負け犬の遠吠え

失礼なことを言われた時は、「それってどういう意味ですか?」と返すといいらしいと聞きました。
自分の悪意を自分の口から説明することになるので、相手がしどろもどろになるみたいな話だった気がします。(ギャグや小ボケの意味を説明させるアレに似ていますね)
或いは、言った方がその発言について第三者から咎められたとき、「そんなつもりで言ったんじゃないのにぃ〜」という逃げ道をつくることを防ぐためだったかもしれません。(「こういう奴いる〜!」って思った皆さん。握手してください)
覚えていませんが、どちらにせよ「それってどういう意味?」という一言で、失礼な発言に一矢報いることができるらしいです。

ところで、全然自慢じゃないんですけど、私はよく人から失礼なことを言われます。他人と比べてみたわけでも、失礼なことを言われた回数について競う大会で好成績を残したわけでもなく、ただそう感じるだけという話なんですけど。
集団の中で「いじられキャラ」というポジションに収まろうとすることが原因というところまでわかっているんですが、愛あるイジりとそうじゃないものの境界線については、それこそインターネットで語り尽くされた話題なのでひとまず置いておきます。集団の中、いじられキャラとしてしかポジションを見つけることができない私のコミュニケーション能力についても、悲しくなるのでそっとしといてください。

とにかく、「今なんか失礼なこと言われた」と思うことがよくあります。
私はアホなので、「アッ今失礼なこと言われた!」ではなく、数日経った頃に「アレ?よく考えたら失礼じゃね?」となることが多かったのですが、そんな機会が多数あったお陰で、「失礼なこと言われたセンサー」が最近鋭敏になってきました。お気持ちヤクザになりたくないので寧ろ鈍くありたいものですが。
アホのくせに復讐心が人一倍強い私は、失礼なことを言われた可能性に思い当たる度に「なんか言い返せないかな」と思っていました。
そんなときに、「それってどういう意味?」という言葉との出会いがありました。なんか大袈裟ですけど、「新しい武器手に入れた!」くらいの気持ちです。アホですね。

以来、手にした武器を振るう機会を虎視眈々と狙っているんですが、今のところその伝家の宝刀を抜いたことはありません。失礼なことを言われる機会が減ったわけではなく、寧ろ、センサーが常に感度良好なせいで「アッ今失礼なこと言われた!」という瞬間は多くなったように感じています。
なら何故やり返さないのか?

「めんどくせえな」ってなっちゃったんです。

怒りという感情にはエネルギーが必要だと思っています。これも※あくまで個人の感想ですなので異論は全然認めていくスタイルなんですけど、喜怒哀楽に於いて「怒」で使用するエネルギーは段違いだと思います。
そして、その感情を基に他人と争うということは、更にエネルギーを使います。
相手が
「アッすみません、今の失礼でしたね」
と引き下がってくれたら平和に事が終わりますが、そもそもそれができる相手は失礼なことを言わないんですよね。本当に悪気無く失礼なことを発する人なんだとしたら、他に直すべきところがあると思うんですがそれも一旦置いておきましょう。

要は、面倒だからエネルギー使いたくないんです。疲れるし。
「それってどういう意味?」は、言ったらゴングと同じようなものではないでしょうか。鳴らせば戦いが始まってしまう。悪意を持って尊厳を傷つけようとしてきた相手に、エネルギーを使うべきなのだろうか?こいつに使うくらいなら、帰って風呂だの家事だのスキンケアだの、正しく生活することに注力した方が良くないか?と考えてしまうのです。
(追記:読み返してて思ったんだけど相手も失礼なことを言うエネルギーを他に使った方がいいのにね。ただの負け惜しみなんですけど)

失礼なことを言われたその瞬間、たしかに「それってどういう意味?」が頭を過ぎります。ですがそれより先に
「うわ、こいつめんどくさ。相手にしないでおこ」
となるせいで、伝家の宝刀は押し入れにしまいこまれたまま、ついぞ使用される機会もなく錆び続けている、という訳です。
反射的に「うわめんどくさ」先に来てしまう性質の自分には、黙ってやり過ごしたあと、気の合う仲間とお酒でも飲みながら「あいつマジムカつく」と愚痴って慰めてもらうのが合っているのでしょう。

ただ、流石に「ここは怒んないとダメだな」と思う瞬間はときどきあります。
今日がそうだったんですけど。
詳細は面白くもないので省きますが、「ここは怒ってもいい場面だな」ということがありました。疲れていたから戦う気力はなかったけれど、「それってどういう意味?」を今言わないでいつ言うんだ?という場面でした。

機会を狙い続けて数ヶ月。
「今だ!」と押入れから引っ張り出してきた武器で斬りかかろうとした瞬間、相手がその発言をした意図を全部喋ってくれちゃいました。聞いてもないのに。余談ですが相手が1から100まで喋ってくれた中で、1から100まで納得できなかったので、残念ながら相互理解には至りませんでした。
振り上げた拳の置き場が分からない、とは使い古された表現ですが、これだとこちらは拳を振り上げてすらいません。寧ろ、振り上げようとしたところで、そのやる気を削がれた気分になっちゃいました。
戦意が失われ、次に出てきたのは、

「こいつ、失礼なこと言ってきた上にめっちゃ喋るじゃん。長くなるやつじゃん。夜だしやめとこ。めんどくさ」
でした。

結果、いつものように「ああ、はいはい、悪うござんしたね」とやり過ごし、伝家の宝刀を押入れにしまい直して、鬱々とこの文章を作っている現在に至ります。

はあ、自分の矮小さがつくづく厭になる。
という訳で、長々とした負け惜しみをここまで読んでくださった奇特な方がいらっしゃるなら、「左の頬を張られたら右の頬を張り返す」を是非徹底してください。こんな矮小な人間を増やしたくないからです。ただ、そこは自分のエネルギーと相談しましょう。怒りにエネルギーを持って行かれて風呂も家事もスキンケアもできなくなるなら、黙って逃げるのも手だと思います。

あ、私ですか?
私は逃走したのに家事をする気が起きなくて死にそうになってます。つくづくダメ人間ですね。

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