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脱毛と不審者?

勇気を出して散歩に行く

抗がん剤治療をして1番ショックだったことは、脱毛だった。

ごっそりと髪が抜けた時は恐怖を感じた。子供の前だったが泣いてしまった。

長年、ロングヘアーだった私は抗がん剤治療を始めた頃、ショックを受けないように髪をショートにしていたが、それでも脱毛はショックだった。

抗がん剤治療が終わり暫くすると、何とも言えない痒みと共に髪が生え始めた。早く髪が伸びてくれると良いが、今はまだベリーショート。前髪と後頭部の一部分の伸びが極端に遅く、どうみても素敵な髪型では無い。

ご近所さんには私の病気を伝えていない為、ゴミ出しや買い物などで外に出る時にはフルウィッグを被っていた。

しかし、中途半端に髪が伸びてくると、フルウィッグだと浮いてしまい被れなくなった。

部分的なウィッグを購入しても上手く付けられないだろうし、勿体無い気がした。

それなので、帽子を被った。

脱毛が始まった頃に夫がネット購入してくれた、つば付きの帽子。自分では買わない感じの帽子だったが、脱毛にショックを受けていた私のために夫が選んでくれたことは嬉しかった。感謝して使わせてもらうことにした。

体調が少しでも安定している日は、なるべく散歩をするように心掛けていた。帽子を被り、なるべく知人やご近所さんに合わないようなルートを歩いた。

たかが散歩だが、今の私には勇気が必要だった。

パトロール中の警察官

ここ最近パトロールを強化しているのか、散歩をしているとパトカーとすれ違うことがあった。

この日も家から南に少し進んだ十字路の前まで行くと、パトカーが右側から来た。そのまま直進するのだろうと思っていたら、ゆっくりと右折した後、ハザードランプを点灯させて停車した。

何かあったのかな?と少し怖くなったが、パトカーから警察官が降りてくる気配は無かった。

そのまま真っ直ぐ進むとパトカーが停まっている道だが、その道は子供の同級生の家が何軒か並んでいた為、私の変わり果てた姿を見せて驚かせてはいけないと先程パトカーが来た道へと曲がった。

曲がった先は一方通行で、数台の車が前方から来ては通り過ぎていった。人通りが少なく、誰にも会いたくない私にはぴったりの道だった。

暫く進んで行くとまた車がやってきた。少し顔を上げて車を見ると、さっきのパトカーだった。しかも私に近付くにつれてスピードを落とした。

気のせいかもしれないけれど、もしかして私、不審者だと思われている?

改めて自分の格好を見た。つばのある帽子を深く被り、マスクをして、マフラーを首に巻いていた。足が痺れているので歩き方がおかしかったかもしれない。

不審者に見えるのかな?見えるとしたら帽子の被り方かな?などと考えながら、もう一度パトカーを見ると、私の少し前で今にも停車しそうな感じだった。

パトカーの中の警察官が私の方を見ているか確認したくなったが、警察官と目が合ったら声をかけられるかもしれないと思った。それなので、更に顔を上げて胸を張り、堂々とパトカーの横を通り過ぎた。

何も悪いことをしてなくても、何とも言えない緊張感を味わった。

パトカーの横を通り過ぎたが、声はかけられなかった。良かった。何となくほっとした。

そして、そっと振り返ったが、もうパトカーは見えなかった。急にスピードを上げた?

私は、夕暮れ時に帽子を深く被っている不審な人だったのかな?明らかに私をチェックしていた感じだったなぁ。

その日の散歩は早めに切り上げた。

夜、帰宅した夫にこのパトカーの話をしたら「俺、職務質問されたことあるよ。」と。そんな話はすっかり忘れていた。

そう言えば父も息子が小学1年生の頃、孫が心配で通学路の途中で待っていた時に警察官から職務質問を受けたことがあった、と話していたなぁ。

それから同級生は、娘さんと歩いていた時にお父さんではないと疑われて職務質問された、と言っていたことも思い出した。

そんな話をしていたら何だか笑えてきた。身近な職務質問された人達、男の人だけなのよね。

あぁー、早く前髪が伸びないかなぁー。

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