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読書にしがみつくように、それを生きがいに


自分の時間を売ってお金を稼ぐことが嫌いな私は、いかに無料で楽しく時間を過ごすか、常に考えている。

無料で楽しく過ごせる場所ナンバーワンは図書館だった。

特に大学生の3、4年は、図書館に行き、本を漁った。

今までの人生で、グッとくる本を見つけたことはあるものの、年に2冊ほど見つけることができればいい方だ。

その年2回の出会いが、今年は4年生の後期に、グググッと一気に押し寄せてきたのだ。

そもそも本を読むことが好きでは無い私は、好きな物の欄に「読書」と書くことを躊躇っていた。

というのも、読書は好きだけど、ジャンルによっては読み切れないからだ。

そりゃ当たり前だろと思うかもしれないが、私は興味があるものとないものの差が激しすぎる。

そしてあるとき気づいた。
「読書」が好きなのではなく、あるひとつのジャンルの本がとてつもなく好きだということに。

それは、

「読んでいる時にニヤニヤする本」
(なんだそれ!)

具体的な内容を説明すると、作者が生きている中で思ったこととか、半生がエッセイ調で書かれているものが多い。

その他のジャンル(小説とか)も刺さるものはあるが、「グッときてニヤニヤできる本」と出会える機会は少ないのだ。

そんな私の好きな本を紹介しようと思う。

去年の冬にたまたま「文章特集」というコーナーで見つけた本


noteではよく言葉についての記事を書いているが、自分と同じくらい言葉に敏感な人と出会うことが今までなかった。

そんな私に衝撃を与えた本。私と同じように太田さんも言葉に敏感であり、イライラしていた。

一緒の人がいた!とページをめくる手が止まらなかった。そんな太田さんは日本の映画字幕翻訳者である。

日本語以外の言語を日本語に翻訳するのだから、とても言葉に敏感なのだ。

また、字幕には文字数の制限があるので、いかに元のセリフのニュアンスを変えずに正しく翻訳するかが重要なのだ。

私とは次元の違うところまで言葉を極めている人との出会いだった。

読み進めていくうちに、太田さんはもう亡くなられていたということを知った。

いつか会えたらと思える人との出会いだったのにと、がっかりしたのだが、この本のあとがきは、太田さんの後輩によって書かれていた。

あとがきを書いた方は太田さんのことをすごく尊敬していて、翻訳への向き合い方のすばらしさを語っていた。

もう会えない人でも、ここまで愛されてるのだと知ることができた。

さぞ魅力的な人だったのだろうと妄想が膨らむ。

自分にとっての運命の本に出会うということは、自分にとっての運命の人に出会うことと同じなのだ。

ただの「紙」が時空を超えて、出会いを運んでくれる。

その出会いをせめて年3回にでも増やしたいところだ。


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