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インド徒然日記04/GET ON THE BUS !

 インドに限った話ではないが旅における移動手段はバスに限ると思っている。ここインドにおいてはその昔イギリス植民地時代、東インド会社の痕跡としてだだっ広い国土に鉄道網が敷かれたおかげで鉄道での移動もかなり発達しているし、近年はLCCの参入により広い国土を飛行機に乗りひとっ飛びで安易にコスパ良く移動が可能となっている。でも、移動はバスに限るのである。バスは移動手段として一番時間はかかるし、インドの路面状況は決していいと言えないし、車内は暑いし寒いし音楽がガンガンに鳴り響きとにかくごった返してるし、長時間の移動でお尻や膝も痛くなるし。でも庶民の足として一番安く移動ができるし、ローカルの人や風土や色や味や匂いを一番満喫できると思っている。バスでの移動自体が自然と旅のメインになり得るのである。

人、音、モノ、匂いのるつぼ


 都市間を結ぶバス路線は国営,民営共に星の数ほど存在し、その都市間にある無数の町を通過する間にいちいち細かく停車していろんな登場人物が乗り降りしてくる。時にはバスの天井にヤギを乗せたり、どこまでも続く荒野で突然停車したかと思うと民族衣装の老婆が一人悠然と乗車してきたりと、なんでもありだし全てが映画のワンシーンのように感じるのだ。そして各都市には必ずバスターミナルが存在する。そこには無数のバスと人と動物とモノがぐちゃぐちゃに混じり合いまさに混沌という言葉がぴったりな様相を呈している。

ターミナルに到着
みんなどこからどこへ移動するのか、思い思いに時間を過ごすバスターミナル


 そんなインドのバスに乗り、移りゆく風景を埃で汚れた窓を手で拭き車内から眺めているだけで幸せな気分になれるのだ。ローカルの人でごった返した車内に突然現れたアジア人に対しては必ずと言っていいほどみんなが興味を示し、話しかけてくる。満席なのに旅人に座席を譲ってくれたり見たこともないフルーツやお菓子を振る舞ってくれたり、時にはどこまで行くのか?と聞いてきた人がいたかと思うと、その人は先に下車しても自然に車内で情報は伝達されていて、誰彼ともなく降りるタイミングを教えてくれるのだ。日本では何でもスマホで確認文化となってしまったが、インドではまだ『袖触れ合うも多少の縁』が生きている。

車窓からの風景
途中休憩のチャイ屋さん


 ここまでインドのバスについて書いてきて、ふと思い出したことがあった。約30年前二度目のインド旅行の際、首都デリーの外れにあるバスターミナルからホントにこれから12時間もかけて目的地まで辿り着けるのか?と疑ってしまうようなオンボロバスに乗り、北インドの山岳地域まで行ったことがある。出発してからしばらくはちょこちょこ停車しては客を拾い、しばらく走ったかと思うと都市のターミナルに到着し客が入れ替わりの繰り返し。途中パンクやらエンジントラブルやらで停車しては修理などで時間はどんどん経過するばかり。まだ二度目のインドで<インド時間>も身についていなかったし若かったせいもありだんだん不安とイライラが募ってくる。さらに長時間板張りの座席に座っているせいもありお尻も痛いし体調も芳しくない。そんな時、前席に座っていた白人のバックパッカーがイヤホンの片耳分を自分に手渡してきた。もちろん当時はスマホもないしかなり聴き込んだ決して音質がいいと言う訳ではないカセットの音。自分の耳に挿して聴こえてきたのは、ボブ・マーリー。🎵〜Everything gonna be alright〜♫ 身に覚えのあるリズムと歌声だが、後にも先にもこれほどまでに音楽に助けられ身に染みた歌声はない。
 その後何とか目的地に到着し、インドでは珍しい温泉に浸かりながら疲れを癒したのは忘れられない思い出だ。そんな、時に辛く厳しい経験も後々自分の良き体験に変わってしまうのもきっとバス旅の魅力に違いない。

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