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日銀は打出の小槌という陥穽

「日銀はいくらでも通貨を発行できるから何も問題ない」と堂々と主張する人たちがいます。このような日銀打出の小槌説がどのような問題を孕んでいるかを検討します。

問 日銀が債務超過に陥っても何の問題も起こらないと思いますが。

答 とんでもない暴論です。日銀が債務超過になれば円の信認は暴落しハイパーインフレという地獄がやってきます。
 確かに現在日銀は買いオペをせっせと行なっていますが、その逆を想像して下さい。インフレ局面では物価を抑えるために売りオペをしなければなりません。手持ちの国債を売って債務であるハイパワードマネー(H)を回収しなければなりませんが、日銀が債務超過であればHを回収しきれません。即ち中央銀行が物価を抑える能力を有していない=円の信認が失われることになります。

問 日銀が債務超過になっても政府が資本注入すれば良いのでは。国債を財源にすれば国民の負担も要りません。

答 あなたは自分の言っていることを理解していますか。その国債は日銀が引き受けますから、日銀は自らが発行した通貨で救済を受けるということです。元米国投資銀行東京支店長の藤巻健史氏の言葉を借りれば、「タコが自分の脚を食う」状態であり、紙屑同然の国債を高値で購入することで債務超過は益々拡大するでしょう。どうして日銀が売りオペをしなければならない局面で、買いオペをさせることができるのでしょうか。

問 日銀を一般の会社と同列に扱うのはおかしいです。破綻も倒産もしません。

答 むしろ一般の会社と同じと考えるべきです。例えば、体力のある企業は赤字で債務超過の子会社を存続させることができます。実際にそのような事例はいくらでもあります。利益を出さなくてもメリットがあれば存続もあり得ますが、そのメリットがなくなれば株主が黙っていません。
日銀も同じです。既に述べたように、物価を抑える機能を失った中央銀行は国民の意思で倒産させることになるでしょう。

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