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臨床推論 Case18

Int Med Case Rep J. 2014 May 30;7:93-8.
PMID: 24940083

【症例】
70歳 女性

【既往】
⚫︎ 乳癌:4年前に切除とケモ
⚫︎ リウマチ:内服でコントロール

【現病歴】
⚫︎ 受診14日前に背部不快感を比較し、徐々に悪化した
⚫︎ 外傷歴はなく初めは軽微であった
⚫︎ 痛みは腰部に限局し、神経症状は認めず
⚫︎ 受診7日前には症状が増悪して動けず、寝たきりになったため受診された

【現症】
⚫︎ 腰椎を触診しても異常は認めなかったが両仙腸関節に圧痛を認めた
⚫︎ WBC正常 ALP278IU/L(30-130)と上昇 Ca正常 
  CRP1.5mg/dLと微増
⚫︎ Xpでは明らかな骨折なし
⚫︎ 骨シンチでは仙骨と恥骨粗面でTc-99mの取り込みが増加していた
⚫︎ 当初はこれが転移による集積と考えられた

⚫︎ MRIで両仙骨翼にT1低信号あり  骨折線はなし

⚫︎ CTでは仙骨翼を通るhighな骨折線があり
    まだらな硬化を伴う皮質の断裂あり


What’s your diagnosis?










【診断】
仙骨不全骨折 sacral insufficiency fracture(SIF)

【経過】
⚫︎ オピオイドなどの使用で疼痛コントロールされた
⚫︎ 歩行器具を使用して移動できるようになり12日目に退院となった
⚫︎ 1ヶ月後には疼痛、運動は徐々に改善していった

【考察】
⚫︎ SIFは見落とされやすい
⚫︎ 血液検査はあまり意味がないがALPが僅かに高値を示すことがある
  ただし転移でも高値を示す
⚫︎ Xpでは検出できるのは40%である
  糞便、血管石灰化、腸管ガスで隠れてしまうことがある
⚫︎ SIF患者の45%は悪性腫瘍の既往があり診断はさらに難しくなる
⚫︎ 骨シンチが一番感度が高い96%
⚫︎ MRIもほぼ感度100%であり骨髄浮腫と骨折腺の両方を認めるが後者は7%しかない
⚫︎ CTは感度60-75%と劣る
⚫︎ 皮質破壊像がない、軟部組織腫瘤がない場合は骨転移は除外されるとされている

⚫︎ 基本は安静、疼痛コントロール、理学療法という保存的加療である
⚫︎ 痛みは通常12ヶ月以内に改善する
⚫︎ 高齢者ではDVT/PEのリスクであり、早期の理学療法がこのような合併症を減らし、骨形成を促すとされている
⚫︎ しかしSIFにおける早期の理学療法の有効性を示唆する質の高いstudyはない
⚫︎ 仙骨形成術もあり、透視下またはCTガイド下でセメントを注入する
⚫︎ 後方視的にみて疼痛の急速かつ持続的な改善をえられ、鎮痛剤の使用料の現症、可動性スコアの改善が示唆されている
⚫︎ ただしセメントが外側にもれることがあり、神経根を圧迫したケースが1例報告あり
⚫︎ 他の仙骨不全骨折の画像

➡︎これはSIFによりL5の神経根障害をきたした1例 L5の神経根が腫れている(J Rheumatol 2020;47:939–40 )

➡︎軽微なのは見落としてしまいそう (Am J Emerg Med. 2017 Sep;35(9):1314-1316.)

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