ロスタイムチルドレン 第三話

第三話『来襲』

〇終斎場『パノプティコン』医務室 ロンヴィの病室(朝)

T「来襲まで後1日」

ロンヴィ、目を覚ます。部屋の壁時計を見る。

ロンヴィ「もう、朝なのか…」

ロンヴィ、体を起こす。

ロンヴィ「(呟くように)私のせい…」

ロンヴィM「何で命を狙われなきゃならないんだ…ロスタイムチルドレンに選ばれたから…?それとも…」

ロンヴィ、吐き気を催しベッド横の洗面器に顔を埋め嘔吐。

ロンヴィ「後1年で死ぬのに…何でこんな思いをしなきゃならない!!」

ロンヴィ、ベッドを殴る。ロンヴィ、部屋のドアを睨む。

ロンヴィ「首謀者に会って話を聞く。報復はその後だ」

 〇同・医務室 ミルの病室(朝)

ミル、呼吸器を付けられたまま寝ている。横に立っている防護服姿のオードン。

オードン「ユニウス…どうして君はこんな馬鹿なことに手を貸したんだ…あいつを、この国を裏切ってまでやることだったのか…」

オードン、涙を浮かべる。

オードン「だが、私も同罪だ…結局君を攻めることなど出来ない」

オードン、ミルの手を握る。

オードン「君らがここで死ぬわけにはいかない。いや、君らはこれからも死ぬわけにはいかない。私は今までとんでもないことをしてきた。輝かしい子供たちの未来を潰してきた。今更許しは請わない。だから」

オードン「最期に君らを救わせてくれ」

 〇同 会食の間(朝)

ガラン、黙々と食べている。サヴァーノ、隣に座る。

サヴァーノ「一緒に食べよ」

ガラン「断る」

サヴァーノ「なんで!」

ガラン、壁の時計を指さす。時刻は11時。

ガラン「わざわざ、この時間に食べてる理由を考えろ」

サヴァーノ「寝坊したんでしょ?」

ガラン「お前と一緒にするな」

サヴァーノ「僕はゲームしてただけだよ」

ガラン「ゲームせずにあいつらと飯を食えよ」

サヴァーノ「だから、声かけてんじゃん。一緒に食べようって」

ガラン、頭を抱える。

ガラン「お前と話すと疲れる」

サヴァーノ「それ、ハンクにも言われた」

ガラン「あいつと同じかよ…」

サヴァーノ「似てるね、二人とも」

ガラン「あいつの方がおばさんだろ」

サヴァーノ「なんで、同い年でしょ?」

ガラン「何言ってんだ」

ガラン「あいつは今年18歳だ」

 〇同・休息の間 ハンクの部屋

ハンク、涙を流しながらシャワーを浴びてる。

ハンクM「私の継承式も執り行われるのね…18歳になってるんだからいつきてもおかしくないのに…」

ハンク「馬鹿みたい…彼らを見て死ぬのが怖くなったのね…私」

ハンク、シャワーを止める。ハンク、鏡を見る。

ハンク「このまま死ぬなら最後くらい暴れてやるわ。だから」

ハンク「テロリストを皆殺しする」 

〇『カサ・ロサダ』総統の間

ブール、ドアを開ける。バンドルドゥ、パノプティコンのモニターを見つめる。

ブール「総統様。無事に反逆者の収容、完了しました」

バンドルドゥ「ご苦労」

ブール「それと継承者の候補、用意が出来ました。ロンヴィ様、ミル様、そしてハンク様の分です」

バンドルドゥ「急いで進めろ」

ブール「総統様、予定通り明日決行でよろしいのでしょうか?継承式の日時、テロリスト達にも把握されていると思いますが…」

バンドルドゥ「構わん」

バンドルドゥ、ブールの方を振り返る。

バンドルドゥ「餌がなきゃ寄って来ないだろ」

ブール「かしこまりました」

ブール、退出。バンドルドゥ、パノプティコンのモニターを再度見る。

バンドルドゥ「楽しませてくれよ」

 〇レジスタンスアジト『ノア』 軍備室(夜)

腕を拘束されているウェイク。黙々とゴーグルをつけてドローンを作成しているバジェット。

ウェイク「あのぉ…」

バジェット「何?忙しいんだけど」

ウェイク「私は逃げないので、この手錠を外してくれませんか…?」

バジェット「それは出来ねぇな。エリウスさんの指示だ」

ウェイク「そんな…」

バジェット「大人しくそこで見てな。もうじき終わるからよ」

ウェイク「本当に、彼らを救ってくれるんですよね!?私が協力してる理由は彼らの救出なんですからね!?」

バジェット「当たり前だろ」

ゴーグルを外すバジェット。

バジェット「俺たちを信じろよ」

バジェットの背後に無数の小型ドローン。

 〇終斎場『パノプティコン』医務室 ミルの病室前(朝)

T「来襲まで12時間」

ドア前で立っているサヴァーノ。肩を叩くオードン。

サヴァーノ「どうしたの?」

オードン「君に協力して欲しいことがある」

 〇同・休息の間 ナオキの部屋(朝)

ナオキ、電話をかけている。電話の相手は不明。

ナオキ「はい、はい。わかりました。必ず成功させます」

ナオキ、電話を切る。

ナオキ「この先生きていけるならどんな手段でも尽くす。あいつらを裏切ってでも」 

〇『カサ・ロサダ』総統の間

ブール、電話を切る。

ブール「総統様、『パノプティコン』に継承者候補、到着しました」

バンドルドゥ「ご苦労」

バンドルドゥ、パノプティコンの映像をモニターで見て微笑む。 

〇終斎場『パノプティコン』 エントランス

ウォーロック軍の腕章をつけた兵士たちが待機。ヨゼン・ウォーロック(62)が大声で指示を出す。

ヨゼン「いいか!!奴らがどこから侵入してきても良いように細心の注意を払え!!決して無駄死にはするな!!いいな!!」

兵士たち「はっ!!!」 

〇終斎場『パノプティコン』 門前(夜)

T「来襲決行」

ユダ、全身フード姿で顔を見られないよう門の前に近づく。

ユダ「待機完了。いつでも良いぞ」

 
〇レジスタンスアジト『ノア』 戦略室(夜)

バジェット、パソコンにてパノプティコンのセキュリティをハッキング。

バジェット「さぁ、行きますよ!!」

バジェット、エンターキーを押す。

 〇終斎場『パノプティコン』 磔の間(夜)

呼吸器を繋がれたミル、ロンヴィ、ハンク。三人それぞれ別の部屋でベッドに横たわっている。その横にへその緒を切ったばっかりの赤ん坊と管が繋げられている。オードン、サヴァーノ、各部屋のモニターが見れる操作部屋に居る。

オードン「サヴァーノ君」

サヴァーノ「なに?」

オードン「私を信じてくれてありがとう」

サヴァーノ「当たり前じゃん。だって…」

サヴァーノ「僕はみんなと生きたいんだから」

オードン、深呼吸をする。

オードン「彼らを救うぞ」

部屋の電気が真っ暗になる。

サヴァーノ「来たの!?」

オードン「あぁ、どうやらそのようだ」 

〇同・セキュリティルーム(夜)

緊急通報が流れる。

音声『ただいま、セキュリティルームにハッキングを確認。全電源をショートします』
 

〇同・エントランス(夜)

突然の停電に戸惑う兵士たち。ヨゼン、大声で指令を出す。

ヨゼン「落ち着け!!これは奴らのハッキングだ!!敵が攻め込んでくる!!気を付けろ!!」

兵士たち、バタバタと倒れ始める。

ヨゼン「どうした!?」

ユダ、ゆっくり歩いている。

ユダ「どうも、はじめまして」 

〇同・上空

無数の爆薬を積んだ小型ドローンが飛んでいる。一斉にパノプティコンに落下。爆発する。


〇同・礎の間(夜)

ハンク、急いで呼吸器を外す。

ハンク「なに、何が起きたの!?」

オードン、部屋に入ってくる。

オードン「継承式は中止だ!!テロリストが侵入してきてる!!君たちは緊急避難しなさい!!」

ハンク「断るわ」

オードン「なぜだ!」

ハンク「テロリストを殺すためよ」

ハンク、オードンを睨む。オードン、ハンクの目に慄く。

ロンヴィ「僕たちも断りますよ」

ロンヴィ、ミルをおんぶしながら部屋に入る。

ロンヴィ「僕たちはロスタイムチルドレンです。ここで逃げるのは僕らの役目ではありません」 


〇同・昏迷の間(夜)

ダブ、アーノルドとユニウスの死体の上に座る。響く爆発音。ダブ、目を輝かせる。

ダブ「なに、楽しいこと?」 

〇『カサ・ロサダ』総統の間(夜)

爆炎に包まれているパノプティコンの映像を見るバンドルドゥ。

バンドルドゥ「派手にやるな。流石だ」 

〇終斎場『パノプティコン』休息の間 ガランの部屋(夜)

ガランの部屋にドローンが着弾。爆発する。ガラン、机に置いていたペンダントを回収。

ガラン「俺に喧嘩売るってか」

ガラン、ペンダントを握る。

ガラン「さぁ、我に眠りし『地』の意思。呼応せよ。いざ眼前に」

ガラン「ポセイドン」

ガランの背後にポセイドン出現。

ポセイドン「久々だな。私を出すのは」

ガラン「油断して死ぬなよ」

ポセイドン「それはお前の方ではないか?」

ガラン、部屋の外に出る。 

〇同・廊下(夜)

休息の間に小型機が直撃。爆発。爆風がガランに向かってくる。ガラン、掌をかざす。

ガラン「亡威神{ナキイジン}」

ガラン、衝撃波を放つ。爆風と共に残骸の小型機を吹き飛ばす。砂煙の中から姿を現すエリウス。

エリウス「さすがの力だな。ロスタイムチルドレン」

ガラン「あれでぶっ飛ばされないのか」

ポセイドン「ここに乗り込んでくるだけあるということだ」

ガランの前にウォーロック軍の兵士たちが立つ。

兵士「ガラン様!!無事ですか!?」

ガラン「邪魔だ、死ぬぞ」

兵士「しかし!!」

エリウス「討つ人も 討たるる人も 諸共に 如露亦如電応作如是観(にょろやくにょでんおうさにょぜかん)」

エリウスの体から液体が漏れ始める。

エリウス「飛散 バラムチア」

液体が兵士たちに飛散。兵士たち、次々と倒れこむ。

ガラン「お前、何者だ?」

エリウス「その答えはついてくればわかる」

ガラン、不敵に笑う。

エリウス「さぁ、世界を道連れにしないか。ロスタイムチルドレン!!」

ガラン「面白い」

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