見出し画像

監査は英語でAuditだけど。

皆さん、こんにちは! 共創したい監査チームの清水です。 
この4月に第1回を書き始めて、間もなく半年、次回で20回を迎えます。
ここまで読んでくださりありがとうございます。

初回のタイトルは「監は、鏡。」で、監査のネーミングの由来もお話し
しました。すなわち、明治23(1890)年公布のわが国商法に初登場して以来使われているもので、「監視」と「検査」を組み合わせた造語であり、監視は、物事を継続的・同時進行的に視ること(≒業務監査)で、検査は、物事の結果を事後的に調べること(≒会計監査)とされています。

元々は、明治政府に招かれたドイツ人作成の商法草案にあった「監視」と「検査」に携わる人を「監査役」と呼んだのは当時の日本人編纂者のアイ
デアで、ドイツ直輸入ではないということです。今でも、ドイツの会社には監査役会と日本語訳される組織(Aufsichtsrath = Supervisory Board)がありますが、わが国の監査役会と同じものではなく、130年前の制定時から、
仕組みも運用も別物でした。

では、この由緒ある造語の「監査」の英訳に、監視(Oversee)でも検査(Inspect)でもなく、Auditが当てられるようになったのは、なぜでしょうか?

ネット辞書をいくつか参照しましたが、監査とは、会社の会計記録が間違いないことを検査により確かめること、つまり、会計監査が最初に出てきます。それは、近代の会計監査が英国で発達したことと無関係ではないと筆者は推測します。

19世紀の中頃の英国では、株主総会で指名されたAuditor(監査人)が、決算書類を検査し、その結果を報告することが法で定められ、20世紀後半になって、全ての監査人は、一定の資格を持つ会計士(Accountant)でなければ
ならないとされました。今もそれは引き継がれており(英国会社法2006)、英国の会社法制度に関する文献では、Auditorを「会計監査役」と解説して
います。

一方、米国では、英国から渡った会計士等による会計監査が普及し、公認
会計士による「外部監査」が確立しました。わが国でも、昭和初期(1920年代)から、計理士(公認会計士の前身)による会計監査が普及しはじめ、
終戦後、米国GHQの指導の下、公認会計士と改称して制度化され、現在に
至っています。

以上のことから、監査役による監査・会計士による会計監査には、それぞれ異なる出自や経緯がありますが、英国や米国の影響を受けながら、英語に
よる総称が、監査はAudit、監査人/監査役はAuditorとなったと考えられ
ます。今回は触れませんでしたが、内部監査にも同様に、Audit/Auditorが
使われます。

といいつつも、わが国ではAuditorの1つ類型である監査役が、海外では、
容易に理解されない状態が長年続いており、その理由が、上記の「監視」と「検査」を併せ持つところにあるのではないかと思うのですが、その話は
またの機会にいたしましょう。

共創したい監査チームでは、新しい仲間を募集しています。
社員又はインターンにご興味のある方は、https://reapra.notion.site/Reapra-Japan-3c77a602737748ff9bb1112f2ec91241から、コンタクトをお願いいたします。

〔参考〕
高田晴仁『監査役の誕生ー歴史の窓からー』(国元書房、2022)
西野嘉一郎『現代会計監査制度発展史』(第一法規出版、1985)
浦野雄幸『株式会社監査制度論』(商事法務、1970)
R. Chambers, AN ACCOUNTING THESAURUS 500 Years of Accounting  (Pergamon, 1995)
                 ***


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?