気がする。

言葉を紡いでできた本。映画。音楽。
作り手の想いを想像しながら、インプットを続けようと思う。

アウトプットはインプットを繰り返したのちに…

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